第二十五話
「豊作だな。」
「お金持ちだね。」
「でも、ほんとにもらっちゃっていいんすか?」
「あぁ。もともとナオがいてくれないとできない作戦だし、素材はナオのものって言っても過言じゃないから。」
「と言ってくださってるし、そのオレが分配しようって言ってんだからいいんだ。」
「じゃあ、ありがたくいただくっす。」
「おう。」
町のアイテムショップの前。
ストレージいっぱいに詰め込まれた瓶とか毛皮とかを売り払ったお金を、四人で分け合った後の会話。
経験値もたくさん入って、俺もハクも強くなった……かな。
最初からそんなに苦戦してないから、あんまり実感がないや。
このゲームはあまりレベルが上がりにくい設定みたいで、劇的にレベルアップはしなかった。
サクサクレベル上がらないと楽しくないよって人もいると思うけど、俺はその分先を長く楽しめる気がして、結構気に入ってる。
それに、レベルが上がったりしてステータスが変わらなくても、プレイヤースキルっていうらしいものは成長していく。
俺はあれから原っぱを焼け野原にするような火は起こさないで済んだし、アマレットさんの真似をして飛びながら戦ってみたりもした。
大体一撃で倒せてしまうから挑戦してないけど、ハクとの連携も試してみたいな。
「メーアさんは、この後どうしますか。」
「特に予定はないかな。連休だし。」
「オレは北か西に行こうと思ってるんですけど、ご一緒しますか。」
「君たちが良ければ、ぜひ。」
「俺はいいよ。」
「私もっす。」
「それより北か西に行く予定なの、今知ったけど。」
「今決めたからな。どっちがいい?」
当たり前みたいに言うけど、結構適当なところあるよね、ナオ。
まぁ、行き当たりばったりでもなんでも、楽しければいいやって思っちゃう俺のせいでもあるかもしれないけど。
「西は泉があるんだっけ?」
「あぁ。蟹が出るらしいぞ。」
「小さな村があるって聞いてるっすけど。」
「村って言うか、一応休息できる……っていうか、ログアウトできるような場所だな。わかりやすく村の形をしてるだけで。宿屋と簡単な店がある。」
「アイテムショップ?」
「一応回復薬なんかも置いてはいるけど、釣り道具がメインかな。竿とか網とか。泉で魚が釣れるらしい。」
「スキル持ってなくても?」
「持ってたら違うもんが釣れるのかもしれねぇけど、今のところ釣りスキル持ってる人の情報はねぇな。」
「北は?」
「北の奥には黒の塔……二層につながるやつな。迷宮タワーとかいうけど、とにかくそれがあるから言ってる人は結構多い。」
「攻略されてるんすか?」
「塔の中は十階に分かれてるらしくて、その最上階にボスがいるんだけど、まだそこまではたどり着いてないって。結構道が複雑なのと、レベルが足りてないらしい。」
「十階もあるんだ。」
「まだわからねぇけど、層が上がればその階数も増えるかもしれねぇな。」
先に調べてあったのか、すらすらと何でも教えてくれるナオ。
俺はもうそのお世話になりすぎて慣れちゃってたんだけど、メーアさんには珍しかったみたいで、ぽつりとすごいな、と呟くのが聞こえた。
ナオが首をかしげる。
「掲示板とかに結構載ってますよ。」
「いや、でもすごいよ。ナオは情報屋みたいだな。」
「情報屋……。」
……んん、これナオの何かのスイッチが入ったかもしれない。
情報屋さんが実際にどんなことをするのかはわからないけど、ナオのステータスが許すならそういうこともやり始めるんじゃないかなぁ。
やりたいことやって楽しければそれが一番いいと思うから、別にいいんだけど。
「で、どうする? 西に行って戦ってみるか、北行って攻略に加わってみるか。」
「塔にたどり着く前に森を抜けないといけないけどな。」
「ワープは出来ねぇしな。地図があれば楽なんだけど、まぁしょうがねぇ。」
「北に行く流れになってるけど、アマレットさんそれでいい?」
「はい! どっちも行ったことないので楽しみっす!」
「じゃあ北行くか。メーアさん、装備とかアイテムとか大丈夫ですか?」
「一応は。森だし、足手まといになったらすまない。」
「剣大きいですもんね。」
木にめり込んじゃったら、引き抜くのが大変そうだ。
……そうなったら木を燃やしちゃうっていうのはどうだろう。
剣もダメになっちゃうのかな。
「あー、メーアさん、魔法使います?」
「剣が駄目そうなら魔法にするつもりだった。元々剣が振り回せない場所用に魔法取ってるから。」
「えーと、フレンドリーファイアはご存知ですか?」
「あぁ、大丈夫だ。命中率はそこそこある。」
「そうですか、すみません。」
「いや、気にしないでくれ。ナオの心配は正しいよ。」
ぺこりと頭を下げるナオと、笑顔で首を振るメーアさん。
……フレンドリーファイアってなんだろ。
友好的な火……?
