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第三十四話 儀式

「わーい、流石はレンくんはですねー」


 そんなことを言って眠りに入ったアオイと違い、ライトは顔から血の気が引く。

 隕石と入れ替えた大量の地下水とともに落ちてくるレン。

 その右半身は赤く潰れており、気を失った状態で落ちてくる。


「やべぇ、あのまま落ちたら流石に死ぬんじゃねぇか?」


 ライトが大急ぎで窓に近づく。


『ほら、さっさとどくのよ』

「んな事言ったってマット引いて受け止めねぇと」

『まぁ任せるのよ』


 黒騎士に指示を出し、黒騎士が地面を蹴ってレンに向けて跳躍する。


「すげぇ」

『当たり前かしら』


 空中でレンをキャッチして、どんな方法か空中を蹴って戻ってくる。


「なんだあれ。物理法則無視してねぇか?」

『音速で周りの水塊を蹴ってるだけかしら』

「音速で動けるなら納得だな」


 黒騎士がレンを抱えて部屋に戻る。


「さて、応急処置じゃあ持たねぇだろうな」

『魔王と勇者の力で生命力が上がってるはずなのよ。数週間あれば治るかしら』

「その前に失血死するぞ」


 とりあえず肉の位置とか色々と元の場所に戻してみる。


「ダンタリオンは治癒系の何か使えねぇのか?」

『これで死ぬならその程度の奴だったってだけかしら』


 随分と厳しいことを言うが、前の魔王の仲間を殺したレンと楽しそうに話している時点で友情や仲間意識が人間とは異なることは既にわかっている。


「ん、なんか生暖かいですね」


 レンから流れ出た血で不快感を感じたアオイがようやく起きる。


「って、これ血ですか? なんでこんなことに」

「アオイの考えた作戦の犠牲だけどな!」


 全く記憶にない。が、混乱を一旦横に置いて記憶から治癒系のものを探し出す。


「再生能力を倍増させて治癒を促すものがあるのでそれを使います」


 急いで必要なものを準備する。


「これは?」


 アオイの持ってきたもの、液体の入った茶色い瓶と赤い棒が何かを聞く。


「喉の炎症を抑えるもの。端的に言えば風邪薬ですね。そっちは動物の血液から作ったチョークです」

「風邪薬?」


 魔王にとってはこの程度の傷は風邪と変わらねぇのか? と、思ったがそんなことを言っている場合ではないのでアオイの作業を見守る。


「神話の勇者が仲間を生き返らせる時に使った方法です。エリクサーと聖女の血を固めたチョークのようなもので書いた魔方陣を使う儀式ですね」

「この世界ではエリクサーを風邪薬として使ってるのか?」

「エリクサーと見立てて儀式を行うんですよ。教会の上に刺さってる十字架と同じですよ」


 風邪薬をエリクサーに、聖女の血を獣の血に、それぞれ見立てて儀式を行う。


『もちろんそんな劣化品ばかりを集めて再現なんてできるわけがないかしら』

「でも。本物の数分の一でも引き出せたらそれで十分なんです」


 赤い魔方陣に風邪薬を流し、レンの体を上に置く、

 そして少し経つとレンの体が徐々に光に包まれていく。


「これでもう安全ですね」


 アオイが緊張をほぐす。


『でもそれだと面白くないでしょ?』


 そんな言葉とともに廊下から女神が歩いてくる。


『だから姉さまに襲ってもらうことにするよ。防衛戦だね』


 妹の、鬼神の声を背に、女神は歩く。

 女神サーリアはその右手に光り輝く剣を持って二人の前に立つ。


「人使いが荒いところは変わってないな」

『そんなこと言わないでよ。戦いたいって言ってたのは姉さまのほうでしょ。それに口調も変わってるよ』

「む、私は女神として、剣神として正々堂々と戦いたいのですが」

『さー、始めて行こう』


 サ~リアの言い分を完全に無視して鬼神サリアが大声を出す。


「────」


 無言でサーリアが剣を構える。

 アオイとライトがレンを守るように間に立つ。


「ダンタリオンは手伝ってくれねぇのか?」

『私はもともと傍観者なのよ、大事な場面ではできるだけかかわらないかしら。……それにつまらなそうなのよ』

「最後の言葉ですっげぇ気が抜けたがまあ、参加してくれないことは分かった」


 サーリアは奇襲が嫌いなのか準備ができるまで待つようだ。

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