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お笑いとラブコメは混ざりますか?~ゲラなヒロインとスベる俺が青春を沸かす話~  作者: たーたん
第一章 東高等学校はじまり編

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23話 わらおー会の休日① 梶のファッションチェック編

 月曜から12月に入る。

 俺たちはネタ合わせよりも目下の敵に挑むことにした。

 ボケもツッコミも通用しない。容赦なくマイナスになる。

 乗り切らないことにはネタどころではないかもしれない。


 ――そう、期末テストだ。


 大まかなスケジュールはこうだ。

 ※まとめると、24日が大事ということ。

 12月1日の月曜日から7日の日曜日までは基本的に部活動は禁止。9日の火曜日から11日の木曜日までが試験。その後、24日に終業式でその後にE-1が開催される。ネタ順の抽選と発表は、テスト期間中に行われるのだと思う。

 冬休みに期間中はE-1の投票期間で、上位5組が選出される。冬休み空け、1月30日が決勝戦。優勝者もここで決まる。


 金曜日の夜、わらおー会のチャットで会議が行われ、ファナさんの提案で勉強会を開催することになった。


『どこでやろっか勉強会。学校の図書室でも行く?』

『図書室いいと思います』

『テスト前だし人多すぎなんじゃね? 休みまで学校行きたくねえよ。どっか近くのファミレスに行こうぜ。もち、ナイトメアの奢りで』


 何にせよ会う流れになっているので、俺は気が気じゃなかった。

 明日行くとなったら決めなくちゃいけないことがある。

 決め過ぎても、ダサすぎてもいけない。

 絶妙な無難さが求められる。


 ――そう、服装だ。


 学校の図書室なら制服で行けるからアリかもしれないと思い、図書室に賛成票を入れるも却下された。そして奢らされそうな流れになってきている。

 それより何を着ていけば?

 黒いウインドブレーカーと、灰色のパーカーとジーンズしかないけど。


「なんか臭うぞ。これいつ洗ったやつだ?」


 俺はリビングからスプレーの消臭剤を持ってきてパーカーとジーンズがびしょびしょになるまで吹き続ける。無臭と書いてたがさすがにいい匂いが漂う。


「お母さん! これアイロンして!」

「今? いいよ、ほら貸して」


 食器を洗っていた母親に服を渡すと、中断してアイロンの準備をしてくれる。


『ファミレスもええけど、静かなとこのが集中できるよなあ。長時間いるとお店にも迷惑やろー?』

『えっと、じゃあ……ファナの家どうですか? 静かな場所、提供できます……!』


 ――なんだって!?


 俺は慌てて靴下を探した。

 穴あきに毛玉つき。おい、まともなやつがないぞ!


「お母さん! 新しい靴下ある!?」

「お父さんのならあるわよ。黒の無地だけどそれでいい?」

「いい! ありがとう!!」


 助かった。お母さんマジ感謝。


『明日お昼に集合しよー。13時くらいでええ?』

『いいぜ、ファナは家で待ってろよ。ナイトメア場所知らねえだろ、待ち合わせして行こうぜ』

『じゃあうちも待ち合わせ行くー!』

『はい……楽しみです! お菓子いっぱい用意して待ってますね!』


 チャットの中でも女の子のいい匂いが漂って来る。

 そう思ったけど、さっきのスプレーの匂いが部屋中に充満していてその匂いだった。



◇ ◇ ◇



 そして運命の土曜日。

 女子の家に行くなんて当然初めてだ。

 しかも待ち合わせとか、清水のそれとは気軽さの次元が違う。

 駅前のロータリーは待ち合わせに最適で特徴的なモニュメントがある。俺は待ち合わせの30分前に到着し、口臭ケアのカプセルを飲んだ。

 起きてシャワーも入り、お腹が痛くならないよう薬まで飲んだ。

 服の匂いも大丈夫だと思う。


 天気は秋晴れ。

 風は冷たいけ日に当たると暖かい。

 落ち葉が風で流れてカサカサと音がなる。パーカーの腹の部分にある謎の空間に両手を突っ込んで、空を見つめ精神統一に勤しむ。


「あ! 梶くんやー!」


 よく通る関西弁が聞こえた。

 顔を上げると、改札の方から白井さんが走ってくるのが見えた。その後ろには女子さんがいる。ぱっと見の服装と身長差で姉妹のようだった。


「えへへ、お待たせっ!」


 ぴょんと俺の前に着地する白井さん。スカートと一緒にボブの茶髪が膨らむ。


「おう」


 片手を上げて挨拶する女子さん。


「こんにちは……!」


 うわああ! 白井さんと女子さんの私服だ!


