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第十二話「フレイムの展望」


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 フレイム邸には続々と、領内から各部署の責任者が集まり出していた。今日は、今後のフレイムの方針が打診される日でもあり、各部署の進捗状況と方針が決まる日でもある。中庭では、ガッシュが煙草を吸っていた。


「儂にも一本くれるか?」


「あ、あぁ。」


「最近の調子はどうじゃ?」


「怖いくらい絶好調だ。」


「ほう、スゥ〜〜ブハァ〜〜・・やはり吸い心地が物足りんのう、儂は葉巻の方が好みじゃな。」


「人からもらっといてなんだそりゃ。ったく。」


「そろそろ教えてくれんか?」


「何をだ。」


「なんでお主が、フレイムに付き従っているかじゃ。」


「なんでぇ、フレイム様の差し金か?」


「違うわい、あやつはそんな小さな器じゃないわい。お主もわかっておろう。」


「あぁ、だからだよ。フレイム様は、でかい器だ。俺が今までどんなに大金を積まれても、どこの領主にも興味は湧かなかった。平穏で、安泰が約束されてる生活?馬鹿かよ。俺は刺激が欲しくて、冒険者やってたんだ。・・だけどよ、もっと面白そうなことが待っていそうだろ?あいつの背中を守っているうちに俺は、とんでもねぇとこに連れてってもらえるんじゃねぇかって思ったのよ。そしてそれは、間違いじゃなかった。」


 そう言って、ガッシュは鍛錬場にあるフリードリッヒの宿木を指差す。龍まで従える男の元で、これから未曾有の大冒険が始まることを予感していたのだ。


 話が一区切りした頃、鐘が鳴り響いた。


「おしゃべりは、ここまでだ。大将がお呼びだぜ。」


 フレイム邸に設けられた講堂に、各部署が揃っていた。ここは普段は、会議や子供達の教育の場になっている。教壇から遠くの席になればなるほど、階段状に高くなっている。そこへ、フレイムが入ってくる。すると、全員が立ち上がり敬礼した。


「座ってください。さて、今日は集まってくれてありがとう。先に謝っておくが、今日は長丁場です覚悟してください。それではまず最初に、叙任式を執り行います。今から名前を呼ばれるものは、ここまで来てください。ガッシュ・モルト、ロイ・アルフレッド、クリス・カーロン、アリシア以上です。」


「え?」


 叙任される者の中にアリシアが居る事に、アリシア自身が一番驚いていた。この叙任式は、ロックウェル士爵家の従士を任命するものだ。元暁の旅団のメンバーが選ばれることは誰もが予想していた。しかし、庶民の中から選ばれる者がいるとは誰も予想していなかった。

 驚きのあまり固まっているアリシアを、車椅子のクリスの代わりに、叙勲される妻のナミが促して一緒に壇上前までやってくる。それでもまだ彼女は、夢を見ているようであった。無理もない、帝国で最も野蛮で田舎だと言われている北方領土の、さらに最北端のど田舎の村娘に過ぎなかったのだ。そんな彼女が帝国庶民なら誰もが羨む、貴族家の従士になるのだから、とんでもないシンデレラストーリーである。