「端的に言えば誤射だ。」
「うん?」
「魔法だけじゃないけど、味方を攻撃してしまうこと。魔法は剣に比べて射程が長いし広いから、巻き添えを起こしやすいんだよ。」
「もっとも、魔法は熟練度を上げればフレンドリーファイアを軽減できるようになるらしいが。」
「まぁとにかく今は、メーアさんが魔法を使うところに割って入ったりするな、ってだけ覚えとけ。」
「わかった。ちなみにハクの魔法も同じ?」
「だと思うぜ。ハクのスキルや召喚モンスターと召喚主の間では変わるのかもしれねぇけど、とりあえず当たらないに越したことはねぇ。」
「うん、気を付ける。」
俺が魔法を使う時も、誰かを巻き添えにしないように気を付けないといけないってことだね。
魔法だけじゃないってことは、剣で味方を切っちゃったりしたらそれもダメージが入るってことだ。
PKができるって言ってたし、プレイヤー同士でダメージが入るのは当たり前なのかもしれない……?
でも、パーティメンバーくらい免除してくれたらいいのに。
「じゃあ行くか。」
「はいっす!」
「北は、暗い森なんだっけ?」
「あぁ。ネタバレいるか?」
「俺はちょっと知りたいかな。強い?」
「いや、他のフィールドに比べたらちょっと強いかもしれねぇけど、今のステータスなら負けることはねぇと思うぜ。」
「ナオは北の森に行ったことがあるのか?」
「ちょっと覗いた程度です。ほとんど情報サイトとかの受け売りですね。」
「え、いつの間に行ったの?」
「お前がアマレットと出会った時。三十分くらい先に入っただろ、オレ。」
言われてみたらそっか。
お使いクエストも、三十分もかからなかったもんね。
でも一人で強いフィールド行けるのってすごい。
それくらい普通にできないとゲーム攻略なんてできないのかな。
「じゃあ、モンスターも知ってるか?」
「一応は。それ含めネタバレするか聞くようにしてるんです。クオンはあらかじめちょっとは知ってたいタイプだし。」
「未知の世界って怖いもん。」
「逆に自分の目で知っていくのが楽しいって人もいますから。」
「勇者だね。」
「その勇者が何人もいるから情報が回って来るんだけどな。」
「お世話になってます。」
「掲示板やサイトの人に感謝するんだな。」
言いながら、ナオはいつの間にか出して操作していたらしい板のどこかを叩いた。
色もついてないから全然気づかなかった。
明るい音を立てて、メッセージが届いたって文章が流れる。
勿論差出人はナオ。
件名は、北の森。
えぇと、出てくるのはコウモリと猫。
名前はコウモリがバットで、猫はスプリングテールキャット。
どっちも体が小さめで素早さが高いのが特徴で、コウモリは高さはそんなにないけど飛行してくるから注意。
そして猫はその名前の通り、しっぽがばねみたいに曲がるんだって。
普段は普通の猫のしっぽみたいなんだけど、攻撃を回避するときなんかにしっぽをくるくるさせて衝撃を吸収したり飛び上がって攻撃してきたリする、と。
それはそれとして、このゲームはモンスターの名前に統一感がなさすぎると思う。
また、北の森は暗くて、少し視界が悪い。
コウモリも猫も黒いから、近づかれてるのに気づきにくいんだって。
森自体は静かで音がよく聞こえるから、索敵を持ってないプレイヤーはそれで対応できるかも?って書いてある。
今のところあまり成功率は高くないみたい。
俺索敵持ってないんだけどなぁ。
「今クオンにネタバレ情報送ったから、欲しいやつは転送してもらってくれ。」
「俺は今のところいいかな。」
「私も大丈夫っす。……あ、虫は出ますか。」
「出ないと思うけど。苦手か?」
「あのブーンって音が嫌いっす。」
「それはわからなくもないな。」
「この先虫ばっかりのフィールドが出たらどうするんだ。」
「嫌っす……焼き払うっす……!」
炎魔法使えるのは俺なんだけど……。
あ、でも山火事は雷とかでも引き起こせるらしいから、アマレットさんにもできるか。
それより俺は索敵どうしよう。
ハクと一緒にいたら索敵してくれるかな。
でもハクは白いから、かえって目立ちそうだ。
隠蔽ボーナスはないけど、俺のポンチョは黒いから隠れやすいかな。
「さて、ここから森なわけだけど……どうする?」
「どうするって?」
「ソロで戦うか、二人組くらいに分けてみるか。」
「うーん、俺たちはほとんどお互いの戦い方を知らないからなぁ……。」
「俺、ハクいるよ。」
「じゃあクオンはソロにするか? メーアさんは剣がめり込んだ時用に誰かいた方がいいですか?」
「そうだな……最初から魔法でいってもいいんだが、誰かいた方が心強いかな。」
「俺かアマレットどっちがいいですか。」
「凄く返答に困る質問だな?」
「あ、私、一人で通用するか怪しいのでメーアさんにご一緒してもいいっすか!」
「助かる。」
「じゃあ俺はひとまずソロにするか。怪しかったらクオン、合流するから。」
「わかった。」
あっさりと組みわけが終って、それぞれ適当に歩き出す。
ここが集合場所になるんだから、迷子にならないように地図に印をつけておかないと。
「そうだクオン。」
「うん?」
ぴ、と地図に丸印を付けてから振り返ると、ナオがにやりと笑っていた。
「なに?」
「お前もう召喚スキル持ってるんだし、モンスターと契約できるからな。」
「あ、そっか。」
「で、ここに出るのは、コウモリと。」
「黒猫……!」




