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お笑いとラブコメは混ざりますか?~ゲラなヒロインとスベる俺が青春を沸かす話~  作者: たーたん
第二章 東高等学校てっぺん編

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42/61

42話 ファナの決意

 その日から早速、決勝に向けての特訓が始まった。

 アーヴァンチュールが1位!?

 人気投票ではお笑い同好会会長のコンビより上!


 ……ありえるのか?

 

 いいや、ありえたんだよ!


「よっし、決勝も予選と同じスタイルでいこ!」

「白井さんがなりきって僕がツッコんでいくスタイルですね!

「そうそう! いくつかネタは用意してきた」

「実は僕も何個か書いてきたんです!」

「ほんまに!? 読み合いしよ!」


 テンション上がりっぱなしの白井さんはずっと体が跳ねていて、俺がネタ帳を出すと更に白井さんの表情が緩む。

 席ごと移動してきて俺の隣に移動するとノートを覗き込んでくる。

 決勝まで3週間くらいか。

 もっと上手く、切り返せるようなツッコミはどうしたらいいんだろう。


 カシャッ!


 突然のシャッター音の方向を見ると、女子さんがニヤニヤしながらスマホを向けていた。


「お前らのイチャイチャはオレが激写してやったよ。画像送っとくわ」

「べ、べつにイチャイチャなんてしてないって! 打ち合わせやん!」


 グループチャットに画像が送られてくる。

 白井さんは笑顔なのはわかっていたが、写真に映る俺も笑顔だった。いつもぎこちない笑顔しかできないと思っていたが、こんな自然に笑ってる自分の顔を見るのは初めてだった。


「ナイトメアがエロい顔してねえから、容赦しといてやるよ」

「ふふ、いいなぁ。素敵なカップルみたい……」


 フンと鼻を鳴らす女子さん、少し離れた席でスマホを見ていたファナさんを見るとなんだかうっとりとした目でスマホを眺めていた。


「カップルって! 梶くんとうちは相方やから!」

「そ、そうですよ! 相方なだけです!」

「え?」

「……え?」

「相方『なだけ』って、仲悪いみたいやん!」

「ああえっとそうじゃなくて! ぼ、僕は相方以上だって思ってますよ!?」

「え?」

「……え?」


「あーはいはい。写真撮ったオレが悪かった。なんだよその息の合った連携プレイは。もう腹いっぱいだぜ」

「こーちゃん!」


 でも確かに近かった……。意識してなかった。めっちゃ顔が熱い。

 顔から火が出そうとはまさにこのこと。

 白井さんは両手をバタバタと振りながら近づいていた椅子を離す。

 

