炎と刀と
「ヒッヒ、最初の威勢はどうした?」
離れた位置で空中戦を繰り広げる模擬と猫インプの戦況は模擬の優勢であった。
猫インプは既に4回の生き返りをしており、余命は半分を切っていた。
「俺は役割を果たすだけにゃ」
猫インプは息を整えながら爪を構える。
「そうかよ、じゃぁそろそろやらせてもらうぞ」
模擬は目が隠れる程伸びた前髪をかきあげると、全身から炎を生み出す。
「炎速」
炎の勢いを利用した猛スピードの特攻をするが、その動きは猫インプに見えている。
「猫上突」
猫インプは向かってくる模擬にアッパーを繰り出すが、猫インプの爪は模擬の身体を通り抜けてしまう。
「陽炎」
猫インプが放った爪は炎でできた模擬の幻影であったのだ。
「もらった!!」
模擬はいつの間にか猫インプの背後に回ってきており、緑色に輝く右手で猫インプに触れようとしていた。
前髪から僅かに覗かせる瞳は勝ちを確信したように細く緩んでいた。
模擬のユニークスキルは"コピー"
触れた相手のスキルを一つコピーするというもの。
模擬の炎のスキルと刀のスキルは一試合目にユニークモンスター、二試合目にプレイヤーからそれぞれコピーしたものだ。
ただこのスキルにはコピー上限が存在し、一試合目では一つ。二試合目で二つ。そしてこの三試合目で三つとなったのだ。
一度コピーしたものは上書きする事はできず、取り消す事も出来ない。
炎による中距離攻撃、刀による近距離攻撃の手段を持つ模擬に7回の完全復活のスキル「7回生きた猫」が合わさってしまえばこの試合で模擬を倒す事は極めて困難となるだろう。
「智恵須怒ォォォオ!!」
しかし、二人の間に割って入って来たアイアンファイターが鉄に覆われた右手で突き出した模擬の手を弾き飛ばし、反対の鉄に覆われた左手で腹部を思い切り殴り飛ばす。
「助太刀に来たぞネコ助!」
アイアンファイターはニヤリと笑いながら猫インプの肩を叩く。
アイアンファイターは地面から細長く伸びた鉄の棒によって支えられている。
「助かったにゃ」
猫インプは額から滲み出ていた汗を拭いながら素直に感謝を伝える。
「…そ…、、」
吹き飛ばされた模擬は俯きながら何かを呟いていた。
「奴は炎と刀による攻撃をしてくるにゃ」
猫インプは短く模擬の情報を伝えると再び構えを取る。
「クソが、、」
足元から炎を噴出し続けて宙を浮かんでいる模擬は複雑に曲がった右手の指を、鉄で覆って応急処置をする。
「クソがぁぁ!!」
猫インプの回復スキルをコピーできなかった模擬は怒りを露わにさせながら一瞬で大きな炎の球体を作り出す。
「炎塊」
「こ、これはかなりヤバいぞ!!」
怒りに任せて膨大な魔力を炎に変換させた模擬の一撃が放たれると、アイアンファイターは焦りながら自身と猫インプを守るように鉄の壁を展開する。
「咄嗟にだしたこの守りではとても受けきれぬぞ、、」
アイアンファイターは自身の全身を鉄で覆ってフルアーマーを作り出しながら呟く。
炎塊は鉄壁と衝突すると一瞬で溶かしてしまい、その背後のアイアンファイターと猫インプに襲いかかる。
「全魔拳」
しかし、突如インプゴーレムが二人の目の前に現れると一試合一回限りの全魔力を込めた一撃を炎塊に叩き込む。
すると、炎塊は一瞬にして消え去り二体を襲う脅威を振り払う。
「滅斬」
すぐに足裏から噴射される炎の勢いを利用した模擬の握る黒い魔力を纏った刀でインプゴーレムは両断されてしまい、そのままアイアンファイターと猫インプへ突進してくる。
「巨岩拳」
突如伸びて来た岩で出来た巨大な拳が模擬を上空に弾き飛ばした。
「待たせたな」
その正体は地面に両手を融合させた賢であった。




