2対2
"カウントダウンを始めます。
10.9.8.7.6.5.4"
"3"
"2"
"1"
"バトル開始です"
いつもの無機質な電子音が頭に流れると賢と愛が配置した魔物達が大部屋から敵陣地へと転移する。
今回、賢と愛は魔物の半数を送り半数を自陣に残すというスタンダードな戦法をとった。
賢が送った通常魔物以外の魔物はウルフスライム、ウルフゴーレム、ゴーレムスライム、ウルフインプ、猫インプの五体である。
そして愛の魔物は以下になる。
Gランク:キラーカンガルー
赤色の毛に覆われたカンガルー型の魔物
スキル:強打
Fランク:アーマーソルジャー
フルアーマーの魔物
スキル:剣技
Eランク:シャドウ
人型の魔物で全身が黒一色の魔物
スキル:影潜
同時に相手からも自陣に魔物が転移してくる。
筈が、2回戦同様にまたもや相手から魔物は送られてこなかった。
「え、どうして?」
「またプレイヤー特化の相手か?
驚く愛とは反対に賢は2回戦の相手であった佐藤剛を思い浮かべていた。
「とりあえず相手陣地の状況を見よう」
賢の提案に愛は頷きを返すと二人は大きなスクリーンを表示させ相手陣地を確認する。
相手陣地では賢と愛が送り込んだ魔物の前衛と敵陣の前衛がぶつかり合っていた。
敵の前衛は大きな壁に手足がついているような魔物である。
[Hランク:ヌリカベ
3メートルの平たい体]
ヌリカベはその強固な体で前衛のスライムやウォーウルフ、キラーカンガルーを押し留めている。
しかし、攻撃はとても鈍くこちらに被害は全く出ていない為、時間をかければヌリカベは難なく倒せるといった状況だ。
「にゃぁー!突撃にゃー!!!」
そんな中最後尾に配置していた猫男の一人が軽やかな動きで魔物達の隙間を縫って前衛に飛び出していった。
「にゃあ!!あいつだけずるいにゃ!!
俺も行くにゃぁ!!」
「やめるにゃ。
マスターの作戦を守るにゃ」
そんな姿を見た他の猫男も飛び出そうとするが、真ん中で堂々と腕を組んで待機している猫インプの一声で全員が立ち止まる。
猫男達は一番ランクの高い猫インプをリーダーとして認めているようで全員が素直に言う事を聞いたのだ。
「にゃっはーー!!!」
飛び出した一体の猫男は鋭い爪でヌリカベを次々に切り裂いていく。
硬い体を持つヌリカベとて、ゴーレムすら切り裂く事のできる猫男の爪に抵抗する事はできず、紙のように容易く切り裂かれていく。
猫男はそのまま後衛にいた魔物達と相対する。
[Fランク:F型ロボット
拳銃を装備したアンドロイド]
F型ロボット達は向かってくる猫男に一斉射撃を仕掛ける。
「にゃはは!無駄にゃ!!」
猫男は軽やかな動きで弾丸を避けながら一体のF型ロボットの首を爪で切り裂くとそのまま敵陣の後衛へと飛び込む。
敵陣の後衛には泥の人魚が待ち構えていた。
[Dランク:マッドシンガー
全身が泥でできた人魚。体から滴る泥で足元が常に泥となる]
「ヒッヒ、お前らは手を出すな」
しかし、マッドシンガーの横を飛び出した男によってマッドシンガーの攻撃動作は中止される。
「誰が相手でも関係ないにゃ!」
猫男はその男へ対象を変えて爪で切り刻もうとする。
「滅斬」
男は手に持つ刀に黒い煙を纏わせながら猫男へ振り下ろす。
「にゃ!」
猫男は間一髪で斬撃を避けるとカウンターの一撃を叩き込む。
「火炎拳」
しかし、男は刀を右手だけに持ち替えて空いた左手に炎を纏わせアッパーを繰り出して猫男の爪を弾く。
「にぃ!?」
予想外の攻撃を受け怯んだ猫男の胴体を刀が両断する。
男の正体は相手プレイヤーの模擬太郎。
目が隠れるほど伸びた前髪の隙間から鋭い眼光を覗かせながら背後に待たせといた一匹のライオンのような生き物の背にまたがる。
「いくぞキメラ!」
[ユニークモンスター【キメラ】
複数の動物が混ざり合った魔物。
ベースはライオン、尻尾(蛇)・翼(鷹)・胴体・角・横腹から新たに生えた二本の腕]
「ギャォオ」
キメラは模擬を背に乗せると翼をはためかせて宙へと浮かび上がり、前線へと駆け出した。
-
「あのバカ猫には後でお仕置きをしないとな」
一連の映像を見ていた賢は小さく呟いた。
「向こうから追加でこっちに戦力が送られる様子は無さそうね。大部屋Aにいる私の魔物達を敵陣に送り込む?」
愛には賢の呟きが聞こえていなかったようで、賢に真剣な表情で問いかけてくる。
「あぁ、そうだな。
大部屋Bにいる俺の魔物達に大部屋Aへ移動させよう」
賢はすぐに頭を切り替えると愛の提案に肯定する。
「アイアンファイター、相手陣地に魔物達を移動させて」
「お任せください、愛様!」
愛の指示を受けたアイアンファイターは嬉々とした表情を浮かべながら小部屋を出ていく。
「お前もだ、ホワイトマジシャン。
魔物達を大部屋Aに移動させておけ」
「ふふふ、承知いたしました」
ホワイトマジシャンは恭しくお辞儀をするとゆっくり小部屋を歩いて出ていった。
「私もアイアンファイターを連れて敵陣に攻め込むわ」
愛は賢の返事を待たずに風に乗って宙を飛んで小部屋を出て行った。
「自分勝手な女だな、、
まぁ確かにユニークモンスターもプレイヤーの力無しに相手プレイヤーを倒せるほど甘くは無さそうではあるが」
賢はため息を吐きながら敵陣の様子の映るスクリーンへともう一度向かい直す。
「向こうが一切の戦力をこちらに寄越さなかったことには何か作戦があるはずだ」
賢は椅子に座って手を組むと頭を駆け巡らせるのだった。
-相手大部屋B
大部屋Bと小部屋の繋がるゲートの前に一つの大きな卵が大きく揺れていた。
「まだまだ時間はかかりそうだ、、
頼むよ模擬君、、」
小柄で短髪の男、斎藤右京は卵に手を当てて鼓動を感じながらここまで敵がやって来ない事を祈るのだった。




