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第三十九話

「各自収穫は十分ってことで。」

「うん。帰ったら何作ろうか、アマレットさん、希望ある?」

「ウサギ肉は赤いシチューにしてみたいんすけど、調味料がまだまだ足りないっすよね……。」

「シチューには遠いよね……牛乳にバターに……牛がいるエリアがないと厳しいかな。」

「この魚もよかったら使ってくれ。」

「え、いいんですか?」

「せっかくメーアさんが釣ったお魚なのに。」

「俺は釣りができるかどうかが知りたかっただけだからなぁ。それを売って金儲け、ってのも興味ないし。」

「無欲ですね……。」

「そういうナオこそ、何の収穫もないんじゃないのか?」

「オレは戦ってないのに経験値もらってますし、メーアさんの釣りの成果とかの情報もらってるんで。」


ごちそうさまでーすと笑うナオに、メーアさんもそれならいいかって笑顔で返す。

でも多分一番得してるの俺だよね。

経験値は皆で均等に分けられてるんだし、魚までもらっちゃってさ。


「さて、この後どうする?」

「選択肢は?」

「帰って解散するなり料理したりするか、このまま塔登ってみるかかな。」

「選択肢聞くクオンもクオンだけど、当然のように答えるナオもナオだよな。」

「うん? 変ですか?」

「いや、気にするな。俺はどっちでも構わないぞ。ただ、先に進むなら足手まといになると思うが、先に謝っておく。」

「そうなったら、ハクか小夜についていってもらえばいいかなぁ。」

「当たり前のように個人行動が前提になってるが、固まって戦ってもいいんだからな?」

「あ、そっか。」

「まぁでもそれぞれ戦闘スタイルが違うからなぁ。」

「私と師匠は超近接っすし、クオン兄さんは近接、メーアさんは……」

「俺は何なんだろうな? 準中距離ぐらいじゃないか。剣も使うし。」

「少なくとも、オレ達みたいに移動しながら戦うのが得意なタイプじゃないですよね。」

「だな。」


……結局それって、バラバラで戦った方が良いってことなんじゃないの……?