 4名は横一列に並び、皆から見守られる中跪き頭を垂れる。

「この者らは、これまでロックウェル領発展のために著しい成果を上げてくれた者たちである。その功績に、私も報いよう。ガッシュ・モルト前へ」


 名を呼ばれたものは、一歩前へ出て跪いた。


「ガッシュ・モルト汝をロックウェル家の守護騎士に任ずる。」


「謹んで、お受け致します。」


「ガッシュ、あなたと出会え、この契りを結べることを大変嬉しく思います。正式な任命式は、教会ができ次第執り行います。その時に、我が剣も授与する。」


「この身に余る光栄です。」


「お前は、口数が少なくて良いな。」


「・・・。」


「ロイ・アルフレッド汝をロックウェル家の鍛治長に任命する。」


「謹んで、お受けする!フレイム、いやフレイム様に頂いた機会を決して不意には致しませぬ。」


「フレイムで構いませんよ師匠。私はあなたからまだこの先も多くの事を、学ばさせてもらいます。」


「はっはっは、手加減はできぬからな。」


「クリス・カーロン汝を、魔術研究所・所長に任命する。」


「夫に代わり、御礼申し上げます、フレイム様。我ら夫婦、フレイム様のため犬馬の労も厭いません。」


「ナミ、其方にも期待している。夫婦揃って、私を助けてください。」


「アリシア、君にパームという家名を授ける、今日よりアリシア・パーム汝を、ロックウェル家メイド長に任命する。」


「わ、私なんかで、よろしいのでしょうか。私はただの村娘で、もし粗相などしたらフレイム様のご尊顔に泥を塗ってしまいます。」


「泥ぐらい構わないさ。それに、セバスがいるだろう。これまで通り、セバスの教えを守り続ければ、皇帝のお尻を拭いたって大丈夫だ。期待している。」


 彼らには、魔銀で拵えたメダルを授与した。ロックウェル家の家紋が入ったもので、身元を保証するものである。


「これを決して無くさないように、これを無くしたものは従士を剥奪する。」


「「「「はっ」」」」


「席に戻ってください。さて、続いて各部署からの報告とこれからの展望を聞かせてもらおう。」


「それではまず衛兵隊長の俺から報告させて貰おう。フレイム様のご要望通り戦闘系の祝福持ちに限定して、衛兵隊を構成しました。とは言っても現状は、衛兵2名と見習いが1名です。今後は、彼らの訓練と人材の募集、以上です。」


「うん、ありがとう。領民が少なく、トラブルも大して起きていないから衛兵の数は問題ないだろう。ガッシュの言う通り、人材の育成に専念してほしい。」


「はっ。」


「次は儂じゃな。鍛冶場については、フレイムが全て把握しとるからこの場では、皆に伝えられることに限定させて貰おう。まず鉱山事業の方じゃがな、すこぶる順調に採掘が進んでおる。ただ、これまで通りの採掘は、農繁期に入る事もあって人員が減り難しいじゃろう。それゆえ、こちらも人材の確保が急務、以上じゃ。」


「ありがとう。・・ふぅ、人材の確保がネックだね。」


「それに関しましては、朗報がございます。」


「おぉ、クリスその朗報とやらを聞かせてほしい。」


「はっ、兼ねてよりフレイム様からご所望のあったゴーレムが完成いたしました。」


「おぉ、ついに完成したのか。すぐに運用が可能なのかな?」


「はい、既に試作機での仮運用は検証済みです。今日からでも、力仕事から畑仕事までやらせることが可能です。」


「そうか、ではクリス悪いが君の作ったゴーレムを皆に説明してほしい。その上で各部署から優先度が高い場所へ配属させたい。」


 クリスの助手が黒板に、ゴーレムと操作板の見取り図、と言った情報を書き出していった。それをクリスは、車椅子に乗りながら長い棒で指し示しながら説明を始める。


「かしこまりました。・・それではご説明いたします。研究所で開発したゴーレムは、身長2メートル、岩石製、動力源は魔石を使用しております。当初は、モンスターから取れる魔石を試したのですが、魔力の出力が弱く、十分な性能を発揮できませんでした。そこで、魔獣の大きな魔石を使ったところ、魔力の出力も十分であり、十馬力分の力仕事から細かな動作も可能になるほどでした。一つの魔石で、日中夜問わず稼働させた場合1ヶ月駆動可能です。操作は、操作板で行いますので、操作方法を覚えれば誰でも使用可能となります、以上が簡単な説明となります。」