「はいはい。ほらやれよ公開イチャイチャ。オレ、それ決勝のネタにするから」

「こーちゃん! そんな言われたら練習できひんやん!」

「へっへっへ!」


 その日は他部と掛け持ちしている先生が顔を出して俺たちを労ってか、ジュースやらお菓子を差し入れを持ってきてくれた。

 不定期に何度か顔だけ出し、一言二言会話するだけだったが、遠くから見守ってくれている笑い上戸で優しい顔をした先生だ。


 エネルギー補給を終えた俺たちは、ハイテンションを維持したまま夕暮れになるまでネタ合わせに励んだ。




「あの……、先輩?」


 みんなが帰る支度をしているとき、控えめな口調でファナさんに呼ばれる。


「ああ、あのあの……こんな日に、こんなことを言うなんて……やっぱりダメですよね。本当にごめんなさい……」


 まだ何も言っていないのだがぺこりと頭を下げられ、すぐに何かしでかしてしまったのではないかと記憶を辿る。


「まだ何も聞いてませんから! どうしました? 僕、何か悪いことしちゃいました……?」


 ぶんぶんと首を大きく振ると、おずおずとファナさんは小さな声で喋り始めた。


「じじ、実は去年連絡があって! 今週土日に行われるシリアルの大会に出場することになったんです……っっ」

「え! 凄いじゃないですか! 公式大会ですか?」

「は、はいぃぃ……。勢いで応募しちゃったら当選しちゃいまして……」


 胸の前で両指を忙しなく動かしながら、顔を下げたままファナさんは言葉を続ける。たらんとツインテールも元気なく下に垂れちゃってしまっていた。


「よ、よ良かったら……先輩っ、一緒に行ってもらえませんかっ!!」


「あああ、ごめんなさいやっぱり辞退します! ファナ一人で行くのが怖いからってこれから忙しい先輩に付き添ってもらおうだなんておこがましいにも程がありますしほのちゃんたちの頑張りにファナも頑張ってみようかななんて甘いこと思っちゃっただけですしこんなオタクで引きこもりで根暗な女が」


「わわ、落ち着いてファナさん!」

「はははい! 落ち着きますごめんなさい。いきなりこんなこと言われても迷惑ですよね! よくよく考えたら人前でプレイするのなんて恥ずかしすぎますしそれでミスして負けちゃったらもうイライラして凄いことになりそうですし!」


 後半は早口で聞き取りづらかったが、返事をする前にやっぱ辞めますというのは伝わった。


「ファナちー、梶くーん。帰るよ~~!」

「あ、う、うん! 今行くねっ!」


 ドタバタと鞄を手に取り、


「……先輩、今のは忘れてくださいい……!」


 白井さんの方に駆けていくファナさんの背中に向かって、


「行きますよ! 僕でよければ!」

「……あ、ぇ……?」

「また通話でもチャットでも、詳しく教えてください」



 急ブレーキを踏んで振り返るファナさんの瞳は、まん丸と驚きで見開いていた。海のような青い目は僅かに潤んでいた。


「は、はい……っ!」


 眩しいくらいの笑顔が咲く。ファナさんに滴り落ちていた雫が一気に弾け飛んだみたいな晴れやかな顔だ。

 うん。わらおー会のみんなはやっぱり笑顔がすごく似合う。

 こんなに暖かな気持ちになるんだ。俺もこんな風に笑えるようになりたい。



 でも、どうして俺なのかな?

 せっかくだし、白井さんと女子さんにも声を掛けてみんなで応援に行こうかと提案しようと思った。

 けど、この中でシリアルを次によくプレイしているのは俺だし、もしかしてアドバイスとか相談役として必要なのかもしれない。


 俺の浅い歴でファナさんのプレイにアドバイスできるなんて、おそれ多い話だけど、素直に応援したいと思った。

 ファナさんもまた、自分のやりたいことに向かって自分の殻を突き破ろうとしている。――それってめちゃくちゃカッコイイ。



 ファナさんに続いて廊下に出るとすぐに異変に気付いた。


「うおお! アーヴァンチュール!!」

「ココナッツだ!」


 他の部活動の帰りの男女の集団の歓声で廊下がどっと沸いた。


「小っちゃくてかわいい~~!」


 あっという間に人だかりができた。


「女子さん~! 一緒に写真とっていいですか!」

「お、おう……いいぜ!」


 数人の女子グループに包囲されている女子さん。


「白井さん! めちゃくちゃ面白かったです! 決勝頑張ってください俺ら、全力で応援しますからっっ!」


 男子グループは白井さんの周りでガッツポーズしながら熱い応援を送っている。


「わぁ、みんな有名人……!」

「ですね……!」


 それを見守るファナさんと俺。

 いやいやですね、って。俺も出ていたんですけどね。


 想像以上にE-1効果は絶大だった。見知らぬ生徒から次々と声を掛けられる白井さんと女子さん。部活動が終わる人が少ない時間にも関わらずこの熱量だ。明日以降どうなってしまうのだろう。


 遠くから手を振られたり、声を掛けられたり、それらに対応しながら昇降口まで移動する。


 靴箱の前で別る際、女子さんがぽつりとつぶやいた。


「ナイトメア。お前出てたっけ?」

「……いたと思うんですけど」

「あはははっ、空気!」


 俺の一言は一連の締めとしてオチたのかみんなが笑う。


 それで十分だったけど、俺、本当に出てたっけ?


 空気? んなわけあるかーい!

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