60. ユリ周辺を巡る動き:ファララとレジータ
なんか書けたのでアップしておきます。(長め)
先日人物表を載せたばかりですが、今後も順調に増えていきそうです。
ほとんど名前しか出てきてなかったキャラ達も、だんだんと掘り下げていく、予定・・・?
最初から今までずっと、フィーリングで書いてるので、相変わらず行方も着地点も不明です。
王都を根拠地にする和平派の代表マリネは、メプネン派閥頭首ファララ家軍師アラランと、メイケン家領都に構えた私邸でここ数日で何度目かわからない会談を終えようとしていた。
「メプネン派閥頭首サヴィエタ殿もようやくあきらめがつきましたか?」
「帝国兵一万を一瞬で無力化したユリ殿を前にして、ようやく、ですが」
「負傷した帝国兵はやはりそれなりの兵に付き添われて本国に送還となる見通し。今後どれくらいの兵力が間の大陸に残るか次第でもありますが、今回の遠征軍以上の規模が送られてくる事は当面、無いでしょう」
「プスルム王国が分裂してもう50年近く。メイケン家がプスルムの名を、レイガン家がプスルムの血を継いでいましたが、ゴブリン・ハーフの女帝クェイナ、そしてユリ・コグレに率いられたユリエールという新興勢力は、帝国の侵攻さえ跳ね返してみせました」
「そのクェイナが帝国にさらわれてしまっているがな」
「だからこそ、狙い目なのでは?」
まだ30代に満たない、年若い軍師が身を乗り出してきても、マリネは不快に思わなかった。
「間の大陸を統一する者が現れたのなら、我ら和平派としての悲願は達成される、か。王都に残っている連中も、ユリ・コグレの破格さを伝えてようやく首を縦に振りました」
「おお、それでは!?」
ぐぐっとさらに身を乗り出してきたアラランから、若干顔を引きながらマリネは言った。
「レイガンの若頭首達はユリに心酔してるそうです」
「後はメイケン家だけですが、長子ラシェルは領都包囲から解放してもらった身ですし、ニウエル女史はなにやらユリさんとの距離を急速に縮めて聖女マーレを前にしても退かない様子。とくれば」
「西岸の帝国兵との交渉に当たっているメイケン家党首アストランザ殿も、提案を無碍にはしまい。外堀はほぼ埋まっているのだから。しかし、問題は」
「ユリ・コグレが提案を受け入れるか否か、ですか。分は悪くないと思いますよ?」
「クェイナ殿が戻ってきてからという条件はつけられるだろうが、諸方面への調整や準備などで数ヶ月以上は軽くかかるだろうし、2-3年程度であればやはり問題あるまい」
「ユリエールが、完全に人間社会との融和を果たした証しともなるでしょうしね」
「では、ご当人に話を持ちかける前に、完全に外堀を埋めておこうか」
アラランとマリネは手分けをして、レイガンやメイケン家党首達への手紙を認め始めた。
メプネン派閥を統べるファララ家頭首サヴィエタは、ふてくされていた。帝国からの使者と共に捕虜になっても、領都を帝国軍の別動隊が包囲したと聞いてまだチャンスは残されていると信じていた。が、ユリ・コグレただ一人の前に帝国兵一万は瞬時に敗北。帝国最高位の実力を持つとも言われる暗部の第二位なんて存在も弄ばれただけで終わった。西岸にはまだ一万の兵がいるとはいえ、ユリ・コグレから別動隊の敗北を聞き、帝国遠征軍は即座に講和に舵を切った。
「つまり、味方は、いない・・・」
軍師であるアラランは元々ユリエールを敵に回す事を得策とは見ておらず、帝国の使者の甘言にそのまま乗せられないよう何度もサヴィエタを諌めてくれてはいた。今となってはそれが正解で、他に取りうる選択肢が無いと思えたからこそ、アラランが和平派と組んで提示してきた策にも同意した。
帝国軍の派兵に息を荒くしていた派閥内の貴族達も大方は日和見に転向。酷いのになると、サヴィエタにユリに輿入れするよう助言してくる者さえ居た。
「足下を見おってからに!」
サヴィエタは、足下の小石を蹴飛ばして、わずかばかりでも憂さを晴らそうとした。
前年の大戦で惨めにメプネン派閥は敗退した。三割以上の兵と、当主と跡継ぎたる三人の兄達と首脳部は、撤退戦の最中に命を落とし、サヴィエタはまさかの当主の座に据えられてしまった。
