第四十七話
「言ったと思い込む、かぁ……成程なぁ……。」
「そんなのアリなんすか……?」
「うーん、でも現実にできるやつがここにいるからなぁ……。」
うぅぅぅん、って低い声で唸られても、俺、どうしようもない。
出来ちゃったものは出来ちゃったし、それが何で出来ちゃったかの解説は出来ないし。
俺に出来ること……どうやって出来るようになったかの説明、はもう終わっちゃったし。
結局スライムに下敷きにされに行くのかな、どうするんだろう。
悩んでる邪魔はしたくないけど、どうしよっかなぁー。
ハクと小夜にもふもふさせてもらっとこっと。
えへへへー、もふも
「クオン。」
「……なに。」
「もふもふの邪魔したのは謝るからそんな不機嫌な声出すなよ。」
ナオはそう言って苦笑いするけど、別に、不機嫌な声なんか出してないし。
もふもふの邪魔されたとか、思ってないし。
「クオン兄さん、ほっといちゃってごめんなさいっす……。」
「あ、それは全然大丈夫。気にしないで。」
「やっぱ邪魔したこと怒ってんじゃねぇか。」
後で好きなだけもふもふしてくれ、って笑う。
仕方ないなぁ、二人ともいつでも傍にいてくれるし、戻しても呼べば出てきてくれるんだから、まぁいいことにしとこう。
で、それはそれとして。
「この後どうするか決まったの?」
「あぁ、一応。っていうか、お前も行きたいとことかやりたいこととか言えよ? オレたちに合わせないでも。」
「俺別に希望ないもん。一人で行ったことないとこ行くのは怖いなー、くらい?」
「そうかい。」
「それ私もわかるっす! 見たことない敵とか出てきたら上手に対処できないかもしれないっすし……。」
「うん、それに迷子になったりするかもしれないし。」
「アマレットのはともかく、クオンはマップ見て動いてくれ。」
「ずっと表示してるはずなんだけど、忘れちゃうんだよね。」
「忘れんな。」
見てくれ、って真剣な声で言いながら、顔笑ってるのばれてるよナオ。
まぁいいけど、で、結局どこいくの?
「二層の探索しようぜ。具体的には町の外出ようかなって。」
「スライムに下敷きされなくていい?」
「それも興味あるけど、また今度でいいかなって。二層独り占め出来てる今のうちに探索しとこうぜ。」
「討伐系のクエスト受けて行きたいっす!」
「もちろん。ついでにクエストマーク出てるNPC居たら教えてくれ。情報収集しとく。」
「そういえばナオって情報屋さんやるの? メーアさんに言われてたの。」
クエストが張り出してある掲示板に近寄りながらそんな話をする。
クエストは一層でもナオに教わった通り公式と非公式があって、公式の中にも掲示板に張り出されてるやつと、NPCの人から直接受けるクエストがある。
NPCの人からもらえるクエストのなかで頭の上にはてなマークがついてるやつは公式クエストで、はてなマークがついてないのは非公式クエスト、と、呼ばれてる。
「クオン、行くぞ。」
「あ、まってクエスト受けてない。」
「パーティ組んでるだろ。討伐系は共有だ。」
「便利っすよね。」
「そうだった、ごめん。ねぇ、何倒すの? っていうかどこ行くの?」
「南の門から出る予定。」
何倒すかはクエストログ見てくれ、って言われて目を通しながら歩き出す。
えぇっと、受けたクエストは三つで、全部ヒントが南の門を出る、になってる。
クエストのタイトルも見られるはずだけど、なんか、まぁいいや後で。
置いていかれてもいやだし、三つってことは出てきたやつ適当に倒しても大丈夫だと思うし。
っていうか、一層はエリア一つに対してモンスターは二種類だったけど、今回は三種類なのかな。
層を重ねていくごとに増えていくとか?
それだったら十層とか大変なことになるよね。
順当に増えていくとしても十一種類?
エリアがそれぞれ四つだとしても、四十四種類……。
無理だな、覚えられる気がしないや。
「おいてくぞ。」
「連れてって。」
「その一言で会話できるのすごいっすよね。」
「遅ぇんだもん。」
「置いてかれるのやだもん。」
「だったらちゃんとついて来いよ。」
「考え事してたの。」
「だから声はかけたじゃねぇか。」
「うん、ありがとう。」
「……ケンカ始まるかと思ったら仲良しでよかったっす。」
一安心っす、ってアマレットさんが嬉しそうに笑う。
別に本当においていかれたところで怒ったりしないし、置いてかないでよーってくらいは言うかもしれないけどそれで喧嘩になることはないと思うけどな。
ナオも俺がはぐれたくらいで喧嘩になるくらい怒ったりはしないと思うんだけど。
っていうか、喧嘩なんてもうずっと長いことしてないような気がする。
最後にしたのいつだろう……。
半分ふざけたような喧嘩ならよくするけど……。
「門潜るぞ。武器装備したか?」
「ちょっと待って、剣抜いとく。」
「ついでに短剣も装備しとけば?」
「両手に剣持ってハクと小夜といたら俺攻撃力高すぎじゃない?」
「心配するのはそこなんすね? 両手に持って戦えないかもとかじゃなくて。」
「ここまで短いのはあんまり使わないけど、本差と脇差の二刀流はよくやるからね。」
長さの分重さが違うからバランスとるの難しいかもしれないけど、慣れちゃえば大丈夫だと思うし。
咄嗟に剣抜けないみたいに反射的にやったら失敗するかもしれないけど、それはそれとして。
「準備できたな? アマレットは?」
「いつでもオッケーっす!」
「俺も大丈夫。ハク、小夜、行くよ。」
俺とアマレットさん、ハクと小夜が頷くのを待って、ナオが門に向かっていく。
家とかは木製だったけど、明るい今見れば街を囲むような壁は木じゃなくて……なんだろう、これ。
鉄でもコンクリートでもレンガでもない感じだけど……まぁいいか。
ナオが押し開いてく門も壁と同じ感じの材質っぽいけど……。
あとで触り心地どんなのだったか教えてもらおう。
ゲームの中だから架空の材質かもしれないけど。
「うわ、すげぇ。」
「キレイっすね!」
とかなんとか考えてる間に、門を潜り抜けた二人の歓声が聞こえた。
慌てて後を追って、俺も思わず。
「青い!」
「そのままかよ。」
笑いながらナオに突っ込まれたけど、仕方なくない?
