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お笑いとラブコメは混ざりますか?~ゲラなヒロインとスベる俺が青春を沸かす話~  作者: たーたん
序章 わらおー会編

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3話 運命の出会いだと思います!

 腰を折り、俺を見上げたままぐいっと顔を近づける白井さん。

 反発し合う磁石みたいに俺の上半身は勝手に反った。


 こんな近くで女子の笑顔なんて見たことがない。

 女子ってこんな顔小さいのか……。 

 それにシャンプーなのか、空気に混ざっていい匂いもする。

 小ぶりな鼻も、笑みを作った唇もはっきりと形が見える――ああ、まじまじと見ちゃだめだ、落ち着け落ち着け。


「お、お笑いです……か?」


 なるべく息を吐かないように答える。


「はいっ、お笑いです!」


 お笑いって漫才とかコントとか。さっきやった大喜利のことだよな……たぶん。


「梶く……じゃなくて、梶先輩のあの大喜利回答三連発! ほんまセンスあるなあ思いまして! こう、うちの感性にびびびってきたんです! これは話しかけなもったいないやつだって」


 姿勢を戻した白井さんは、小刻みに両手を動かしながら喋る。

 身振りで感情を表現しようとしている姿は子供みたいだ。

 

「うち、こういうときの直感めちゃくちゃ大事にしてて」


 彼女はぴたっと言葉と動作を切り、真剣な眼差しで俺を見つめた。

 そして一呼吸置いた後、


「これは運命の出会いだと思うんですよ!!」


 目をキラキラ輝かせ、両拳を握りながらそう言い放った。


「う、運命って……」


 運命ってこうもすんなり言えるもの?

 つまりこれは、俗にいう告白というやつでは……。

 ということは俺、もしかして彼氏になっちゃうの!?

 

 って、違う違う! 何有頂天になりかけてるんだ俺は。

 さっきから早鐘を打つ心臓の音に身を委ねてしまいそうになる。


「梶く、あぁっと、へへ。梶先輩のやったことわかってますよ!」


 ぴたっと足を止めると再び彼女の顔が俺に近づく。

 元の姿勢に戻っていた俺の上半身も再び反った。


「しらけさせたこと、ですよね……?」

「しらけ? ふふふっ、違いますよ!」


 大げさなくらいぶんぶんと首を横に振る白井さん。


「ああいう場の模範解答って決まってるってうちは思ってて、やっぱりそんな回答ばっかりでした。確かにおもしろいし、うちが回答者だとしても掴むために答えたと思います。でも梶く、いえ梶先輩は違ったんですよ!」


 すらすらと、近づいたまま喋る白井さんの前髪を冷たい風が撫でた。

 一歩後ろに下がった白井さんは、人差し指で前髪を整えながら俺と目線を合わせて、今度は眉を下げ苦笑いのような顔になる。


「って、あはは。ごめんなさい。めちゃくちゃ喋ってますね。こんな急に言われて困っちゃいますよね」


 俺はこの隙にようやくちゃんとした呼吸をする。鼻から吸う冷たい空気が体の中を冷やしてくれてほんの少しだけ胸の動悸も収まる。


「ええと、とりあえず、先輩呼びしなくても大丈夫、です」


 先輩呼びは言いづらそうだし、先に気にしなくてもいいと伝えるべきかなと思った。そもそも俺が先輩ぽくないしな、敬語だし。


「……っ」


 指先で前髪を揃えながらきょとんと眼を開く白井さん。

 小さく閉じた口は、一瞬で大きく開いて八重歯を見せる。


「く……あははは! そこ気にしてたんですか! あははっ」


 折り曲げた人差し指で目じりを拭いながら笑っている。

 俺、そんな笑うようなこと言っただろうか。


「はは……」


 俺は愛想笑いで返すのがやっとだった。


「じゃあお言葉に甘えて。梶くん、でいいですか?」

「は、はい、ぜんぜん……」


 まるで花が咲いたようにぱぁっと顔が明るくなる。


「ありがとうございます! うちのことは白井でも、ほのかでも。友達からはほのちゃん、なんて呼ばれてますけど、好きなように呼んでください!」


「白井さん……で」

「はーい、呼びましたか。梶くん!」


 それ返しに困るやつ……! 

 炎みたいな勢いは名前から来てるのかもしれない。


「こんなところで立ち話でもなんですから、食堂とかどこか座れるところに行きませんか? そこで続きお話しましょ! ここ日陰でちょっと寒いですし」


 白井さんはぶるっと寒そうに両腕を擦る。


「あ、それとも梶くん、この後予定とかあったりしますか?」

「その、帰ろうかなって思ってたくらいで……何もないです」

「やたっ!」


 小さく跳ねるようにして喜ぶ白井さん。

 いきなりお笑いしましょうなんてぶっ飛びすぎだし、用事があるからといって逃げることもできたけど、曖昧な返事を残したまま今も俺はここにいる。


「へへー! 行きましょ、梶くん!」

「え、あ、ちょっと……」


 白井さんは俺の制服の袖を小さな手でぐいっと掴むと、強引に歩き出した。

 誘われるがまま、俺は彼女に引率されている。

 

 どんな話をするのかは興味があった。

 それに、あの凍てつくような空気の中で凍死せずにすんだのは彼女のお陰だ。

 捕獲されまいと逃げた俺のあとをわざわざ追ってまで、声を掛けてくれた彼女の誘いを無下になんてできない。


 とか何とか言ってごまかそうとしているけど、本当は女子に声を掛けられて完全に浮かれてるしょうもない男子であることは自覚しなくちゃいけない。


 こんなに楽しそうに袖を引っ張っていく女子に笑いかけられたら、断れるわけがないじゃないか。

 

 ――単純な男なんです、俺は。

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