佐藤剛
"カウントダウンを始めます。
10.9.8.7.6.5.4"
"3"
"2"
"1"
"バトル開始です"
前回同様に無機質な電子音による開戦の合図が頭に響くと同時に賢が配置した魔物達が敵陣地へと送り込まれる。
しかし、おかしい事に賢の陣地へは一匹も魔物が転送されて来ない。
「なんだと?」
賢は訝しみながら敵陣地に送り込んだ魔物達の映像をスクリーンに映す。
すると一人の巨漢の男が不気味な剣で次々にスライムやウルフを切り倒していた。
[ユニークモンスター:ヴァンパイヤソード]
スクリーンに男が握る剣の写真が映る。
刃は黒鉄に近い赤黒い色で、根元には血管のような模様が浮かんでいる。
「プレイヤー強化型のユニークモンスターか?
そして、相手陣地には魔物がいない様子、、」
「ということは相手プレイヤーは魔物を召喚せず全て自身のスキル付与をしているの可能性が高いですね」
大部屋から賢のいる小部屋へと移動してきたホワイトマジシャンが賢の疑問に答えた。
「となると一人でこの数の魔物の相手をすることとなる。スタミナや魔力切れを狙うのが鉄板か?」
賢は椅子に座ってスクリーンを眺めながら思考を巡らせる。
「私もそう思いますが、気を付けてください。
相手も一回戦を勝ち越した強敵であるのですから」
ホワイトマジシャンはそう言うと真剣な表情で自分の持ち場へ戻っていった。
-
巨漢で坊主頭の男、佐藤剛はひたすら迫ってくるウルフとスライムを切り倒していた。
既に合わせて50体近くの魔物を倒しているが剛は息切れ一つ起こしていない。
それは剛の持つ[Gランクスキル:スタミナ回復]による影響であった。
このスキルは少量の魔力を使う事で失ったスタミナを回復するというもの。
更に剛の持つユニークモンスター:ヴァンパイヤソードの能力の一つである[魔力吸収]によって倒した魔物から魔力を吸収する力により剛は無尽蔵のスタミナを手にしているのである。
剛が目の前のウルフを切り捨てたタイミングで、背後に回っていたインプウルフが強化された身体能力を駆使して剛に襲いかかる。
「見えているぞ!」
剛は音を立てず背後から襲いかかったインプウルフの存在に気づいており、後ろに振り返りながら剣を振るう。
インプウルフは予想外の反撃に対応する事が出来ず体を両断されてしまう。
死角を狙った攻撃にも関わらず剛が気づく事が出来たのはDランクスキル:気配探知の能力のおかげである。
剛はこのスキルがあるおかげで一体多の状況でも不意を突かれる事が無い。
「水槍」
後方から水の槍が数本、剛に向かって飛んでくるが当然剛は把握しており軽やかな動きで避け、避けきれないものはヴァンパイヤソードで切り伏せる。
「まだまだぁ!!」
インプスライムは更に水の槍を生み出して剛へ向けて放ち続ける。
「馬鹿力」
剛は自身のユニークスキルを発動する。
すると、剛の体から赤いモヤが溢れてくる。
向かってくるアクアランスの間を素早い動きで縫うように進んでいき一瞬でインプスライムの目の前にたどり着く。
「アクアス」
「遅い」
インプスライムが何か魔法を放つ暇を与えずに一刀両断する。
「水柱」
しかし、インプスライムは再生のスキルを使い直ぐに体を元に戻すと剛の足元から勢いよく水の柱を生み出した。
「くっ、、!」
予想外の反撃に剛は宙へ勢いよく吹き飛ばされる。
「斬撃が効かない魔物だったか」
下半身に軋むような痛みを感じるが、空中で態勢を立て直しインプスライムに再び向かい合う。
「水螺槍」
インプスライムは両手から一つの大きなドリル状の水を放つ。
「代償」
ヴァンパイヤソードのもう一つの能力。
それはプレイヤーの肉体を犠牲に強力な一撃を放つ事ができるスキルだ。
ヴァンパイヤソードの柄から一本の管が剛の二の腕に突き刺さる。
するとグングンと剛の血液を吸い込んでいく。
「血斬」
剛が剣を振るうと赤い衝撃波がインプスライムへと放たれる。
赤い衝撃波は水のドリルを一瞬で消し去り、その背後に居たインプスライムすら容易く消し去ってしまった。
間髪入れずに左右からゴーレムの拳が振り下ろされるが剛は[Eランクスキル:鋼鉄の体]を使用する。
ゴーレムの拳を両腕を伸ばして止めると再びユニークスキルを発動する。
赤いモヤと共に爆発的な身体能力が上昇され、硬い体を持つゴーレムをコアごと一刀両断する。
一人で多くの魔物を倒している剛であるが、まだまだ転送されてきた魔物は目の前に大勢いる状態は変わっていない。
それに加えて再生能力を持つスライムは次々に戦線に復活していた。
「纏めて倒す。
ヴァンパイヤソード、両目だ」
剛はブーストを使って後方に勢いよく下がると全ての魔物を前方に捉える。
「代償」
剣の柄から伸びた管が剛の両目と繋がる。
「ぐぁぁあ!!」
両目がヴァンパイヤソードに吸い込まれると剛は余りの痛みに絶叫してしまう。
しかし、絶叫しながらも剣を覆う真っ赤なオーラは大きくなっており、剛は勢いよく横に剣を振り切った。
巨大な赤い衝撃波は大部屋を全て埋め尽くすほど大きく、一瞬で殆どの魔物を葬り去った。
「グルルル!」
しかし、一体だけ生き残った魔物がおり剛の横腹にその鋭い爪を突き刺していた。
その魔物はウルフゴーレムであり、複数のゴーレムの背後に待機していたウルフゴーレムは衝撃を緩和していたのだ。
それでもウルフゴーレムの体はボロボロであったが、右目を失って痛みに悶える剛の隙をつくには充分だった。
「血斬」
剛はウルフゴーレムを突き飛ばした後、自身の血を剣に吸わせて強化された一撃を叩き込む。
ウルフゴーレムに避ける力は残っておらず、その一撃によって消滅してしまった。
「くっ、、気配探知を怠ってしまったか、、」
剛はヴァンパイヤソードを横腹に当てる。
すると、剣から伸びた管がウルフゴーレムに刺されて出来た傷口を覆うと傷口を塞いだ。
ヴァンパイヤソードはスキルによって血液を吸収する際に開けた傷口を治す力も合わせ持っている。
今回はその力を利用して傷口を塞いだのだ。
ただあくまで傷口を塞いだだけで癒えた訳では無い。
着実に剛の体にダメージは蓄積されているのだ。
「早く終わらせよう」
剛は障害のいなくなった大部屋をゆっくりと歩きゲートを潜って賢の陣地へと移動するのだった。




