第三十七話
先週はお休みしたあげくお休みしましたとも言わないで申し訳ありませんでした。
言い訳をさせていただくならば、三連休が忙しすぎて土曜日という概念が吹っ飛んでおりました。
申し訳ありません。
「え、えぇっと、俺、元気ですよ……?」
今日も朝……じゃなくてお昼からご飯食べて宿題して生クリーム泡立てまくってロコモコ丼食べてきたし。
これ以上ないほど元気だけど……でも、なんで?
「あぁー……そういう、こと。心配してもらって、すみません。健康体です。」
「そうか、だったらよかった。これからも遠慮せずに色んなことに付き合ってもらえるな。」
「はい、どんどん誘ってください。」
……?
ナオとメーアさんだけで話がまとまっていく……。
俺とアマレットさんはよくわからないまま首を傾げあって二人が説明してくれるのを待ってたら、それに気付いた二人がこっちを向いた。
「お前がさ。」
「うん?」
「もし自力で動けなくて、でも脳だけは動いてるからゲームでは行動できるような状態だとして。」
「うん。」
「まぁ、そういう状態だったら衛生面とか安全面とかで髪切られることが多いけど、それくらい長く伸ばしてる可能性もあるわけだ。」
「俺も、そういう場合は切られてるかもしれないとは思ったんだが、普通に生活しているよりは高確率かと思って。いや、健康であるならそれが一番なんだが。」
「もしお前が寝たきりでそれが原因で髪が長いなら、それだけ長くなるくらいずっと寝たっきりってことだろ。」
「あー、そっか。俺ね、毎日刀振ってるくらい元気ですよ。」
「え、刀?」
「はい、稽古で。」
「クオン。」
「うん? ……あ。」
バレちゃう……かな?
居合道、そこまで有名じゃないかもしれないけど、別に極端に珍しいわけじゃないと思うし……。
家が道場、ってまで言っちゃったらバレちゃうかもしれないけど、部活とかでやってる人は多いんじゃないかな。
少なくとも特定されるほどじゃないと思う。
ん、だけどなぁ?
「すみません、メーアさんを警戒してるわけじゃないんですけど……ごめんなさい。」
「いや、なんか、大変だな。」
お疲れ様、と苦笑いしながらメーアさんがナオに言って、ナオも似たような顔で笑う。
迷惑をかけてしまってすみません。
よろしくお願いします。
「こういうところなんですよね……いや、嫌じゃない俺も問題なのかもしれませんけど……。」
「ははは、仲良きことは美しきかな、という事にしておこうじゃないか。」
「はは……。」
謝ったほうがいいのかな……。
いや、でも別に俺悪いことしてるわけじゃないし……。
……迷惑はかけてるか。
「なぁ、それはそうと、君たちタワーには行ったか?」
「あ、はい。途中までは。何かあるんですか?」
「いや、俺は行ってないから伝聞になるんだが、フロアと同じモンスターが出るんだろう?」
「はい。ただ、姿が一回り大きくなってたり、使ってくるスキルが違ったりします。」
「そうか……なぁ、泉のモンスターが出るフロアには、釣りができるところはあるのかな?」
「えっ」
ナオ、一瞬動きが止まる。
それをどう解釈したのか、メーアさんはやはり魚はモンスターじゃないから出ないのか、なんて一人で呟いていて。
そのうちびっくりから回復したナオが、自信なさそうな口調で話し始める。
「恐らくですけど……タワーは一部非戦闘区域になっていて、それ以外はすべて戦闘区域です。」
「あぁ。非戦闘区域の場所を覚えておかないと、休憩もログアウトもできないんだろう。大変だよな。」
「全然大変そうな口調じゃないっすね……。」
「まだ一層だからな、休憩部屋はそれなりに多いと話に聞いている。」
「そうなんですか? 俺たち一度も出会わなかったよね、ナオ。」
「お前のおかげで階段一直線だったからな。とにかく、釣りができるところがあるとすれば三階の途中から五階の間ん休憩室だと思います。」
「ふむ……やはりそうか。ありがとう。」
「いえ、ただの推測ですし……。というか、この後お暇なら一緒に検証しに行きますか?」
「それは楽しそうだ……だが、おそらくレベルが足りない。真面目にレベル上げしてないからな。」
真顔で頷きながらそんなこと言うのも不思議だと思うけど。
でもメーアさん、遊んでなんぼって言ってたし、レベル上げて強くなるだけがゲームじゃないもんね。
