012
幸いと言うべきか、リナの仲間だという人物たちには見つからずに街に戻ってくることができた。
おそらくリナが索敵か何かのスキルを持っていたのだろう。下手に見つかっていたら更なる面倒事に巻き込まれることになっただろうし、その点だけは感謝だ。
現実時間ではそろそろゲームを始めるのに丁度いい時間となったのか、街にプレイヤーの姿が増えてきている。
ゲーム内時間で言えばまだ朝なのだから、NPCから見ればなんとも勤労意欲に溢れる存在に見えることだろう。
そんな活気付いてきた街並みを眺めながら、メイは人通りの多い大きな通りから逸れて人気のないエリアへと脚を踏み入れた。
その理由となっている少女は、おとなしく後ろからついてきている。
(あー、今の現実時間が……十時くらいか。ピザの事考えると一時間もしない内に落ちないといけないわけだが、だからといってこの子をどうしたものか)
メイが足を止めて振り向くと、リナも同様に足を止める。所在無さげに視線をあちこちに走らせ、時折窺うようにメイのことを見上げていた。
放っておくことはできそうになかった。だが、だからといって自分の手には余ると判断したメイは、彼女にも選択を迫ることにした。
「あー、リナ。ちょっといいか?」
「は、はいっ! なんでしょうか!」
「かしこまる必要はないんだが……まぁいいか。とりあえず俺はこれから一端落ちて、そうだな……十一時半くらいに友人とまたログインする」
「そ、そうですか」
途端にへにょんという擬音が似合いそうなほど気落ちしていた。
メイに取ってリナを街まで連れてきたのは成り行きであって、リナの抱える問題について介入する義務も必要性もない。
だから、この後どうするかというのは、当人達次第だ。
モンスター退治の最中、通りすがりに回復魔法や支援魔法をかけた人物と仲良くなったり、露店商で買い物するうちにお得意様になったりするのは、こうしたMMORPGでは極当たり前の事だ。
その切っ掛けを用意するくらいはしてもいいかと思うメイは、やはりお人好しなのだろう。
「もし、その時も一人で暇してるようだったら、一緒に魔物退治に連れて行ってやってもいい」
男性プレイヤーが女性プレイヤーを狩りに誘うなど、下心があると取られそうだったため、気がつけばそんな上から目線で言葉を発していた。
普通に考えれば嫌な奴ではあるのだが、相手はそうしたことに鈍感で素直な少女だった。
「は、はいっ! その時はお願いしますっ!」
「……たぶん、広場のワープゲート辺りに集まるだろうな」
「わかりました!」
そんな遠まわしに約束をするような言葉を交わして、メイはログアウトした。
予定よりも大分早かったが、ある程度の事情説明を相棒にしておかなければならないだろう。
何しろこうした物事の対処は、自分よりも遥かに優れている奴だ。
命はヘッドギアを外すと、一つため息を吐いてから親友に連絡を入れたのだった。




