8対8
「この試合は競争だ。
飛べる奴は上空から一気に魔王を叩きに行くぞ」
清矢は邪魔をしてくる魔物が周囲にいないことを確認すると、重力を操り自身を浮かせる。
そのまま清矢は後ろを振り向く事なく、魔王城の天辺目指して飛んでいった。
「あっ、ちょっと何で決定事項なのよ!」
愛は清矢の行動に愚痴りながらも風を操作して後を追いかける。
「待ってよー!僕も行く!!」
英雄も大きな声で呼びかけながら宙を浮かび上がり飛んでいった。
「・・・そういう事らしい。
お前達も地上から後を追ってきてくれ」
最後に龍弥が背に竜の翼を生やすと三人の後を追って行った。
「あーあ、行っちまった」
「ヴァッハッハ!
しょうがない、俺らは地道に進むぞ!」
そんな光景を見た勇が呟くと、隣に立つ武蔵は堂々と魔王城に向かって歩き始めた。
「はぁ、協調性ってものが無いのね」
花音は呆れながら武蔵の後を歩くと賢と勇も同様に足を進めた。
「まぁ、すんなりと魔王の所には行けなかったようだぞ」
賢が見上げる先では魔王城の頂上に飛んでいた清矢達が見えない壁に阻まれている様子が映されていた。
見えない壁に対して英雄が剣で斬りつけたり、龍弥が竜化させた右手で殴りつけていたが壊れる様子は無かった。
清矢達は諦めたのか、ゆっくりと地上に降りて正門から中へと入っていった。
「こりゃあ俺らの出番もちゃんとありそうだ」
勇は笑顔で軽口を挟むと新たに襲いかかってきた魔物をノコギリで両断する。
「正面から猛スピードで大型の魔物が突進してくるわ」
「任せろぉ!!」
花音が魔物を探知すると猪型の魔物がこちらに走ってきていた。
前方に立つ武蔵が突き出した左手と魔物が衝突すると、魔物はピタリと止まる。
「邪魔だ!」
続けて武蔵が右手を振り抜くと衝撃波が発生して魔物を粉微塵に弾け飛ばした。
「この調子で俺らも合流を急ごう」
賢は地面と融合していた両手を元に戻すと、魔王城に向かって走り出し、その後を他三人も着いていく。
「なぁ、こんな時にあれだけど皆は賞金の使い道考えてるか?」
周囲から魔物が現れて来ない事を確認した勇が突然口を開く。
「急にどうしたの?」
走る足を止めずに花音が驚いた表情で問いかける。
「いやさ、せっかく仲間になったんだ。
名前だけじゃなくてちゃんと中身まで知っておきたいなって」
勇は微笑みを浮かべながら回答すると話を続ける。
「ちなみに俺は大学にかかる費用のためだ。
こう見えて医学部志望なんだぜ?」
勇は親指を自身に向けながらドヤ顔になる。
「ヴァッハッハ!お前のようなチャラ男が医者を目指すか!良いじゃねーか!」
勇の話を聞いた武蔵は走りながら勇の肩を軽く叩く。
「俺はなぁ肉・女・酒に使う!」
「・・・最低ね」
武蔵の使い道を聞いた花音は蔑んだ目で武蔵を見るが、武蔵は意に返さない。
「男はな、欲を失ったらその時点で死んだも同然よ」
謎の持論を話す武蔵に花音はため息を返す。
「あたしは賞金は二の次で優勝することに意味があるの。あたしの所属しているグループgreen girlsはまだまだ知名度が足りてなくてバイトと掛け持ちでアイドル業をやってる子もいるわ」
花音は悲しそうにしながらも話を続ける。
「だから勇があたしの事を知ってる事には驚いたわ、、あたしのSNSのフォロワーなんて1万人程度しかいないのに」
花音が話す中上空から魔物が襲いかかってくるが、勇が分身を踏み台にして飛び出すと、ノコギリで両断した。
「いやぁ俺結構アイドル好きでさ、色んなアイドルのライブ行ってるんよ」
勇は照れながら頭を掻く。
「あの子達はもっと有名になれるはずなの、、
きっかけさえあればあの子達の良さに全員が気づいてくれるはず!だからあたしはここで優勝してgreen girlsの知名度を上げるの。賞金も活動費に使うつもりよ」
花音は決意のこもった瞳で前を向きながら、大きな声を出して音圧で魔物を吹き飛ばす。
「俺は人生をやり直すために使う」
賢はそれだけを口にする。
特に理由などを話す気は無いようだ。
「皆それなりに信念を持ってんだな」