俺たちだってこうして料理とかして、トッププレイヤーに言わせれば時間を無駄にしてる、ことになるんだろうし。
……って、そうだ、そういえば。
「ねぇアマレットさん。」
「なんすか?」
「タワーで、蟹倒したよね?」
「はいっす。」
「肉、落ちた?」
「……そういえば、記憶にないっす。遠くから魔法で全体的に焦がしてから攻撃してたので、綺麗に残るところがなかったのかもしれないっす。」
「なるほど……。」
俺のところもハクと小夜による殻も甲羅も知ったこっちゃないズタボロ攻撃だったもんなぁ……。
もしかしたらその時は料理できるって思ってなくてそのまま売っちゃってたのかもしれないけど、少なくとも今ストレージにはないわけで。
「ここの蟹とタワーの蟹、味違ったりするのかな?」
「それを言うなら、原っぱのうさぎのお肉も調理してみたらよかったっすね。」
「あ、それもそうだね。残念なことした。」
「うさぎなんてリアルではめったに食べられないのに、見逃したっす。」
「今度乱獲しに行こう。」
「はいっす。」
「おいそこの物騒な二人組。」
あれ。
ナオとメーアさんの話を邪魔しないように小声で話してたつもりだったんだけど、聞こえちゃってたみたい。
別に物騒だと言われるほどの話じゃないと思うんだけど……まぁ、いいや。
「どうかしたの?」
「タワー行こうぜ。」
「あれ、さっきやめとく話になったんじゃないの?」
「別にメーアさんめちゃくちゃにレベル低いわけじゃないし、一緒に行けば大丈夫だろ。」
「世話をかけるが、頼む。」
「釣り出来るところがあるとすれば非戦闘区域だしな。そこまで行ければ儲けもんだし。それにメーアさん火力あるから助かる。」
「そういってもらえると俺も助かる。」
「あ、クオン、火力って攻撃力のことだからな。メーアさん水魔法使いなのに? とか思ってそうだけど。」
「わ、わかってるし!」
火魔法なら俺の方がとか思ってないし!
けど、ナオとアマレットさん、攻撃力で悩んでたのかな?
俺はstrにも割と振ってるけど、二人はagiに結構振ってるみたいだし。
あんまり単独行動しないで一緒に戦ったほうがいいかな?
「agi振りにはagi振りの戦い方があるから心配ご無用。お前は召喚モンスター含めれば数人分の火力があることになるんだから、遊撃やってんのが一番いい。」
「あぁ、確かにそうだな。召喚魔法なしでそれだけの火力をつけようと思えば防御力や素早さを削る必要があるが、召喚魔法なら本人のステータスは大幅に削らなくていいもんな。」
「まぁ数が増えれば脳がパンクするとかいう根本的なデメリットあったり、他にもいろいろあるとは思いますけど、」
「脳がパンクするって怖いんだけど何?」
「お前の場合まず大丈夫だと思うからスルーしとけ。まぁ、このゲームそのものが召喚魔法を推してるくらいだし、当たりスキルであることは違いないだろうな。」
「どんなモンスターと契約するかとかで結構差は出そうっすけどね。」
「それこそ好みの範囲だろう。火力重視で選ぶもよし、可愛いからで選ぶもよし。」
「あぁ。いくら強いからって嫌いな生き物がデザインのベースになってるモンスターと一緒に戦うのはしんどいしな。」
「そういうのは脳派に乗ってモンスターにも伝わりそうだ。」
「召喚モンスターとぎくしゃくするのは嫌っすね。」
……スルーできないよ怖いよ、って、突っ込む隙がなかった。
まぁ、後で説明してもらえばいっか。
にしても、モフモフが欲しいからっていうのが一番の理由で入れたスキルだけど、当たりだったんだ。
そのあたり何も考えてなかった。
……し、ハクは卵をもらったからだけど、小夜は完全に可愛いから、だ。
別に火力を求めてるわけじゃないし、それこそ、例えば蜘蛛とかと一緒には、絶対、絶対に、戦えないし!
メーアさんじゃないけど、楽しんでなんぼの所はあると思うから全然いいんだけど、なんかこう、俺、もう少し色々考えたほうがいい?
「お前が考えたければ考えればいいけど、基本的にお前脳より体派だから、直感に従った方がいいと思うぜ。」
「じゃあそうするー。」
考えなくていいならそっちの方が楽だし!
やりたいことをやりたいようにするのが一番だと思う。
人様に迷惑をかけない範囲で、だけど。
……あ、ナオは除く。
「……なんか失礼なことを考えられてる気がするんだけど……。」
「気のせい気のせい。」
「はぁ……。じゃあ、タワー、いきますか。」
「おー!」




