鉄
「ヒッヒ。
プレイヤー見つけたぜ!!」
賢の攻撃に対して両腕を鉄で覆う事でダメージを軽減した模擬は炎で加速しながら黒い魔力を刀に纏わせ賢の元へ猛スピードで近づく。
「行かせないにゃ!
音呼騙!!」
模擬の前に回り込んだ猫インプが両手を思い切り叩き衝撃音が7回こだまする。
「聞こえねぇよ!」
だが、猫インプに気づいていた模擬は両耳を鉄で覆う事で一時的に聴覚を塞いでいたため効いておらず、猫インプを刀で両断しながら真っ直ぐ賢の元へ降りてゆく。
アイアンファイターも模擬の後ろを追いかけるように空中の足場から飛び降りていたが、炎の加速を得ている模擬に追いつける筈は無かった。
「逃げろ!!こぞぉぉお!!」
アイアンファイターの叫びも虚しく模擬は地上で棒立ちの賢に黒い魔力を纏った刀を振り下ろす。
「出ろ、影猫」
賢が呼びかけると、賢の影から真っ黒な猫が飛び出し振り下ろされる刀を爪で受け止める。
「次から次へと蝿のように出て来やがって」
模擬は鉄で覆った足で影猫を蹴り飛ばそうとするが、突然動きが止まってしまう。
「影踏」
影猫が模擬の影の中に足を踏み込む事で模擬の身体の自由を奪ったのだ。
「鉄拳ンンン!!」
その隙に上空から降りて来たアイアンファイターが鉄に覆われた拳を模擬に叩き込む。
模擬自身も身体を鉄で覆いダメージを防ぐが、その威力に負けて吹き飛ばされてしまう。
「小僧!何故お主がここに!?
それにこやつは一体」
アイアンファイターは賢の隣に立つと模擬から目を離さないまま問いかける。
「もう一人のプレイヤーが何かしらの理由で持久戦を望んでる。ならばこちらは早期決着をつけるために全勢力で攻め込むしかないという判断だ」
賢は一つ目の問いに答えると隣に立つ影猫へ目線を移す。
「こいつは愛の魔物であるシャドウと俺も魔物である猫男を融合させた影猫。どうやら今はお前らの魔物も味方判定の為、俺のスキルの対象となっていたようだ」
賢の説明の最中に影猫は再び賢の影へと身体を沈めた。
「ヒッヒ、、
纏めて殺してやる、、
マッドシンガー歌え!!!」
「「「「アァァァァァァァァ!!!!!!」」」」
模擬の指示を聞いたマッドシンガー達はシャドウとアーマーソルジャー達との戦闘中に大きな叫び声をあげた。
甲高いその声に呼応するように賢達の立つ地面が泥へと変化し、泥から蔦のようなものが次々に伸びると賢達を次々に拘束していく。
「ヒャッヒャッヒャッ!!
これで終わりだぁぁ!!」
模擬は興奮しながら上空に浮上すると再び巨大な炎の球を作り出す。
「炎塊!!」
間髪入れずに炎は身動きの取れない賢達に向かって放たれる。
「くっ、、」
賢は足を地面の泥と融合させて周囲の泥を排除しようとするが、泥が完全に除去できる頃には先に炎が到達してしまうだろう。
隣に立つアイアンファイターも同様に泥を振り切る事に時間を要しており、迫り来る炎の対処ができずにいた。
「くそ、しょうがない、、
こいつだけでも!」
賢は手元にクラブの5のカードを出すと、それをアイアンファイターに使おうと手を伸ばす。
何故賢がホワイトマジシャンのスキルを使えるのか。
それはホワイトマジシャンの7(ナナワタシ)のスキルの力である。
7(ナナワタシ)を一枚使う事で対象にトランプを一枚渡すことができる。
このスキルを使い、ホワイトマジシャンは事前に賢へ4枚のカードを渡していた。
先程の炎塊を対処するためにインプゴーレムを転移させたのも、5(ゴスキップ)を使った賢によるものだった。
そして今回、アイアンファイターへ5(ゴスキップ)を使用してこの場から逃そうとしているのだ。
だが、そんな時に迫ってくる炎の前にインプ達が割って入って来た。
「水壁!」
「「「「アクアボール」」」」
