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お笑いとラブコメは混ざりますか?~ゲラなヒロインとスベる俺が青春を沸かす話~  作者: たーたん
第二章 東高等学校てっぺん編

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35話 君との距離はマイクとの距離

 その日の夜。


『それ悪手ですよ! 盤面処理は無視してリーダーに直接ダメージ与えないと挽回されちゃいます!』

『な、なるほど……』

『防御は考えないで攻撃あるのみです!』


 ファナさんと通話しながらシリアルでしごかれ、


『なあ、男子はなんでロリ派が多いんだ?』

『い、いきなりなんてことを聞くんですか。そんなことはないと思いますよ……?』

『女子ウケなことは考えられるけど、男子もウケるネタとなると難しいんだよ。せっかくの男子なんだからなんかよこせよ。少しくらいむっつり発言でも目つぶってやるからよ』


 と、女子さんからは女子シリーズで男子を切り伏せるために、男子の趣味趣向を聞き出そうと容赦のない質問が飛んでくる。

 下手な答え方をすれば俺まで被害を被る。どう切り返すかで頭を悩ませていた。

 そのレスポンスの速度(俺の性癖を晒すかどうかの迷い)で、更にいじられるので丸裸にされてる気分だった。



 ――23時過ぎ。

 俺は邪念を斬り捨て配信を始める。


「ふう……」


 いつも以上に緊張しているので深呼吸を繰り返している。

 俺が配信する目的を見失うな。マイクを気にしたあの夜を思い出せ。

 ゲームを楽しむことと、喋りの特訓だ。

 それがお前が配信する理由だろ、梶。


「こんばんは、ハルです」


 目標を決めよう。

 よし……今日はリッカさんを笑わせる!


 >こんばんは! いよいよラスボスですね! 一緒にエンディング見れるなんて感慨深いです! 最後までご一緒します!(@rikka)


 ……うぅ、決意が揺らぐ!

 リッカさんとはここまで長い時間、レベル上げのぐだぐだな時間も一緒に過ごしてきて、もはや戦友みたいな間柄になっている。

 スキル構成も装備のアドバイスもリッカさんの意見を参考にしてるし、リッカさんの発見で隠し要素を見つけた時はかなり一緒に喜びを分かち合った。


 >次もハルさんらしいマニアックなゲーム実況が見たいです。埋もれた名作を一緒にストアの中から探す企画なんてどうですか?(@rikka)


「それはいいですね!」


 なんて、リッカさんに合わせた調子乗り発言している男子が出来上がる。


 ああ、その裏でどうしても雨宮さんのあのジト目が思い浮かぶ。

 『ハル』が雨宮さんが嫌悪しているであろう、わらおー会の『俺』だと気づいたらどうなってしまうのだろう。

 そう考えると気が気じゃない。

 が、むしろこれはバレるバレないの話ではなくて、『ハル』として、リッカさんに接するべきなんだと切り替える。

 リッカさんが雨宮さんだって勘ぐり続けるんじゃなくて、一配信者として楽しませるんだ。

 そして、その経験と力を漫才に、E-1にぶつける!


 俺の声が落ち着くとか、喋り方が丁寧で聞きやすいとか、リッカさんは褒めてくれる。今はそれを自信に変えていこう……!



 笑わせる目標は叶わなかったが、しんみりと一緒にエンディングを見て、余韻に浸りながら配信を終える……その直前。


 >ハルさん聞いてください。今日、学校でバッタリ例の先輩に会っちゃって……男子の方です。(@rikka)


 ドキリと心臓が跳ねた。俺のことみたいですね。


 >イヤホン外れて、見直してたハルさんの声が大音量で流れちゃったんです。よりによってその先輩の前で……もう恥ずかしくて!(@rikka)


 「うわあ、ありますよね! 僕もバスでアニソンが大音量で流れたときは、思わず次のバス停で降りちゃいましたよ」


 >ハルさんの存在が世にバレちゃって、新しい人が増えちゃったらどうしようって、本気で心配になりましたよ~~。(@rikka)


「そ、それは何よりです!」


 ……そっち!?