「今来たところです! えっと……いい天気、ですね!」


 俺はすかさず伝家の宝刀、天気の話題を繰り出した。


「あ? んなもん見りゃわかんだろ」


 指先一つで俺の宝刀は砕かれる。


「それよりナイトメア、オレらを見てなんか言うことないのか? 適当にスルーするつもりなら女子代表として容赦しねぇからな」

「あはは! うちらの恰好、梶くんに評価してもらおうかなって! ファッションチェックみたいに!」

「……!?」


 ――なんだって!?

 俺の心が木枯らしで丸裸にされ、一気に曇り空になっていく。

 昨日意気込んでみた俺だけど、第一歩のハードルにしては高すぎやしませんか?


「ほら、うちが思う梶くんて、しっかり考えるネタはイマイチですけど、アドリブにセンスがあるじゃないですか? もっと磨いてあげなってみんなと話してて。ちょっと今日はオシャレもしてきたんです。へへっ、どうですか?」

「二人ともか、可愛いですよ……!」

「あ? んなもん最初から知ってんだよ。どこがどう可愛いのかチェックするんだよ。むっつり男子の視線で」

 

 女子さんが一歩前に出る。


「心で思うな。口でそのままを語れ。それがファッションチェック」


 腰に手を当てて片方の手はだらんと下げポージングする女子さん。


 女子さんは、お腹のあたりまでのダウンジャケットで胸の下までチャックが閉じられ強調されている。中は白いTシャツなのかわからないがとにかく丈が短い。

 動くたびに、健康的な小麦色の肌と、へそのラインが見え隠れする極めてデンジャラスな仕様だ。

 下は黒のショートパンツ。長い脚の季節感と防寒性能を、機動性と露出が凌駕している。短い髪型と相まってボーイッシュさが制服姿よりも引き立っている。


「はは! ガチな目で見てくるぞほのか! 通報準備!」

「……だ、だって!」


 俺は唾を飲み込む。

 ふと、木曜日の放課後に生徒会の雨宮さんが来た後シャドーボクシングをして追い払っていた女子さんが思い浮かぶ。ガッツポーズもしてたな。

 ということはボクシング……攻め、そして勝利。これだ!


「しっかりガード上げ、上半身を防御力しつつ、下半身は真夏のような攻撃力……もとい機動力を重視していて攻めに特化。超攻撃的な勝利を掴むためのファイティングコーデだと思います! あと、右耳だけにある向日葵のピアスで更にバフされてます……!」


 コーデとか意味わからないまま言ったけど合ってるよな……?


「……ふーん」


 女子さんはニヤリと笑い、短いステップを刻みながら頭を振りながら寄ってくると俺の胸を右ストレートで突いた。


「これはむっつりの分!」


 心臓が止まるかと思った。痛い。


「な、なんで……!?」

「まあ、ギリ合格点やるよ。おしゃれの基礎は我慢と攻撃だからな!」

「ありがとうございます……」

「あとこれ。イヤリングだから」


 何が違うんだろう……?


「次はうちー! はいっ、回るから見ててくださいね!」


 女子さんが下がると、入れ替わりで白井さんがくるりとその場で回転した。

 ふわり、とスカートの裾が広がり甘い匂いが風に乗ってやってくる。

 女子さんとは対照的で、白井さんの服装は秋っぽく露出が少ない。


 ラメ入りの淡いピンクのニットにモコモコした上着を羽織ってる。

 下はチェック? のプリーツスカートを履いていて。白い靴下に白いスニーカー。普段は肩まで伸びた髪も、内側に巻かれていてふんわり感が半端ない。

 それに何より一番目を引くのは紺色の角ばった小さなリュックを背負っている。

 普段の学生服姿より子供っぽい。いやむしろ子供にしか見えない。遠足か? 


「どお? テーマは、梶くんに見せたい白井ほのかのデート服だよっ!」


 両肩のリュックの肩紐をぎゅっと握って、ちょこんと片足を後ろに軽く曲げる白井さん。

 だよっ、か。


 ……俺でもわかるくらい、めちゃくちゃボケてるんだと思う!


 ボケてるんだろうけど可愛い!


「……梶くーん!」

「――ハッ! ええと、その、めちゃくちゃ似合ってて可愛いです……!」

「むむ、それだけですかぁ?」


 それ以上何を言えばいいのか、一つも出てこなかった。

 それ以外言うことある? ない。

 白井さんはむぅと不満げに頬を膨らませる。


 そしてファナさんと出会ったら即、挨拶よりも先にファッションチェックで誰よりも先に喋らなくちゃいけないと白井さんから会長命令が出たのだった。



 ――そう、追試だ。



 完。

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