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第19話 「舞台挨拶、登壇決定!?」

「……えっ、前売り券が完売……!?」


放課後、リビングでお母さんのスマートフォンを借りて電話をかけた俺は、スピーカーから聞こえるマネージャー・瀬戸さんの興奮した声に目を丸くした。


『そうなのよ怜ちゃん! 昨日の『ポカリクス・スエット』のCM放映後から、事務所の電話とメールが鳴り止まなくてね。その勢いのまま、明後日に公開を控えた映画『ヘリオス・コード』の映画前売り券が、全国の劇場で一瞬にして完売したの!』


「い、一瞬で……?」


『ええ! ネットでも「あのCMでウインクしてた美少女と、天才子役の一条蓮ちゃんが共演してる映画ってこれか!?」って大騒ぎよ。映画の公式SNSのフォロワー数も一晩で数万人単位で増えて、映画の配給会社も大パニック&大喜び! 「急遽、上映館数を増やせないか」って調整に入ってるくらいなんだから!』


「上映館を増やす……そこまでですか……!?」


『それだけじゃないわ。映画関係者から緊急の連絡が入ってね――公開初日の「初日舞台挨拶」、怜ちゃんの登壇が正式に決定しました!』


「……っ! 俺、ううん……私がですか!?」


『当然じゃない! 今や映画の超・目玉キャストなんだから。当日はメディアのカメラも殺到するはずだから、衣装もメイクも気合入れて準備するわよ。心の準備、しておいてね!』


「は、はい……! 頑張ります……!」


電話を切った後も、バクバクと暴れる胸の鼓動がしばらく収まらなかった。


(CMの反響だけでも夢みたいだったのに、映画にまでこんな波及効果が出るなんて……)


自分の巻き起こしている波の大きさに、少しだけめまいすら覚える。

前世の俺なら、話題の映画の舞台挨拶なんてテレビの芸能ニュースで指をくわえて見ているだけの存在だった。それが今や、超満員の映画館で眩しいスポットライトとカメラのフラッシュを全身に浴びる側に立とうとしているのだ。


子役・白妙怜として挑んだ、初めての大規模な映画撮影。

過酷な現場で、演技経験もない中で必死に喰らいつき、魂を削るようにして絞り出した演技。あの時間がついに、大スクリーンとなって全国の人々に届けられる。


(不安がないわけじゃない。でも……それ以上に、楽しみだ)


胸の奥から静かに、けれど確かに湧き上がってくるのは熱い期待感だった。


━━━━━━━━━━━━━━━━━


その日の夜。

お風呂上がりにドライヤーで髪を乾かし、自室のベッドに腰掛けたときだった。

デスクの上に置いてあったスマートフォンが、ブブッ、ブブッと振動する。


画面を見に行くと、着信画面には【一条 蓮】の文字が表示されていた。


「……もしもし、蓮ちゃん?」


『……遅いわよ。何秒鳴らさせる気?』


電話に出た瞬間、相変わらずの強気で生意気な声が響き渡り、俺は思わず苦笑した。


「ごめんごめん、髪乾かしてて。どうしたの、こんな夜遅くに?」


『どうしたの、じゃないわよ! 瀬戸さんから聞いたわよ。映画の前売り券、完売なんですってね』


「うん、さっき聞かされてびっくりしたよ。CMの影響がここまで出るなんて……」


『フン、調子に乗らないでよ? ネットじゃ「CMのウインク美少女」ってチヤホヤされてるみたいだけど、あの映画の現場で一番圧倒的な演技をしたのは私なんだからね』


電話越しでも、蓮が悔しそうに眉をひそめつつも、不敵に笑っている顔が手に取るように目に浮かぶ。


「ふふ、分かってるよ。蓮ちゃんの演技、本当にすごかったもん。横で見ててトリハダが立ったくらいだもん」


『な、何よ急に素直に褒めて……調子狂うじゃない……っ』


一瞬言葉に詰まる蓮。ツンデレな反応が可愛くて、俺は思わずクスッと笑ってしまう。


「でもね、私も負けたつもりはないよ。あの現場で、今の私が出せる全力を全部ぶつけてきたから」


『……言うようになったじゃない。フン、そうでなくちゃ倒し甲斐がないわ。明後日の公開初日、舞台挨拶で会うのが楽しみね。大スクリーンに映る私の演技に圧倒されて、腰抜かさないで頂戴?』


「それはこっちのセリフだよ。蓮ちゃんこそ、スクリーンの中の私を見て驚かないでね?」


『言ったわね! 次に共演するときは、あなたの存在感なんて跡形もなく消し去るくらい、完全に喰ってやるんだから!』


「ふふ、望むところだよ!」


バチバチと火花を散らしながらも、電話の向こうの蓮の声には確かな信頼と、最高に楽しそうな響きがあった。

お互いを高め合えるライバルがいる。それがどれほど恵まれていて、誇らしいことか。


電話を終え、スマホを置くと、部屋の中に静けさが戻ってきた。


ベッドにゴロンと横になり、天井を見つめる。


「いよいよ明後日か……」


自分の小さくて華奢な手を、天井に向けてかざしてみる。

CMのバズり、学校のみんなからの温かい言葉、瀬戸さんからの吉報、そして最高のライバル・一条蓮との約束。


すべての準備は整った。


前世では何者にもなれなかった冴えない男子学生の俺が、今、子役・白妙怜として、巨大なスクリーンの中にその姿を刻む。


「――白妙怜の演技を、全国に届けてやる」


静かな決意を胸に、俺はそっと目を閉じた。

子役・白妙怜の伝説となる『ヘリオス・コード』公開当日が、すぐそこまで迫っていた。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【作者より】

ご覧いただきありがとうございます!


ポカリクスCMの大バズりから、ついに映画『ヘリオス・コード』公開前夜へ!

瀬戸さんからの衝撃の知らせ、そしてライバル・一条蓮との熱い電話をお届けしました。


そして――次回、第20話にて【第一部・完結】となります!


満員の劇場、圧巻の初日舞台挨拶、そして大スクリーンに映し出される怜の演技。

第一部の締めくくりにふさわしい、最高の盛り上がりを用意しております!


ここまで読んできて「面白かった!」「完結話も楽しみ!」と思ってくださった方は、ぜひ作品ページ下の★評価やブックマークをしていただけますと、第二部執筆の大きな力になります……!


それでは、次回第20話(第一部最終話)もお楽しみに

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