勇は三人の話を聞いてスッキリした様な表情をしていた。
「龍弥さんとさ、俺は三回戦で一緒のチームだったんだけど、あの人も妹の手術費を手に入れるためとか言ってたよ」
「ちゃんとこのチームで勝ちたいと思えるようになった」
勇と分身が交互に話しながら嬉しそうに話した。
走って魔王城に向かっている四人であるが魔王城に到着するにはもう少し時間がかかりそうである。
---Bチーム
「おい、こんなチンタラ動いてたらAチームに先越されちまうぞ!」
そう叫んでいるのは五色怜。
赤髪の天然パーマで吊り上がった瞳が特徴である。
「いや、僕達はこのまま全員で堅実に魔王城を攻め落とせば何も問題は無いよ」
そんな五色を諭すのは金の長髪をなびかせる金城豊。
彼は余裕たっぷりの表情で地面から複数の金の柱を作り出して魔物達を貫いていた。
「おいおい、その自信は一体どこからきてんだよ、あぁん?」
喧嘩腰に金城に絡むのは煙橋快斗。
モヒカン頭で長ランを羽織る見るからにヤンキーの男だ。
「落ち着きたまえ。
堅実に進めれば僕達の負けは無いんだよ。
あちらには裏切り者が発生すると思うからね」
金城は不敵な笑みを浮かべながら煙橋の肩を叩く。
「買収でもしたのかい?」
ひょうひょうと金城に問いかけるのは田中隼人。
ドレッドヘアに褐色の肌の男で歳はそれなりにとっており30代後半である。
「さぁね」
金城は隼人の問いをはぐらかすように肩をすくめた。
「俺はそんな裏切り者を当てにしてじっとしてられる程出来たやつじゃねーよ」
五色は手から炎を噴射させて空を飛んで行こうとする。
「五色君待って!虹恵」
五色を呼び止めたのは絵斗学。
小柄な体躯に茶髪の天然パーマという容姿であり、彼は手に持つ筆に魔力を注ぎ込むと虹の架け橋を五色に飛ばす。
「なっ!吸色!」
五色は慌てた様に手を頭上にかざすと、虹の架け橋は色だけを吸い取られ白色へと変化する。
完全に色を失った虹はそのまま粉微塵に散ってしまう。
「お前この技は相当魔力を、、」
五色は絵斗の出した技を知っている様子である。
それはこの二人が三回戦で同じチームだったからだ。
「止めたって行くんでしょ?
君の事はもう分かってるよ。
先に行って四天王の一人でも倒しといてよ」
絵斗は呆れた表情を浮かべているがその瞳は五色を信頼しているようだ。
「助かる。
なんだったら魔王を倒してきてやるよ」
五色はそう言うと炎の勢いを強めて魔王城へと飛んでいった。
「おい待てよ!
なら俺も行くぜ!!」
煙橋は五色が魔王城へと向かった様子を見て、自身の足元に煙のボートを出して体を浮かせる。
「アンタはダメ」
しかし、そんな煙橋の頭を一人の女性が叩いて止める。
その女性は煙橋と三回戦で同じチームであった足立ねね。
背中にフワフワな白い羽を生やし、頭上には金色の輪を浮かせている。
黒髪のショートカットで歳は20代後半である。
「ちょっ、何すんだよ!」
そんな足立に煙橋は反抗を見せるが、足立は変わらず呆れた表情を浮かべながら煙橋のモヒカンに触れる。
「分かってる?
集団行動が出来ないならこのモヒカンを全部刈り取るよ?」
足立は微笑みを浮かべながら煙橋に脅迫とも取れる言葉を投げかける。
「う、、うす」
煙橋は足立に対して強く出れないのか素直に言う事を聞いた。
「五色さんだけ先に言ってしまったけどどうします?
呼び戻しますか?」
金城に問いかけるのは青のニット帽に青い髪と瞳を持つ糸川悟。
「いやいいよ。人には単独行動でこそ力を発揮する者がいる。彼はそのタイプだろう」
金城が糸川の問いに答えると糸川は指から伸びていた糸を反対の指で断ち切る。
その糸は五色まで伸びており、必要とあれば手繰り寄せる事もできたのだろう。
「なんだっていいよー。
俺はただ進むだけー」
間延びする返事を返すのは10メートル程の図体で魔物を蹂躙する男。鈴木大である。
丸坊主でふくよかな体型であり、そのフォルムはマスコットのような見た目である。
「心配は要らない。
僕達の勝利は揺るがないのだから」
自身満々の金城と他のメンバーは鈴木の作った道を歩いて行くのである。