 俺としては人が沢山来てくれた方が嬉しいんだけどなあ。


 >あの先輩は最悪なタイミングで意味不明でしたけど、ハルさんの配信にくると忘れられるというか、気持ちがリセットできて癒されます!(@rikka)


 >ハルさんとのお喋り楽しいです!(@rikka)


「ぼ、僕も楽しいですよ!」


 >ハルさんにとって私は第一号ですから特別ですよね?(@rikka)


「も、もちろんです! リッカさんは色んなことの第一号ですので、ええと……、大切ですよ!」


 自分の悪口(?)を聞かされながらも感謝される。

 なんだか複雑な気持ちだが、元気になってくれたなら……よしとしよう。



◇ ◇ ◇



 E-1予選に向けて練習の熱は高まっていく。

 平日の放課後もネタ合わせに励み、土日もファナさんの厚意で家にお邪魔し、広い部屋をステージ代わりに練習する。

 学校の舞台を想定してよくみる形のマイクスタンドを用意してくれていた。マイクは有線で繋がっており、取り外し手に持つこともできる。

 スピーカーから出る自分の声の大きさにみんな驚いていたが、音量に合わせた声の出し方を確かめていく。


「マイクとの距離は、これくらいですかね……高さは白井さんの高さに合わせて僕が屈みながら喋る感じでしょうか」


 立ち位置はすでに決まっていて、観客側を前にして白井さんが左側、俺が右側だ。


「本番のマイクってどうやって高さ調整するんやろ?」

「このスタンド同じように横にノブがあって、パイプが上下できると思います。11組が男子二人組なら高めに固定されてそうですし、調整はやらなくちゃいけなさそうですね……僕がやります」

「梶くん頼もしい!」


 マイクの位置、高さ、喋る距離。白井さんの位置。

 万が一どちらかの声が届いてなさそうなら、喋りながら位置調整をする必要がある。身振り手振りを使ってボケる白井さんにやらせるわけにはいかない。


「ごめんなさい、マイク触るのがっつり練習させてください」

「うん! うちはこの位置でいい?」


 遠巻きにマイクの前に立つ白井さんの位置を確かめる。

 声を出してもらったりして、マイクの頭がどの位置にあればいいか目で覚える。


「もすこし、前と左側へ」

「こっち?」

「あ、すみません逆です! 僕から見てました!」   


 俺は白井さんの傍に寄り、肩を掴んで位置を修正する。


「わっ、っと! ここ?」


 想像以上に白井さんは軽かった。簡単に担いで行けそうなくらい。

 顔の向きを直そうと頬に手を伸ばしかけて――ハッと止まる。

 危ない、顔を触ろうとしてしまった!

 その前にしれっと肩に触ってるじゃん!?


「えっと顔は……こっち向きで……」

「う、うん。こんな感じ?」

「はい! それで僕が横にこう立って……」


 センターのマイク一本を二人で挟む形になる。

 調整の結果、予想以上に近い距離で腕が触れあいそうだ。

 白井さんの大きな瞳が、上目遣いで俺を捉えていた。


「……あ、うん。これくらいの距離、やね?」

「です、ね……」


 白井さんの耳が少し赤くなっていた。俺はたぶん、もっと赤い。


「うちは色々動くけど、そんときはどうすればいい?」

「マイクとの距離に応じて声を少しずつ大きくしていく、ですかね。あ、大きくなりすぎて音割れないように気を付けないと……」


「マイクは離れても二人の距離は急接近! やっぱり付き合ってんだろ!」


 観察していた女子さんからツッコまれる。


「ちゃうって! これは練習の一環やし! 梶くんとは相方で、そういう意味の相方じゃ――ってなに言わせようとしてんねんっ!」


 俺より白井さんが慌てて否定する。


「漫才、告白! とか言って始まるのかと思ったぜ。なあファナ?」

「う、うん。二人の世界に入ってた……! ファナ、なんだかドキドキしちゃってゲームどころじゃないよう……」

「ファナちまで! な、なんやねん二人の世界って……、そんなんちゃうし……」


 もじもじと段々声が小さくなっていく白井さん。


「ね、梶くん?」


 同意を求めようとおねだりするような目つきで見られて「は、はいっ」とどもりながら言うしかなかったのだが、何に対して言い淀んでしまったのだろう。

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