第三十八話
さて、やってきましたタワーの入り口。
あらかじめハクと小夜に出てきてもらって、必要だったら他の人の手伝いを頼むかもしれないってお願いしてある。
というか、いつの間にか北の森もサクサク進めるようになってきてるんだよね。
俺が遭遇したあのいっぱいモンスターが出てくるようなところと出会ってないからかもしれないけど。
いっぱいのモンスターといえば、シャロンさん、大丈夫かな。
あれから出会ってないし今もログインしてないみたいだけど、モンスターに追っかけられてないといいな。
「クオン? 行くぞ?」
「あ、はーい。」
首を傾げたナオに手招きされて、小走りで追いかける。
タワーに入ってすぐは南の原っぱのモンスターが出るだけだし、俺たちは階段につながる道を知ってるわけだから一直線に向かうことになってる。
それでもモンスターと出会わないってのは無理だから、この中で小回りが聞いて比較的火力が高い俺……といいたいところだけど、ハクと小夜が率先してやっつけてくれる。
俺は、ほら、索敵がないからね。
俺がモンスターに気付く前に二匹が飛び出して行っちゃうんだよね。
戦うのが苦手だったりモンスターに怯えたりしてたらかわいそうだから好戦的なのは大歓迎なんだけど、誰に似たんだろう。
単純に考えたら俺……なんだけど、俺、そんなに好戦的かなぁ。
「メーアさん、ネタバレ平気でしたっけ?」
「どんとこいだな。」
「マップデータ、いります? ほとんど埋まってはないですけど。」
「あぁ、いいのか? 助かる。」
「フレンド価格なんで無償で。」
「……助かる。」
そっか、なるほど。
前に話してた時はお店に売るってだけだったけど、友達と共有するって使い方もあるんだね、マップデータ。
「俺のもいる?」
「お前のはオレの持ってるデータより一直線だろうが。むしろオレのデータいるか?」
「……ねぇ、マップデータってどうやって出したり入れたりするんだっけ?」
「言うと思ったぜ。」
画面見せてみろ、ってナオが言うのに恒例になった画面の可視化。
先にメーアさんにデータを送って、寄ってきたアマレットさんと一緒に話を聞きながらてくてくと階段を目指す。
……敵を、プレイヤーが動かなくても倒してくれるのって、こういう時本当に助かるよね。
駄目なんだけどね、多分、本来は。
絶対お前も働けって思われてる。
「よし、二階上がるぞ。目指すは三階の後半だしな。サクサク行くぞ。」
「うん。」
「本当に一直線だな、クオンのデータ。」
「こいつこういう勘は働くんですよね。無意識に。」
「先を歩いてるのハクと小夜だから俺じゃないよ。」
「じゃあ遺伝したんだな。」
「遺伝……!?」
ハクも小夜も、俺の召喚モンスターだけど俺が生んだわけじゃないし、俺人だし、ハクは狐で小夜は猫なんだけど……!?
遺伝?
そこに遺伝ってあるの?
「遺伝子って言い方が正しいのかはわかんねぇけど、毎度言ってるみたいにこのゲームの世界で重要なのは脳……お前に言わせると意志の力、だろ?」
「うん。」
「ハク……より小夜の方が分かりやすいかな、小夜がたくさんいる敵モンスターの黒猫から小夜として一つの個体になったのは、お前と契約したからだろ?」
「そうだね。」
「つまり、小夜が小夜として存在しているために、お前の召喚モンスターの、っていう情報が絶対必要なわけだよ。」
「うん。」
「で、小夜の存在を確立させるためにお前の情報が必要なら、小夜にお前の持ってる特性が継承されてても不思議じゃないと思うんだよ。」
「なるほど?」
「それをオレは遺伝って表現したわけ。正しくはなんていうのかは知らねぇけどな。伝わったか?」
「伝わった。」
「師匠、クオン兄さん、階段着いたっすよ。」
「本当に一直線だ……し、優秀なモンスターたちだな。」
へへ、でしょう。
ハクも小夜も、とっても優秀なんだよ。
まぁ何度も行ってる通りそれに頼りすぎちゃいけないんだけど、早速お世話になってるよね。
っと。
「ファイア。」
「うわっ!? び、びっくりしたっす!」
「あ、ごめんね。」
「何かいたのか?」
「多分スライムかな。うさ耳さんはこっちを見つめてはこないし。だよね?」
「あぁ、見つめてくるのはスライムだろうけど、お前せめて姿確認してから攻撃しろよ。振り向きざまじゃなくて。」
「だが、加減が上手くなったな。凄いぞ。」
加減……そういえば、できるようになってる。
あれかな、シャロンさんと一緒に色々実験するのに火魔法使ったからかな。
だったら今度会った時にお礼言わないと。
小さい火を出すのの練習になったもんね。
「クオン兄さん、後ろに目がついてるっすか?」
「え、ついてないよ。前しか見えないよ。」
「それにしてはすごい反応だったっす。」
「スライムさんはこっちをじっと見つめてくるから……。」
攻撃しますよ……! ってつもりでみてくるんだもん、うなじがチリチリして仕方ないよ。
町なんかで髪長いなーとかの視線なら、見られてるのはわかるけどそれだけだし。
今のところタワーのスライムにしか意味ないけど。
「とにかく上がるぞ。メーアさん、次の階の後半から泉のモンスターが出るようになってますけど、どうします? 四階まで上がりますか?」
「あぁ、そうだな、できれば。完全に泉のエリアになる階の方が望ましい。」
「ですよね。」
「迷惑か?」
「いえ全然。」
階段までの道筋はわかってるもんね。
敵のモンスターやっつけてるのも俺たちじゃないし。
いや、そろそろ、ちゃんと働きますよ?