いや別に、今のところ手を焼くようなモンスターもいないし、多少戦闘スタイルが違う人と一緒でも問題はないと思うけどさ。

と、いうか。


「これ、完全に先に進むってことで話してるけど、それでいい?」

「確かに。私は問題ないっすよ。」

「俺も、足手まといになってもいいなら構わないぞ。」

「じゃあ行きましょうか。クオン、地図出せてるな?」

「常時表示済みです。」

「よし。じゃあとりあえず進めるとこまで行くか。」

「うん。」


進めるところ、っていうと、七階……だったっけ。

とりあえず地図を見ながら進んでいくだけだし、行く先は同じだからそこまではみんな一緒に行くことにして。

ずっとハクたちに戦ってもらうのも悪いから先頭は俺が歩くことにして、七階を目指す。

……前に普通に来られてるんだから、今回苦戦することもないよね。

道もわかってるんだし、サクサクと進んでいって、あっという間に七階へ。

ここから先は知らないところだ、けど、多分今までの傾向からみて最初の内は犬と狼、後半方は猫とコウモリが出てくるんだと思う。

コウモリは飛んでくるのが厄介なんだよなぁ。

音、聞こえないしさ。


「さて、組み分けどうするかな。クオンはやっぱり単独の方がいいか?」

「え、別にそんな希望出したことないと思うんだけど。」

「いや、一人で歩いてる方が階段見つけやすいかと。」

「そんなの期待されても困るんだってば。」


何度も言うけど前を歩いてるハクと小夜にくっついてるだけだからね、俺は。

どこに階段があるかわかる能力なんて持ってないし、あっても多分ゲームがつまらなくなるだけだと思うんだ。

目的地がはっきりわかる能力なんて、遅刻しそうな時だけあれば十分。


「じゃあオレ、メーアさんと一緒にいましょうか。」

「最速と鈍足が一緒にいちゃだめじゃないか?」

「メーアさん別に鈍足じゃないでしょう。ここにいる三人がちょっと人よりagi振ってるだけで、メーアさん普通ですよ。」

「平均よりは少し落ちるけどな。でも、せっかくのナオの速度が生かせなくなるだろう。」

「やっぱりハクか小夜か貸そうか。」

「いや、オレメーアさんの戦い方ちゃんと見たいから、邪魔じゃなければ一緒にいたいんだよな。」

「情報収集の一環っすか?」

「そんなとこ。」

「そういう事なら構わない。危なくなったら逃げてくれよ。」

「そういうときはクオンにメッセージ送って助けに来てもらいましょう。」

「早く来られるように頑張るね。」


責任重大だ、頑張らないと。

けど、なんか頼りにされてる感じがして嬉しい。


「アマレットはどうする? それこそハクか小夜借りるか?」

「ううんと、今のところ一人で大丈夫っす。もし駄目そうになったらお願いしてもいいっすか?」

「うん、もちろん。……いいよね?」


返事をしてしまってから、ハクと小夜を見下ろして尋ねる。

二匹ともこくりと頷いてくれたから、改めてアマレットさんに頷いて。


「じゃあ、行くか。」

「うん。」

「あ、クオン兄さん、もし肉が落ちたらお知らせくださいっす。」

「了解。そっちも落ちたら教えてほしいな。」

「もちろんっす。」

「あの二人の食材への執念は、見習いたいものがあるな。」

「見習っていいものなのか疑念は残りますけどね。」


後ろでのんびりした感想が聞こえるけど、とりあえず後回し。

うーん、蟹や貝はもちろん、ウサギも実際食用として出回ってはいるからかそこまで抵抗はないけど……。犬、狼、猫、コウモリとなると、ちょっと食べ辛い、ような。

……肉の塊になっちゃったら同じかもしれないけど。

……おいしいのかなぁ……。

でも少なくとも、小夜と同じ猫の肉は複雑な気分になるね。

倒すのは倒せるんだけど、全然。

それを調理して食べるとなると……うーん。

と、考えてる傍からとびかかって来る犬を切り払って倒し、バチバチする電気で遠く狼からの魔法を相殺したハクに代わって小夜が狼に襲い掛かる。

体の大きさでは完全に小夜のほうが負けてるんだけど、狼相手に一歩も引かない戦いぶり。

むしろ小柄な体と持ち前の跳躍力で狼を翻弄してる。

うーん、手助けしたほうがいいのかもしれないけど、小夜あっちこっち飛び回るから剣突っ込むのちょっと怖いな。

完全な制御ができるとは言えない火魔法は問題外だし。

やっぱり大人しく見学してる方がいいような気もするけど、本当に働けって感じだよね、すぐそばで見てるだけ、って。

とかなんとか考えてる間に小夜は狼の体力を削り切り、ぺろぺろと自分の前足をなめてきれいにしている。

モンスターは体力が尽きたらポリゴン片になって消えていくし、それまでは攻撃してもHPバーが減るだけで血が出たりはしない。

だから別に返り血で汚れるとかそういうことはないはずなんだけど……まぁ、かわいいからいいや。

毛づくろいといえば、ブラシとか買ってブラッシングしたりしたほうがいいのかな。

嫌がる子もいるらしいけど、喜ぶ子にはご褒美になるって聞くし。

とりあえず今はないから、地面にお座りしてる小夜とその隣で耳をピコピコさせてるハクに手を伸ばして。


「いつもありがとう、お疲れ様。」


二匹とも頭ふわふわ……!

それが本当にご褒美になるかは別として、ご褒美のつもりで頭を撫でたわけだけどこれは完全に俺へのご褒美だね。

ふわふわ。

あったかい。

気持ちよさそうな顔もかわいいし嬉しいしいつまでだって撫でていたいけど残念ながらここはフィールド、戦闘区域内。

しかも現時点でかなり前線のタワー七階にいるわけで。

あ、剣納めちゃったんだっけ、仕方ないや。


「ファイア!」


一声ではじける炎、その中から聞こえる犬の悲鳴。

……そういえば何も考えてなかったけど、紺色狼は水魔法を使ってくるわけで、色で考えたら赤犬は火魔法だよね。

タワーでは色々変更点もあるけど、火魔法使ってきたリ、逆に火魔法効きにくかったりしないのかな。

……いや、今はいいや、先に倒しちゃおう。

火の中で動けないでいるらしい間に剣を抜いて、えいっと一発スラッシュアップ。

俺の後からのんびりついてきたハクがトドメの雷魔法を打ち込んで、赤い犬は無事にポリゴンになって消えていく。

その間に俺の足元まで来ていた小夜が、びょんっと尻尾のばねを使って頭まで跳びあがってきた。

見事に着地した小夜をみて、ハクもぴょんぴょんと体を伝って肩まで上がって来る。

……なでなで、好感度、上がりましたか。

俺は頭と肩が幸せです。

でもこれは戦いにくそうだなぁ。

頭揺らせないし、剣振ったらハクまで振り落としそうだし。

火魔法の練習ってことにしとこうか。

……黒こげにしたら肉って落ちないんだっけ……?







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