勝利の雄叫び
エレメントガンナーが放った弾丸は空を切った。
再びエレメントガンナーは前転して後方と頭上を警戒するが、一向にホワイトマジシャンは姿を現さない。
ましてや、この空間にすら気配を感じる事ができない。
そして先程のウルフゴーレムの遠吠えとホワイトマジシャンのセリフから考えるにエレメントガンナーは一つの推測へと辿り着いた。
「しまった!
奴の狙いは!!」
エレメントガンナーはすぐさまゲートへと向かって走り出した。
-
「ワォォォォォン!!!」
場面はウルフゴーレムの遠吠え直後である。
「負け犬の遠吠えか?」
電矢は嘲笑いながら片手に右手に電気を溜めながらウルフゴーレムへと向かっている。
地面に刻まれた×印など全くも気にはしないで。
電矢は×印を通り過ぎて右手を振るう。
「稲」
「失礼」
しかし、突如×印の真上にホワイトマジシャンが現れるとその場で回転蹴りを電矢の背中に繰り出す。
「な!?」
電矢は不意の一撃で溜めていた電気も消え去り、態勢を立て直す事も出来ないまま吹き飛ばされる。
「ガルルルル!!」
それは向かってくるウルフゴーレムの一撃が不可避という事であり、ウルフゴーレムの硬化と鋭利のスキル強化された鋭く硬い爪は容易く電矢の体を貫いた。
「ゴホッ、、」
電矢は口と胸から大量に血を流す。
「クソが!!」
そこへゲートから転移してきたエレメントガンナーが大量の弾丸を飛ばしてくるが、ホワイトマジシャンとウルフゴーレムに届く前に全て消え去った。
それは弾丸だけでなく頭上を飛んでいたリュッテオワゾーとエレメントガンナーの体も光の粒子に分解されている。
「すみません、、電矢様、、」
エレメントガンナーは悔しそうに一言地面に溢すとその体は消え去った。
【WINNER 剛元賢】
目の前のスクリーンに映ったその文字を見て賢は安堵のため息を吐きながら椅子に倒れ込む。
「ヒヤヒヤした、、」
「いやぁ、全くですよ。
もう少し遅かったら私がやられていましたからね」
いつの間にか間横に現れたホワイトマジシャンを見て賢は再びため息を吐く。
「遠距離の相手に対して接近戦に持ち込んで負けそうになるのは情け無いんじゃ無いか?」
賢はいつもの仕返しとばかりに嫌味たっぷりの表情でホワイトマジシャンに問いかける。
「ふふふ、1体1は本来私の得意分野では無いのです。私を扱い切れなかったマスターのせいでは?」
ホワイトマジシャンはいつのまにか全身の傷が癒えており、いつものように余裕たっぷりの笑みで返す。
「てめぇはまたゴタゴタとうるせぇな!」
賢はホワイトマジシャンに殴りかかるとホワイトマジシャンはその手に合わせて握り拳を突き出した。
賢は勢いそのままにホワイトマジシャンとグータッチする事となる。
「ハァ、良くやった」
賢は短いため息の後に笑顔でそう伝えた。
「ふふふ」
それをいつも通りの笑顔を浮かべながらホワイトマジシャンは頷いたのだった。
すると賢の体は光の粒に分解され、気づくと賢は真っ黒な空間に目が覚める。
「惜しくも負けてしまった71番の雷矢選手は案内人に従って特別席へ移ってくれ!そして勝った72番の賢選手は待合室で二回戦を待っててくれ!」
頭に響くミクロの言葉でこの景色の正体に気づいた賢は頭を覆うヘルメットを外す。
すると煌めくライトに目を照射されてしまい、目を細めてしまう。
すぐに拍手が起こっていることに気づく。
賢達の試合を観ていた観客が賢に向けて祝っていたのだ。
「負けたぜ、お前そんな面してたのか」
すると、同じく椅子から立ち上がった雷矢がやってきていた。
スーツ姿の案内人は雷矢が暴行をしないかサングラスの奥からキチンと隣で見張っている。
「あぁ、俺に戦闘の術は無かったからな
最後までヒヤヒヤした勝負だった」
賢は臆する事なく右手を差し出す。
「俺に勝ったんだ、絶てぇに優勝しろよ!」
雷矢は右手を掴んで自身に引き寄せると熱い抱擁を交わす。
「お、おぉ、ありがとな」
賢は一瞬動揺して驚いた顔を見せるが、直ぐに優しい表情となり抱擁を返す。
「応援してるぜ、賢!」
雷矢は案内人の後ろを歩きながら振り返り様に手を振った。
「おう!」
賢は久しぶりの感覚に動揺しながら、はにかんだ笑顔で手を降り返す。
そして、賢も案内人の後ろをついていき待合室へとまってくる。
72番:剛元賢様
そう名札が付いている部屋へと入ると勝手にロックがかかる。
それは選手が外部へ勝手に出歩く事が許されないためである。
待合室は1LDKであり滞在する分には何も問題は無い。
必要な生活用具は一式揃っているのだ。
部屋への拘束も次の試合が始まるまでの1時間程であるため精神的にも問題は無い。
ただなぜ外に出てはいけないのか。
それは他の選手の情報を得る事が出来ないようにしているからだ。
部屋にはテレビは勿論、タブレットなどの端末は存在しない。
予めスマートフォンなどの端末でさえ回収されている。
他の選手の情報を得てしまうと対策が容易であり、フェアな試合が行われないことを危惧しての対応である。
唯一、外部と接触できるのは部屋の中に配置された固定電話だけである。
この電話の内容は全て盗聴されており、他の選手の情報を話したりしてしまうと違反としてプレイヤーが失格となってしまう。
ジリリリリ
部屋に着いて早々に固定電話が鳴り響く。
賢はゆっくりと電話を取ると女性の声が聞こえてくる。
「賢、観てたわよ。
無事に一回戦勝てて良かったわね」
柔らかな口調で話すのは賢の母親である。
「ありがとう母さん。
ただまだ何戦もある内の一回を勝っただけだよ。
親父は?」
賢は穏やかな表情から父親の話になると険しい表情となる。
「あの人は、、
・・・賢の事を応援してるわよ」
母親は少しの沈黙の後、先程通り穏やかな口調で賢に伝えた。
「やっぱりか。
嘘は吐かなくていいよ母さん。
親父はもう俺に何も関心は無いんだ」
「そんな事は無いわ!
貴方は私達の子供。この事に関心の無い親なんて居るわけないの!」
賢の言葉に母親は即座に涙ながらに反論を口にした。
「良いんだよ。
母さんが電話くれて嬉しかった。
また今度会いに行くよ」
そう言って賢は母親の言葉を待たずに電話を切ってしまった。
「わかってる。
例えこの大会で優勝しても親父は俺を許さないなんて事は、、」
賢は拳を強く握りながらベッドの上に仰向けで倒れたのだった。




