第11話 ハーレム最高!
「本当に噂が本当だったのね! 許さない!」
ここは、修道院の食堂だった。エリーニャやユリヤから事情を聞いた修道女達が集まり、話し込んでいた。
一番気が強いジュリーが一番怒っていた。ジュリーは、20歳過ぎの修道女だったが、見目もよく、仕事は菓子の売り子だった。という事で外の世界での接触も多くあり、アシュラの悪い噂もよく聞いていたようだった。
アシュラはこの修道院のある町の性風俗にも入り浸り、多額の借金があり噂も聞いた事があるらしい。
ジェリーはこの修道院では、かなり慕われているのか、他の修道女達も彼女に同調して怒っていた。
アシュラの評判は、はっきり言って最悪のようだった。ここまで嫌われていると、少し可哀想にはなってくる。
「でもなんで生贄儀式なんてやってるんですか?」
修道女の一人が手を挙げて質問してきた。
「それは悪魔と取り引きする為よ。悪魔を喜ばせる生贄儀式をやればやるほど、成功するってカラクリよ。この土地で拝んでいる魔王も悪魔よ言っていいわ。本当の神様は人の生贄なんて要求しないから!」
話しの流れでエリーニャは、いつのまにか本当の神様の事や福音を語っていた。
「本当の神様ってなに? 教えて」
修道院で人望があるジェリーが、興味を持って聞いてくれたので、エリーニャは話しやすかった。
ついつい話しに熱がこもる。エリーニャは牧師だが、まるで宣教師みたいな事をしていた。中途半端に神様を知っている日本人に話すより、神様について何も知らないこの土地の人の話す方が、理解して貰いやすいようだった。修道女達は真剣に話を聞いてくれ、エリーニャの声にも熱が入っていた。
「エリーニャの言う通りよ。私はもう洗礼受けたからね」
ユリヤがそ言うと、修道女達はいいなーと羨ましそうな声をあげていた。いつの間にか神様の話で盛り上がり、エリーニャの宣教は成功と言っていいようだった。
これだけ女性に囲まれて自分が中心に立っている姿は、まるでハーレム状態だった。
ほんの少しだけ、口元がにやついてしまう。
今はエリーニャというアバターを着ているが、中身は佐藤恵理也(47)である。この状況が嬉しく無い男性は少ないだろう。
本いた世界では、こんな風にハーレム状態になる事は皆無だった。
別にエロい気持ちになったりはしないが、心が浮つくのは確かだった。
「エリーニャてすごいのね」
見目のよいジュリーにもそんな事を言われ、エリーニャの頬がピンクになった。
「いやいや、すごいのは神様ですわ」
とは言ったものの、元いた世界では決して味わえないフワフワした気持ちになっていた。まるで夢見たいだ。楽しい!
娘の環奈が、ゲームや漫画に夢中になる気持ちがわかる気がした。現実では決して味わえない夢を体験できる。この瞬間だけは現実から切り離され、フワフワと楽しい。
現実が酷ければ酷いほど、ハマってしまうだろう。環奈はゲームや漫画にハマるのも、こうした現実逃避もあったかもしれない。それほど現実がつらかったのか。父親である恵理也は、全く気づかなかった。その事はやっぱり、エリーニャいや恵理也の罪悪感を刺激していた。
今は楽しい瞬間だったが、必ずしも幸せだとは言い切れなかった。
さっきまでは夢心地に浸っていたのに、このまま現実逃避しているのは良くない。
早くゲームクリアする方法を見つけ、元いた世界に帰らなければ。
「あれ? そういえばハンナはどこに行ったの?ちょっと前から姿が見えなくない?」
だんだんと目が覚めてきたエリーニャだったが、ジュリーの声に完全に目が覚めた。
さっきまでこの食堂にいるはずだったハンナの姿がない。確かトイレに行くと席をたったはずだったが、帰ってこない。
「大変! ハンナがアシュラに連れされたんじゃない!?」
ユリヤのその推測は、あっている可能性が高かった。
修道女達は、急いでハンナを探し回った。




