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お笑いとラブコメは混ざりますか?~ゲラなヒロインとスベる俺が青春を沸かす話~  作者: たーたん
第二章 東高等学校てっぺん編

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41話 新春大スベリからの結果発表

 冬休みも後半に入り初詣の日。

 有名な所に行こうとの女子さんの提案で、電車で直接、待ち合わせの神社に向かっているのだが、あまりの人の多さに押しつぶされそうだった。

 当然のごとく服装に迷い、父から借りた灰色のロングコートは目立ちそうで恥ずかしかったが中の服を隠せるので他の選択肢はなかった。


 大きな鳥居が空に映えていて、行き交うたくさんの人々が波のようだった。数えきれないほどの出店が両脇に並んで防波堤みたいになっている。圧巻の景色だ。

 待ち合わせの目印になっている狛犬前に到着すると、ようやく息を整えられることができた。でも気を緩めば人ごみの波に流されてしまいそうなのでしっかりと自分のポジションを確保する。


「まだみんなは来てないな」


 と独り言をつぶやいた矢先、遠くから白井さんの笑い声が聞こえてきた。彼女の大きくて澄んだ笑い声は別の音域にいるんじゃないかと思うほど鮮明に耳に届く。


「梶くん!」


 白井さんが大きく手を振るのが見える。女子さんとファナさんも一緒だ。


「こ、こんにちは! いい天気ですね!」


 修復した伝家の宝刀を引き抜く。


「それしか言えねえのモブか? 明けましておめでとうだろが」


 女子さんは呆れ顔でやれやれとジェスチャーする。

 身体のラインがはっきり出るタイトな服装で、今にも冬に向かってハイキックをしそうな格闘系だ。服装ってほんとにらしさが出るんだなあとつくづく思う。

 

「はっ、で、ですね。明けましておめでとうございます」

「おめ。よろ」

「梶くんあけおめ~」

「先輩。明けましておめでとうございます」


「それじゃいこ~~!」


 白井さんはもこもことした大きめサイズで耐冷気に対して防御全振りスタイル。

 一瞬目が合ったのだが、視線を外された気がする。

 いや、これは俺が意識しすぎているからかもしれない。 


 三人はお揃いのふわふわしたミルク色のマフラーをしていた。白井さんが列の中に突っ込んでいき、女子さんが周りを蹴散らす。その後ろでファナさんが隠れるように周りの状況をうかがう。面白いくらい役割分担がはっきりしている。


「わわ……すごい人っ、ほのちゃん手、つなご……!」

「うん!」

「オレに捕まっとけ! 初詣はこうでなくっちゃな!」


 ファナさんは長い髪をお団子みたいにまとめ、上品なコートに黒タイツ。足元はすらりとした汚れ一つないロングブーツ。目を引く金髪はやはり注目の的で、ひとりだけ落ち着いた空気をまとっていた。


「先輩? はぐれちゃったら大変です……」


 少しぼんやりしていた俺の袖をファナさんが引っ張る。


「みんなで繋がってれば安心です」


 青い瞳を細めて笑いかけるファナさんの隣で女子さんも楽しそうにしていた。


「ナイトメア! お前がもっとシャキッとして先頭に立つんだからな普通!」

「はは。ですよね、すいません」


 白井さん、女子さん、ファナさんと体が密着する。

 ぎゅうぎゅう詰めの列の中で小さな声だけでも届く距離に俺らはいる。

 そのパーティの中に俺も入ってるってことだよな?

 今さらか、こんなの。


 いつまで卑屈になってんだよ、俺。

 俺はもうわらおー会の一員で、アーヴァンチュールで、白井さんの相方なんだ。


「白井さん!」


 タイミングなんて考えたりしてる時間があるなら、今言わなくちゃいけないと思った。俺はぐっと拳を握りしめ、覚悟を決めて目を閉じる。

 今ならこの人混みに紛れて言える気がした。


「うん?」

「ぼ、僕は好きです!!」


 ――よし、言えた!


 あの日から喉につっかえていた好きって言葉が出ると、どんどん次に出したかった言葉がせり上がってくる。


「わらおー会も、アーヴァンチュールも! お笑いも!」


 うん、そう。言え、吐き出せ俺。


「最高の舞台でした! こんな僕に声をかけてくれてありがとうございます!」


 E-1の興奮が蘇ってくる。燃やし尽くした数分間だった。


「みんな好きです! 今年もよろしくお願いします!!」


 いつの間にかうつむいていた俺は顔を上げる。

 白井さんがいる方へ――


「このまま決勝も! 精一杯がんばり……ま、す??」


 周りには眉をひそめる見知らぬ人たちに囲まれていた。


「あれ?」


 不審者を見るような顔。中には憐れんでいるような顔をしている人もいた。


「梶くーん!! うちら先行ってるからーー!!」


 遥か向こうで白井さんの声が聞こえる。


「し、白井さーーん!」


 俺はなんとも情けない声で、電車の中みたいにもみくちゃにされながらみんなとはぐれ、一人でお参りすることになるのであった。



◇ ◇ ◇



 ゲーム通話でファナさんに相変わらずしごかれたり、チャットで女子さんにからかわれたり、白井さんと決勝のネタについて話し合いをしたり。

 初詣以降ほとんど外に出ていないのだが、充実した引きこもり生活だった。

 そのうち、何度か配信したのだがリッカさんが来ることはなかったけど。

 それはそれで切り替えて、【0】のままでも俺は喋ることを意識して配信を続けていた。

 


 そんなんで冬休みも終わり、始業式。

 清水とは年始の挨拶だけはしてなんとも気恥ずかしい空気が流れていた。

 お互いがお互いのネタについては触れないという、ライバル心もあったのかもしれない。


 少しぎこちない会話のまま別れ、わらおー会の教室に入ると珍しく静まり返っていてみんながそれぞれスマホを握りしめ画面を見ていた。


「そろそろ結果が出ると思うんだけど……」

「始業式のあとだろ? さっさと出せよな!」


 みんながソワソワしている。

 もちろん俺の考えていることも一緒だ。朝から結果のことしか頭にない。


「大丈夫、大丈夫!」


 白井さんは黒板に「大丈夫」とでかでかと描き、懸命に中の色を塗っている。


「来たよ! 来ましたよ先輩っ……!」


 ファナさんの言葉でみんなが一斉にスマホの画面に目を落とす。

 俺もすかさず公式SNSの結果発表ページに指を滑らせる。


 お待たせしました。総勢12組による、決勝の5組は……と色々書かれているがそんな内容はどうでもよくいち早く結果にたどり着くためにスクロールし続ける。


 第1位『アーヴァンチュール』

 第2位『大寺人見』

 第3位『六道輪廻』

 第4位『コキュートス』

 第5位『ココナッツ』


 以上の5組は1月30日――


 決勝戦は審査員に――


 息が止まった。握りしめる力でスマホを壊してしまいそうだった。

 心臓がありえないくらい脈を打っている。


 ――――!!!


「い、1位……?」


 白井さんの言葉が震えている。ごごごごと、背後から効果音が聞こえてきそうなくらい強いオーラを感じた。


「っしゃーー!!」


 バタバタと教室中を飛び跳ねながら感情を爆発させる白井さん。


「おらああ!!」


 女子さんも何度もストレートやフックを宙にお見舞いしながら雄たけびを上げる。


 予選通過した……!

 しかも、投票で……1位。

 信じられない。信じられないけど、現実だ!!


 今までの静けさを吹き飛ばすような、学校中に響き渡るくらいの絶叫が教室中に響いた。

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