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お笑いとラブコメは混ざりますか?~ゲラなヒロインとスベる俺が青春を沸かす話~  作者: たーたん
第二章 東高等学校てっぺん編

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34話 イチャイチャ風味のネタ合わせ

 期末テスト最終日は午前で終わり、午後からは部活動は再開された。

 校舎のあちこちで、息を吹き返したように部活動の掛け声や、廊下を走る足音が響いている。


「決勝戦は予選のネタがいい感触だったら決勝もテーマだけ変えて、同じスタイルがいいと思うんよね。まったく別の新しいネタで勝負しにいくのもアリやけど、何本も作って、ネタ整えて練習するのは大変」


 わらおー会の教室で白井さんと喋っている内容は二本目について。

 もし決勝に行けたのなら、次のネタはどうすべきかと質問したのだ。


「同じネタを決勝もやるっていう選択肢もあるけど……あんまおすすめはせんかなあ」


 うーんと首を傾げる白井さん。


「でもいい質問! 梶くんが決勝を考えてくれてるってことやし熱意を感じる!」

「じゃあ、二本覚えるってことですね! 了解です!」

「決勝までは一か月あるし、ネタの方向性は予選の空気を確かめてから考えてもええかも? てことで、はいこれ!」


 手元には予選用のネタを印刷した台本を受け取る。

 先日の俺のタメ口提案を白井さんが即落とし込んできてくれたのだ。

 白井さんの喋り口調もファナさんや女子さんに話しかけるような感じになっていてなんだか嬉しい。


「実際に読みながらやってみよっか?」


 姿勢を正して頷く。


「おっしゃ自由だあーー!!」

「あ、こんにちは先輩……」


 豪快に引き戸が開かれ、勢いよく女子さんが登場すると、後ろに隠れるようにしていたファナさんと一緒に教室に入って来る。 


「ネタ合わせか? 見せてみろよ!」

「うんっ、ファナも見たいな……」

「おっけ~! じゃあ梶くん、最初の挨拶よろしく!」

「最初ですか……!」


 俺と白井さんが座っていた席の近くに女子さんとファナさんも座る。

 二人の熱い視線が俺の顔に注がれる。


「ども、アーヴァンチュールです……」


 吐息のような挨拶が少し冷えた教室に染みわたり消える。


「ちっさ! 声ちっさ!」


 椅子からずり落ちそうなリアクションで白井さんが返す。


「舐めてんのかナイトメア! それでもゲリッた男かよ!」


 その言い方なんかいやだ。


「梶くんもう一回いこ! せめて教室中に聞こえるくらいで!」


 台本を読み進める前に俺の発声練習から始まるのだった。



「ねえねえ、梶くん梶くん」

「はいはい、白井さん」

「高校生のうちらはなんてったって夢で溢れてる、そう思わん?」

「僕らの未来は無限大です、どこにだって行けちゃいます」

「うん、だからいろんな夢を摘んで味見してみたい」

「いいですね。この夢は酸っぱい味。甘い味に辛い味の夢。それとほろ苦い味の夢だってあるかもしれません。夢の数だけ味も違うというわけですね」

「……」

「反応がないということで、僕の詩人の夢は諦めた方がよさそうです」



 ――


 ――――途中噛みながらもアーヴァンチュールの予選ネタ「夢」を読み終える。


「わぁ……! おもしろかった!」


 ファナさんは木漏れ日のような笑みで、ぱちぱちぱちと拍手をくれた。


「ああ、おもしれーじゃん!」


 ナイトメアの声量次第だけど、と条件を付けた女子さんだったが、ネタの内容には満足してもらえたのか、途中で何度も笑ってくれていた。

 ボケとツッコミに合わせるようにファナさんと女子さんの顔がほころぶと、してやったり感があって気持ちいい。


「ファナちとこーちゃんが言うならイイ感じ! あとはこいつを3分くらいで終わるように凝縮したり、ボケとツッコミ改良したり……ひたすら繰り返し練習やね! 頑張ろー、梶くんっ」

「はい!」 


「……ん? なんだかお前ら空気変わってね?」


 組んだ足をプラプラさせながら、女子さんはジッと目を細めて俺を見る。

 

「ファナも思った! なんだか距離が縮まった感じ!」

「そうかなあ? あ、うちが敬語やめたからかも!」

「……へぇ? ナイトメア。ほのかの純真をもてあそぶようだったら――女子代表として容赦しねぇからな! そーいえばお前は、オレら全員を得意なタイプってほざいてたな!? つまり、そういうことか?」