「素晴らしいよ、クリス!君は天才だ。これなら、農作業や採掘をゴーレームに任せて人員を他の部署に回せるじゃないか。現在は、どれほどのゴーレムを派遣可能なんだい?」


「研究所で保有しているゴーレムは全部で三体です。この三体全て、即時派遣可能です。これ以上増やす事も可能ですが、それには安定した魔獣の魔石が必要になります。」


「ガッシュ、魔獣狩りの方はどうなっているのかな。これ以上魔獣は狩れそうにない?」


「それは厳しいな。他の衛兵もまだ魔獣と戦えるレベルじゃない。俺一人が狩っても、月に一頭が限度だ。」


「そうなりますと、これまでのストックを考えても3体が限度かと思われます。」


「・・いや、何も自分たちで魔獣を狩る必要はない。魔獣は山ほどいるが、人手が足りないなら雇えばいい。」


「冒険者ギルドですか・・。それならば確かに、資金に困っていない我が領なら可能かと存じます。」


「それではまだ甘い、ここに冒険者ギルドを誘致しよう。これはかねてより考えていたことだ。冒険者ならば、戦争になったとて邪魔にはならない。魔石が集まれば、ゴーレムを増やし、開拓が進み人も増えていくはずだ。」


「「「おぉ。」」」

一同は、明るい未来が見えてきて感心していた。


「クリスには、ゴーレムの制作に専念してほしい、また各部署から要望があればそれに沿ったゴーレムを作ってください。」


「かしこまりました。」


 そのあとは、街のインフラや、区画整理、法律、租税、などの話が日没まで続いた。最後に、フレイムは今後の方針を語り出した。


「皆疲れたな、無理もない。これだけの人数で開拓しているんだ。苦労をかける。」


 フレイムのねぎらいの言葉にその場にいた領民が声を上げる。


「フレイム様、私たちは誰一人として苦労などしていません。」


「そうです、フレイム様に出会う前の私たちは、雪原で明日をも知れぬ生活を送っていました。」


「今や領民全員が、あなた様についていけば豊かな暮らしが出来ると、皆そう言っております。」


「そうか、それは本当によかった。だが・・・私がこのボロキアを開拓しているのは戦争のためなのだ。」


「「「「「え?!」」」」」

 まさに、その場の空気が凍りついた。聞き間違えなんじゃないかと、領民は誰もがそう思った。今まで、フレイムからは攻撃的な言葉は一度も聞いた事がなかった。ましてや、戦争といった類の話も聞かされていない。フレイムは、やはりと言った表情である。


「「「「・・・・。」」」」


 少し長い沈黙があり、誰もがフレイムが言葉を紡ぐのを待っていた。


「私はボロキアを開拓した後、北方領土全てに対し宣戦布告を行い。北方全てを、取りまとめる。それが私の野望です。皆さんには、最初に話しておこうと思いました。」


「「「「うぉおおおおおお!!!!」」」」

「マジかよ、やっぱりフレイム様は北方をお求めになっていたんだ!!」


「だから言っただろ、フレイム様は志をお持ちだったんだ!!」


「北方はフレイム様に戴いて貰おう!!」


「・・・これは、一体。」


「反対され、侮蔑されると思っていたかい大将?」


「えぇ、それはもちろん。彼らの生活や大切な人を脅かすわけですから。」


「領民だって、馬鹿じゃないわい。これほどの資源豊かな領土、龍を従える貴族がいて戦争が起きないわけはない。全部わかっていた上で、懸命に働いておったのよ。それにの、長年ここに住んでいてわかった事があるんじゃがな・・北方の民は気が荒く、戦好きなのよ。それにのう、街の方では噂にはなっておったぞ。なぁ、ガッシュ。」


「あぁ、一度その話が盛り上がり過ぎて喧嘩になり、その仲裁に入りました。大将は既にご存知かと思いましたが。」


「・・なるほど。これは、思いも寄らない収穫です。」


 こうしてフレイムは、なんの憂いもなくアージハルトを皇帝の席に座らせるべく、ボロキア開拓に注力していく。 


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