ナオだってすげぇって言っただけだし、俺のこと言える立場じゃないと思う!
なんて言い合いはまた今度することにして。
門をくぐった先、俺が青いって叫んだものの正体は、水、だった。
一面に広がる青い水面の真ん中を切り開くみたいに桟橋が通っている。
桟橋はまっすぐどこかに繋がってるみたいだけど、うーん、ある程度先は見えないようになってるみたい。
リアルだったら絶対見通せる距離のはずなのに見えないってことは、ゲームのシステムでそういう風になってるってことだよね?
逆に良く見えるのは。
「ねぇ、」
「あっちの方、何か浮いて……すみません! 言っちゃったっす!」
「え、何、どれ? どこ?」
「えっ同じやつじゃなかったんすか。」
「慣れろアマレット、こいつと視点が被ることはまずないから。」
「ねぇ浮いてるのってどれ?」
あっちっす、あれ、あの先のとこ、影っぽいけど薄っすら見えるっす、って指さして教えてくれるのに。
あ、ほんとだ! 薄っすらだけど見える!
見た感じ……なんだろう、緑っぽい?
植物が生えてるのかな。
「それで、クオンが見つけたのは何だ?」
「あ、えっとね、水面に波紋が浮かぶのが見えるなって。」
ぱしゃ、ぱしゃ、って、音が聞こえそうなくらいリアルな波紋。
よっぽど大きい物ならともかくリアルなら確実に見えないだろうなって距離、大きさの波紋まではっきり見て取れるってことは。
「この下にモンスターがいるってことなんじゃないかなぁって。」
「あー、なるほど。モンスターの名前見る限り魚だとは思ってたけど、波紋の下にいるのか。」
釣り竿とか持ってないからメーアさん通りかかってくれるの待たなきゃなんねぇかと思ってた、なんて笑って言う。
モンスターの名前、やっぱり俺もちゃんと把握しといたほうがいいよね。
えぇ、っと……クエストログ……の……受注中のクエストのタイトル……あれ。
「何か今クオン兄さんが考えてることわかる気がするっす。」
「よし、助けてやってくれ。」
「はいっす! クオン兄さん、倒すのはエンゲルフィッシュとトイフェルフィッシュっす!」
「また外国語混ざってる……天人石鯛と蛸ってこと?」
「お前外国語苦手って言いながらすぐ翻訳できるの強いよな。」
「ありがとう。それで、もう一つのクエストは?」
「収集クエストっす。タールケッタってアイテムを集めるみたいっすね。」
「駄洒落じゃん。っていうかリアルそのままじゃん。」
「何語だよ。」
「タミル語だと思うけど、自信ない。」
「聞いたこともないっすけど、どのあたりっすか……。」
「インドの南の方の種族のやつ……だった……ような。」
「お前しかわかるやついねぇんだから自信持ってくれ。で、どういう意味で何を集めればいいんだ?」
「良いって意味と悪いって意味だったと思うから、日本語にしたら良し悪し。ヨシともアシとも呼ばれるのは植物の葦のことだと思う。」
「どんな知識量だよ。」
「葦は和歌にも出てくるから好きなんだ。さっきの魚は淡水と海水っぽいし、葦は塩水でも生きていけるから全体的に生えてるんじゃない?」
っていうかさっきアマレットさんが見つけてくれた緑のやつが葦……じゃない、なんだっけ、名前忘れた葦でいいや、葦だったんじゃない?
飛んで行って確認して、そのまま剣で切れたら収穫してきてもいいけど……。
「飛んでるときに波紋から蛸の足伸びてきて引きずり落されたりしないかなあ……。」
「どんなホラー映画だよ。」
「っていうかクオン兄さん、サラマンダーなのに水の生き物相手にして、大丈夫なんすか……?」
蛸の吸盤ってなかなか外せなくて嫌なんだよなぁ、なんて考えてたら、アマレットさんが心配そうに首を傾げた。
倒してたこ焼き作ってくれよ、とか言うナオと思わず目を合わせて、二人して水面を見つめる。
浮かんでは消えていく波紋を眺めること、少し。
やがておもむろにナオが口を開いた。
「よし、クオン、一回飛び込んでこい!」
「えっやだよ!」
皆さまこんばんは、お久しぶりです。
本当に本当に、お久しぶりです。
長らくお待たせして申し訳ありません。
そんな挨拶をした前回から更に間が空いてしまい、本当に申し訳ございません。
しかも土曜日でもなくてすみません。
こうなったら長く空いたあとの一話目くらい、一日でも早く上げた方がいいのではと、思いまして。
休みの長さを考えると微々たる差かもしれませんが、もし喜んでいただければ幸いです。
そしてここまで言っておきながら案の定、書き溜めは、できておりません。
ので、なるべく早く更新したいと思ってはおりますが、確約はできません。
気長にお待ちいただけると幸いです。
ずっと待っていてくださって、ありがとうございました。
これからもどうぞよろしくお願いいたします。




