斎藤右京
模擬が倒されたのと同じタイミングで、大部屋Bの一番奥で待機していた右京の目の前にある大きな卵にヒビが入る。
「模擬君、、
ありがとう、、」
右京はスクリーンで模擬の死を見届けていた。
そして、模擬が自身を信じ死に物狂いで時間と相手の魔物を減らした光景をみて涙を流す。
-試合前
「は、初めまして、、
斎藤右京です」
試合開始前に右京の目の前に模擬が転送され、人見知りの右京は恐る恐る挨拶をする。
「ヒッヒ。
模擬太郎だ」
模擬は不敵な笑みを浮かべながら模擬と握手を交わす。
「早速だが、お前とお前のユニークモンスターの情報をくれ」
模擬は瞳が前髪で隠れているため表情が上手く読み取れず、右京は戸惑いながらも口を開く。
「僕のスキルは[強化]。
僕自身が魔物に吸収され、大幅に身体能力と魔力強化を施すと同時に魔物の操作を行えるようになるんだ」
右京は自分のスキルを説明すると小部屋を出て大部屋Bに場所を移す。
その後ろを黙って模擬がついていくと、右京の目の前に大きな卵が存在していた。
「これが僕のユニークモンスター。
グロウエッグ。
これは時間経過によって孵化し、成虫となる。
この卵状態だと何もできないけど、成虫状態で僕の強化が加わればどんな敵でも倒せる、、筈だよ、、」
模擬は右京の話を聞き、今回の作戦は一択であり自身が捨て駒にならなければいけないことをすぐに察した。
模擬のコピースキルで右京やグロウエッグのスキルをコピーする事は悪手である事は明白であるため、右京を活かすためには自身が時間稼ぎをするしか無いからだ。
「ヒッヒ。
右京。テメェを信じてやる」
前髪から覗かせた瞳は右京に心を開かせる程、優しさを感じさせるものだった。
-
グロウエッグは既にいつでも孵化できる状態であり、ここからは孵化まで時間が経過されればされる程、力を蓄えることができる。
本来、幼虫と蛹を経て成虫となるのだが、二回戦と三回戦の恩恵でその過程はスキップされる。
「皆んな、出来るだけ時間を稼ぐんだ!!」
右京の号令によって魔物達は移動して来た愛とホワイトマジシャンへの猛攻を強める。
-
大部屋Bに移動した愛とホワイトマジシャンは風に乗って空中から一気に進もうとしたが、敵のHランク:シリアルビー、Eランク:バブルシャーク、Dランク:雪女が空中に迫って来ており行くてを阻まれていた。
地上からはGランク:ディファンスアリゲーター、Fランク:黄鬼が待ち構えている。
シリアルビーは手のひらサイズの蜂型の魔物。
バブルシャークは全身を泡に包んで飛行する鮫型の魔物。
雪女は白装束に身を包んだ女性の魔物。
ディファンスアリゲーターはゴツゴツとした硬い突起に覆われたワニ型の魔物。
黄鬼は全身黄色の肉体で3mの巨体に3本角と棍棒を持った鬼。
「アンタ!
早く転移させなさいよ!」
愛は風の刃を周囲に放ってシリアルビーとバブルシャークを切り刻みながらホワイトマジシャンに文句を伝える。
「私の転移には回数制限があるのですよ。
それに転移してもこの数に迫られながら敵の主力と戦う事になります」
ホワイトマジシャンもまた大鎌を振るいながら迫ってくる雪女の攻撃を掻い潜りながら魔物を迎撃していた。
「ただこれだけ固まってくれていればやり易いですね」
ホワイトマジシャンは愛の側に転移すると5のカードを押し当てる。
「ご要望通り転移します。
こちらはお任せ下さい」
愛は転移される直前に怪訝な顔を見せるが気にせずホワイトマジシャンは転移させた。
しかし、愛がいなくなった事で周囲の魔物は一気にホワイトマジシャンへと突撃してくる。
「ふふふ。
12(ジュウニボンバー)」
ホワイトマジシャンは手元に12のトランプを四枚出すと四方に放ち、すぐさま13で上空へと転移する。
すると12のカードは勢いよく爆発を起こし迫っていたシリアルビーとバブルシャークを吹き飛ばしていく。
大半のシリアルビーは粉々になり、バブルシャークは泡でガードされているが爆発の中心に近い個体は倒れていた。
ランクの高い雪女は爆発を受ける前に雪による防壁を目の前に作り被害を最小限に抑えており、爆心地にいた1体だけが倒れる結果となった。
「大分間引けましたね」
愛と離れた事で風による浮上効果が切れたホワイトマジシャンはそのまま地上へ落下する。
「さぁ、第二ラウンド開始です」
ホワイトマジシャンは落下する自身を追いかけてくるバブルシャークと雪女を横目に、大鎌を構えて地上に待ち構えるディファンスアリゲーターと黄鬼へと向かってゆく。
-
遥か上空に飛ばされた愛は風に乗って勢いよく大部屋Bと小部屋に繋がるゲート目掛けて落下していた。
そんな中、愛は目下に右京と隣にあるグロウエッグの存在に気づく。
(まず倒すべきはあの卵ね)
「神風」
愛は自身の周囲に風の刃を纏わせながら、卵目掛けて落下する。
「なっ!
ぜ、全部無視して来た!
しょうがない、、
グロウエッグ、孵化して!!」
右京が風切り音と共に落下してくる愛の姿を気づくとすぐ様グロウエッグに触れて指示を出す。
「キィィイ!!」
右京の合図で卵が一気にひび割れると中から体長5mほどの白い成虫が現れる。
大きな2対の羽に8本の鋭い手足。
頭には2本の触覚を持ち、下腹部の先端には鋭い針がある。
「強化」
続いて右京が成虫に手を当てると、右京の体が赤い粒子となって成虫の身体に吸い込まれていく。
「ゼプュロス・デルノ」
成虫に吸収された右京は成虫の肉体の主導権を手に入れ、向かってくる愛に対して針のような手で殴りつける。
愛と右京の両者の攻撃がぶつかり合うと、両者は大きく弾かれる。
しかし、お互いに大きなダメージは発生していないようであった。
「嘘でしょ、、
私の渾身の一撃を無傷で」
その結果に愛は冷や汗をかきながら小さく後退りする。
先程の神風は今現在、愛の出せる最高火力の攻撃であったからだ。
「ヘイヘイ!!
そんなもんかよ!
こんなんじゃ瞬殺しちまうぞ!!」
やけにテンションの高い右京が羽を羽ばたかせながら愛を挑発する。
この性格の変貌ぶりはスキルによるものなのか、強大な力を手に入れた事で気が大きくなったためかは不明である。
「援軍は、、
期待できないと思った方がいいわね。
なら、弱点を探すまで!」
愛は風に包まれ宙を浮かび上がると静かに闘志を燃やした。