「いやいやっ、あれはあの場を和ませられたらなあって思って適当に言っただけで! って、なかったことになってませんでしたっけ!?」


 しん、と誰の反応も返ってこなかった。


「適当だと? てめえ! そいつは聞き捨てならねえ!」

「はい……それは、やっちゃってもいいかもです……ここちゃんっ」


 ファナさんをセコンドにして、バシバシと女子さんのワンツーが俺の腕に降り注がれる。


「あはは。うちは声が可愛くて笑顔も素敵らしいしなあ」

「白井さんまでっ、痛い、痛いですっ」


 すっかりナイトメア呼びされるのにも違和感がなくなった。

 女子さんにからかわれながら午後の時間が過ぎていく。

 途中、女子さんのネタを見せてもらった。


「女子代表として半端な男子は容赦しねえ! 常夏生まれの女子あらため、ココナッツの! 女子による女子のための常識シリーズ! ココナッツこの前――」


 半端なことしてる男子をネタに女子側からの目線でぶった切るネタだった。



◇ ◇ ◇



 俺と白井さんは台本に色々と書き込みながら、女子さんは思いついたネタを即披露して賛否をもらいながら練習に励んでいる。

 ファナさんは先月のランキングで上位に食い込んだことが相当嬉しかったようだった。「今月も頑張ります!」張り切っており、ゲームの大会も近いらしく、一戦ごとに「ふぁーっ!」と狂喜乱舞を繰り返していた。


 そんなこんなであっという間に夕方になる。

 

 わらおー会の教室で別れ、今日の練習を頭で振り返りながら校門に向かう。

 靴を履き替えて出入り口前で女子とぶつかりそうになる。


「あ、すいません!」


 スマホを見ながら歩いていたので至近距離まで気付かず、それは相手も同じようだった。危ないねスマホ歩き。気を付けよう。

 慌てて謝り顔を見ると見覚えのある顔だった。

 向こうも俺の言葉に頭を下げ、俺と目が合った瞬間表情を一気に曇らせた。


 黒いロングコートとマフラーに黒髪が包まれるように収まっている。

 コートと同じような黒いマスクで顔の半分は隠れていたが、俺の中で強烈に残っているそのジト目とほくろが、彼女が誰かをすぐに思い出させてくれる。


「……雨宮、さん」

「私、自己紹介しましたっけ?」


 明らかな嫌悪感に満ちた目つきで睨まれる。

 まるで金縛りにあったように体が動かなくなる。

 そういえば直接聞いたわけじゃなくて、教えてもらったかも……。

 だとしたらいきなり名前で呼び出したやべえ男子って思われても不思議じゃない。


「あ、その! 生徒会の終わりですか!? お疲れ様です!」

「はあ……。そんなのいいですから」


 どうしよう。

 こんなところで雨宮さんと会うとは思わなかった。

 どうしよう。

 雨宮さんがリッカさんなのか確かめたい!!

 確かめたところでどうしたいとかはないけど……でも確かめておかないとこの先も「もしかして」と、びくつきながら配信することになってしまう。


「……ハル……」

「(びくっ)っ!?」

「あ、春はまだかなあ、なんて。ははは、寒いなあ~~」


 俺の声が聞き取りづらかったのだろう、黒髪に隠れていた有線のイヤホンを取り外すと、接続が悪かったのか彼女のスマホから大音量の声が流れた。


『今日はサブクエ少しやろうかなって、本編よりサブクエが面白いのは名作の証拠だと思うんですよね――』


「あ!」


 雨宮さんは隠すように消音にしてバッグの奥底にスマホを押し込む。

 キリっとさらに貫くような瞳で睨まれた。


「……な、なんなんですか。いいからどいてもらえます?」


 見えている限りの雨宮さんの顔が赤くなっている。

 今の、俺の声だったよな?

 そっくりそのまま俺も同じことを言った覚えがある。

 見直してくれてる……てか、本当に雨宮さんがリッカさん!?


「ご、ごめんなさい!」


 靴箱に張り付いて道を空けると早歩きで雨宮さんが横切る。


「ほんとわけわかんない……失礼します!」


 スタスタと肩で風を切りながら去っていく雨宮さんの背中を見送る。

 ど、どうしよう……。

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