「ナオ、俺先頭行って良い?」
「おー、いいぜ。食材おちるもんな。」
「あ、そっか。それもあるね。」
「お前はよく目的を忘れるよな。」
「あ、タワーのうさぎも狩ればよかったっす!」
「お前もかアマレット。」
「よし、今から狩ろう。」
「ハクちゃんと小夜ちゃんに負けないように頑張るっす!」
索敵全開! ってアマレットさんがガッツポーズ。
索敵も火魔法みたいに自分の意志でどうこうできるのかな?
「気持ち程度だな。そこはあんまり変わらねぇ。」
「そうなの?」
「話すと長いから短くまとめると、索敵は常に働いてるスキルだって前に話したよな?」
「うん。こうしてしゃべってる間も索敵は動いてるって、森で言ってたね。」
「対して火魔法は、使いたいときにMPを消費して起こすスキルだ。」
「うん。」
「索敵みたいなのをパッシブスキル、火魔法みたいなのをアクティブスキルって言うんだ。」
「で、強い火をって思う、っていうのはMPをどれだけ消費するか、っていうのをゲームサーバに指示してるのと同じなわけだよ。」
「なるほど!」
「まぁそのMPの消費量はintやmndで変わる上に、個人の資質もあるんだろうけどな。」
「その辺はちょっと不公平ですよね。親父に物申しておきます。」
「いや、俺はその辺も一興だと思うから気にしちゃいないが、このクソゲー! って会社が責められるかもしれないから、一人のプレイヤーの意見として伝えてくれると嬉しいかな。」
「了解しました。」
ぴし、とかしこまって敬礼してから、ニヤリと笑う。
似たような顔で笑って、メーアさんは俺を振り返った。
「クオン、行かなくていいのか? アマレットは先に行ってるぞ。」
「わ、すみません行ってきます。」
「おー、旨い飯楽しみにしてるぜ。」
「うんっ、期待してて!」
ひらひらと手を振るナオとメーアさんに振り返して、とりあえず出会ったうさ耳に一撃。
っていうかあれ、ハクと小夜どこ行ってるんだろう。
アマレットさんと一緒にいるのかな……っと。
「スラッシュ、と。お肉は……おちてないか。」
綺麗に残ったところが落ちるっていうなら、どこを攻撃するのが一番いいかな。
食べられなさそうなところを残せばいいんでしょ?
えぇと……耳?
「耳を切り落としたらそれはもうただの毛玉なんだけど……まぁいいか。」
ウサギ要素がなくなっちゃう。
まぁでも食べるときには何であっても肉の形になるんだし今更だよね。
よし、じゃあ次あのうさぎ、チャレンジ。
「うさぎ肉が四つと、蟹肉が三つ、貝肉が五つっす。」
「メーアさんには先四階行ってもらってるぞ。」
「うん、ごめんね、楽しくなっちゃってつい。メーアさん一人で平気?」
「あぁ、貝は動きが遅いから勝てるって楽しそうだった。」
「それはよかった。」
「蟹相手だったらさっさと逃げるってさ。ずっと動いてたら助けに来てくれって。」
「はぁい。」
「だからさっさと上がるぞ。」
三階にいたら、四階のマップ見られないもんね。
っていうか、そっか。
ハクと小夜の場所、マップで見たらわかるんだったね。
二人とも階段の前でお座りして待っててくれたんだけど。
ほんっと、優秀だよね、俺の召喚モンスター、可愛いしモフモフだし優秀ってすごい。
「あ、ナオ、帰ってきてくれたか。」
「うわ、メーアさん、開幕大乱闘ですね。」
「あぁ、引っ掛けた。すまないが助けてくれ。」
「他の方には出会いませんでした?」
「幸いにも。」
「それは良かった。クオン、出番だぞ。」
「はぁい。」
俺が出る前に小さな二匹が蹂躙を始めてるんだけどね。
さて、俺も働きますか、っと……。
「食料確保っす!」
「うん、沢山獲ろうね!」




