甘言
---Bチーム
「魔王を倒すんじゃなかったのかい?」
魔王城に入った迷路のエリアで金城は満面の笑みで正面に立つ五色に語りかける。
「はぁはぁ、、こんなギミックがあるなんて聞いてねぇぞ!」
五色は息切れを起こしながら四つの宝玉を扉に嵌める。
「だから全員で行動した方が良いと言ったじゃないか。まぁ既に半分の宝玉を集めてくれた事には感謝するよ」
「あぁ?調子乗ってんじゃねぇぞ!」
五色が金城に殴り掛かろうとすると、足立が間に入ってとめにはいる。
「はいはい、ストップストップ。
五色君は少し落ち着きなさい。金城さんもあんまり挑発しないの」
足立は呆れたように二人の頭をこずく。
「ハッハッハ、俺は先に行ってるよ」
「俺もー」
「馬鹿に構ってられねぇぜ」
そんな五色達のいざこざを田中、鈴木、煙橋の三人は横目に五色が探索した迷路とは逆側の迷路へと入って行った。
「ちょ、ちょっとまってよ!
何でうちのチームは協調性のない人ばかりなのかな!」
田中達の後を追うように糸川が駆け出すと両手から糸を伸ばして残っていた金城、五色、足立、絵斗の四人の身体につなげて無理やり引っ張ってゆく。
「ちょ、自分で歩けるっつうの!」
「全く君のせいでろくな目に合わないな」
「もぉ!何で仲良くできないのよ!」
「何で僕まで、、、」
その後Bチームは5分程で残りの宝玉を集め切り、迷宮支配人と相対するが、案の定、五色が飛び出して一人で先へと進んでいったのは想像できるだろう。
-Aチーム
ウォリアーαは既にボロボロとなっていた。
持っていた大剣は折れ、両肩に付いているマシンガンも煙がでていた。
「中々やるのぉ、、、」
ウォリアーαの背中から迷宮支配人の乗っている丸い機械が飛び出す。
「もう終わりよ!」
花音が思い切り息を吸い込んで音波をだそうとする。
「えっ?」
しかし、突然背後から強い力で殴られてしまい花音は気絶してしまう。
「な、何してんだよ!
龍弥!!」
勇は花音を殴りつけた人物に叫ぶ。
「悪いが俺の為に負けてくれ」
龍弥は右手を竜化させながら冷徹に言い放った。
「ホッホッホ、仲間割れかの?」
迷宮支配人はその様子を見て嘲笑いながら丸い機械の左右から大砲を出すと照準を合わせる。
「ヴァッハッハ!」
突如迷宮支配人の背後から武蔵が飛び出すが、迷宮支配人は慌てる様子無くゆっくりと振り返る。
迷宮支配人の周囲には自動防御電波が張り巡らされており、その防御は迷宮支配人の魔力が尽きるまで突破される事は無いからだ。
だが、迷宮支配人には一つ誤算があった。
「ハァ!!」
武蔵のスキル、"無敵の左手"はどんなスキルも魔法も無力化する。
「なんじゃと!」
自動防御電波は武蔵の左手に触れると一瞬で消え去ってしまう。
「衝撃波!」
武蔵は続け様にもう一つのスキルを使うと強力な衝撃波によって迷宮支配人を粉々にして吹き飛ばした。
「やられてしまったか」
龍弥は勇の分身を潰しながら、迷宮支配人が倒されてしまった様子を見ていた。
「おい、やめてくれよ龍弥!!」
勇は分身しながら龍弥から逃げ続け説得しようと声を荒げる。
「・・・」
龍弥は無言で両手を竜化させ二人の勇を掴んで拘束する。
「やめろ」
地面から二つの拳が現れ、竜化した龍弥の腕を弾いて勇の拘束を解く。
「あいつの洗脳だとしたら解けても良いはずだがな」
賢は地面に融合させた両手を解除しながら冷静に龍弥の様子を伺う。
「だとしたら自分の意思という事で良いのかしら?」
隣に立つ愛は明確な殺気を龍弥に放つ。
「買収でもされたか?」
清矢は龍弥にかけていた重力の軽化を解除すると同時に、反対に龍弥の周囲に超重力を発生させる。
「・・・」
それでも龍弥は黙り続けて何倍もの重力に耐える。
「完全竜化」
そしてとうとう龍弥は全身を竜化させ、巨大な竜と成る。
「もう、腹括ってるみたいだな」
武蔵の顔からは先程までの笑みは消え、真面目な表情で龍弥と相対する。
(みんな悪いな、、、)
龍弥は心の中で謝罪をする。
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ジリリリリ。
三回戦が終わった龍弥の控室の黒電話が鳴り響く。
「もしもし」
「もしもし、こちら金城財閥の取締役をやっています爺屋と申します」
龍弥は受話器を手に取ると相手は見知らぬ老人であった。
「金城財閥?
私に何のようでしょうか?」
龍弥は全く接点のない相手からの電話で動揺するが、すぐに今回の迷宮戦闘の参加者の中に金城という男がいたことを思い出す。
「娘さんの病気の件、拝見致しました。
微力ながらクラファンの方に100万円程支援致しました」
爺屋のその言葉に龍弥は驚愕した。
龍弥の妹、古畑蘭は現在心臓病を患っている。
そしてその病気は標準治療では治らず、先進医療に頼るしか無く、先進医療を受けるには400万が必要な状況である。
龍弥達の両親は幼い頃に蒸発しており、親戚にも頼るあてがない事から龍弥はクラウドファンディングで支援を募ったのだ。
「あ、ありがとうございます!
何とお礼を申し上げたら良いのか、、」
クラウドファンディングは難航しており、一ヶ月が経過した現在数万円程しか集まっていなかった。
そこに爺屋からの支援の連絡がきたのだ。
確かに龍弥がサイトを確認すると100万の支援金がプラスされていた。
「いえいえ、全然構いませんよ。
しかし、本来であれば我々も目標金額まで支援したいのですが、何しろ無償での資金援助となると財源が厳しくて」
爺屋は申し訳なさそうに龍弥に伝えるが、龍弥は嬉々とした表情で感謝を伝える。
「とんでもない!
100万という大金を支援して頂いただけでも感謝しかありません!!」
龍弥は電話越しに頭を下げて心の底から感謝をしていた。
「ところで、龍弥様は今迷宮戦闘に参加していらっしゃるのでしたね。娘さんの治療費を稼ぐ為に」
爺屋は優しい口調から一点、急に真面目な口調となる。
「は、はい」
龍弥は爺屋のその様子にとまどい戸惑いながらも返事をする。
「奇遇な事に金城様も参加しており、四回戦で別チームとして戦う事になっているのですよ」
龍弥はそこまで言われて爺屋の言いたい事を理解し、顔が曇る。
「ここで金城様が勝利すれば決勝トーナメントへと進み、そこで金城財閥の名は更に広がるでしょう。
おっと、独り言が過ぎましたね」
爺屋はわざとらしく咳き込んだ。
「残り300万の支援をする準備をしておきますね」
爺屋はそれだけ言うと電話を切ったのだ。
龍弥は切られた受話器をしばらく離さず立ち尽くしたのだった。
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