インプスライムと8体のインプが水魔法を使って炎を防ぐが、炎塊はそれすらも飲み込んでインプ達を燃やし尽くした。
「5(ゴスキップ)」
悔しそうな表情を浮かべながら賢はトランプをアイアンファイターへ押し当てる。
「ぬっ、小僧!!」
アイアンファイターは転移される直前に賢の行動に気づくが何もできずにその場からいなくなった。
「すまない、、
後は頼んだ」
足と泥を融合させて目の前に泥の壁を展開するが、容易く炎は突破し賢を襲う。
しかし、賢の目の前に巨体が割って入り炎から賢を守る。
それは身体を金属化させたゴーレムスライムであった。
スライムゴーレムは炎を防ぎ切ると炭となって散っていった。
「ありがとう、、」
賢はスライムゴーレムに感謝の言葉を伝えると、上空にいる模擬へと目線を移す。
そこには間髪入れずに襲いかかっている猫インプの姿があった。
「猫亦」
猫インプは模擬に向かって飛びながら爪による7つの斬撃を繰り出した。
「ヒッヒッ、しつこいんだよ!」
模擬は刀に黒い魔力を纏わせ、一太刀で七つの斬撃をかき消した。
「黒炎」
模擬は刀に黒い魔力と炎を纏わせる。
「ヒッヒッ、死ね!」
向かってくる猫インプに向かって勢いよく刀を振り下ろす。
刀に纏わせた黒い炎は勢いよく猫インプに放たれる。
筈だった。
「なっ!?」
模擬はあからさまに動揺し、その隙に接近した猫インプが爪を突き出す。
「チッ!」
舌打ちをしながら模擬は刀で猫インプの爪を防ぐ。
「魔力切れを起こしたにゃ?」
模擬は二度の大技に加え、度重なるスキルの使用によって残りの魔力が余り残っていなかった。
足裏から放っている炎による噴射など少量の魔力であれば使用できるが、先程模擬が放とうとした炎のスキルと刀のスキルを合わせたような一撃はもう繰り出す事は出来ないだろう。
「舐めるなぁ!!」
模擬にいつもの薄ら笑いは無く、怒りと焦りの混ざった表情で黒い魔力を纏わせた刀を猫インプに突き出した。
猫インプは何も抵抗せずに貫かれる。
「何?」
模擬は予想外の猫インプの行動に動揺を見せる。
「捕まえたにゃ」
しかし、猫インプは刀で貫かれた状態で模擬の身体を抱きしめた。
「離れろ!!」
模擬は全身から炎を溢れさせ猫インプを燃やすが、猫インプは離さない。
猫インプは命が失った瞬間に復活し拘束を続ける。
「はぁぁぁぁ!!」
そんな中二人の上空をアイアンファイターが大きな声をあげながら落ちて来ていた。
賢の発動した5(ゴスキップ)によって遥か上空に転移させられていたのだ。
「鉄槍」
アイアンファイターは右腕を鉄の大槍へと変化させながら先端を下に構えて模擬目掛けて落下していた。
「クソが!!」
模擬は猫インプに拘束された状態で足から噴射している炎を操り身体を回転させる事で猫インプを真上にもっていった。
「俺ごとやるにゃ!!」
猫インプは背中越しにアイアンファイターに指示を出すと、アイアンファイターはニヤリと笑いながらそのまま鉄槍で猫インプごと模擬の身体を貫いた。
三人は勢いよく地上にいる賢の目の前に落下した。
「見事だったぞ、猫助」
猫インプは7つの命を使い切ったようで全身が光の粒子となり消え去った。
アイアンファイターは落下の衝撃によるダメージは無いようで模擬の身体に刺さった大槍を引き抜くと、まだ息のある模擬の心臓目掛けて振り下ろす。
「3本ナイフ」
模擬は最後の悪あがきに魔力消費が少なく、最小モーションで放たれるGランクスキル:3本ナイフを発動した。
3本のナイフが模擬の手から放たれるとそれぞれ賢の頭・首・心臓目掛けて真っ直ぐ放たれる。
しかし、賢の影から素早く影猫が現れると全てのナイフを叩き落とした。
「ヒッヒッ、後は頼んだぞ右京」
振り下ろされる槍に当たる直前、模擬は不敵な笑みを浮かべながらパートナーの名前を呟くのだった。