派閥内の貴族家の生き残りの間でも、意見は大きく割れた。プスルム派閥への糾合やむなしとする停戦派。最後に一兵まで抗がうべきとする抗戦派。レイガンと合流してプスルムに当たるべきとする合流派。他にも日和見する者達や、複数の主張に揺れる者達もいて、なかなかメプネン派閥の中はまとまらなかった。
その中で、高齢を理由に大戦には参加しなかったサヴィエタの祖父が、戦でいち早く撤退を主張し、メプネン軍が首脳部を失っても何とか統率を保ったまま戦場を離脱できた功績で若い軍師に意見を求めたのだ。
「アララン、お主の意見を述べてみよ」
ファララ家長老ヌイメルから命じられ、参加者の中でも特に若いアラランは、一瞬怯んだものの、考え考え発言した。
「このままいけば、プスルム派閥にレイガン派閥は削られていき消えるでしょう。レイガン家当主となったのはまだ十五歳の少女で、特段の才能や力を持ち合わせているとも聞きません。頼みの綱だったガンツ殿も片足を損ない、今までのようには戦えません。そしてレイガンが終わった時には、メプネンもまた終わります」
「その結末を避ける策はあるか?」
「王国崩壊期に大陸南東部に避難した者達の協力を得られればあるいは。しかし彼らの間でも抗争していると聞きますし、こちらまでまとまった兵を出してくれるかというと望み薄でしょう。
また、大陸南部から南西部にかけて境界線となっている山脈地帯とその向こうの大森林地帯に住む獣人や亜人達もまた、互いに相争い、こちらまで連れてきて戦わせられるかというと現実的ではありません」
「ふむ、間の大陸内では、助力を得られなさそうだな」
「はい」
「ならば、人の大陸はどうなのだ?お主は、あちらの出だろう?」
サヴィエタは、アラランの表情がさっと青ざめたように見えたのを覚えていた。
「お勧めしません」
「なぜじゃ?理由を述べよ」
「私は共和国の出です。人の大陸の中で大国は三つありますが、その中で最弱と言って良いでしょう。とても間の大陸までの海を越えて力を貸す様な余力を持ちません。小国が寄り集まって何とか帝国や王国に虚勢を張ってでも対抗しているのですから」
「ならば、王国や帝国はどうじゃ?」
「王国も、帝国よりは国力ははっきりと劣ります。地理的にも、人の大陸の西南方面に位置していて、間の大陸には遠く、まとまった兵をこちらに送り込む余力はやはり無いでしょう」
「では帝国しか無いか」
「はっきりと、お勧め致しかねます!」
「なぜじゃ?」
「前帝の崩御から続いた政争混乱期に帝国に奪われていた領土を王国も共和国もある程度取り返しましたが、新たな皇帝としてオージマーが立ってからは、瞬く間に領土は奪還され、毎年の様に両国は領土をどこかしら奪われています。私の祖国もそうやって滅ぼされた国の一つで、このままでは未来が無いと私は海を渡ってきたのですから」
「それはお主の個人的体験じゃろう?帝国が我らに力を貸せるような存在なのかどうかが問題なのじゃ」
「その余力はあるかも知れません。しかし間の大陸内の抗争を有無を言わさず終わらせるなら万の単位の兵を送り込む必要があり、そこまでするなら彼らは彼ら自身の直轄地として間の大陸を支配しようとするでしょう」
そして、祖父はサヴィエタに尋ねたのだった。
「メイケン家にかしずく未来と、帝国にかしずく未来、お主はどちらを選ぶ、ファララよ?」
「・・・我らが帝国を呼び込むのなら、少なくともメイケンの下には置かれますまい。メイケンが覇を唱えるなら、少なくとも私は殺されるか隷属させられているかでしょう。ならば答えは決まっています」
サヴィエタはそう応え、祖父はさらに問いかけてきた。
「ならば、婿はあちらからもらう事になろう。それでお主の立場は保証される。少なくとも隷属されるような事にはなるまい」
サヴィエタはうなずいたが、アラランは異議を唱えた。
「お待ち下さい!確かに帝国なら間の大陸の派閥抗争を終わらせられるかも知れません。しかし、彼らがこちらとの約束を守る保証もありません!」
「人の大陸で最強なれば、約定も好きな時に好きな様に破る。何度でも。そうじゃな?」
「はい!信頼の置ける相手ではありませぬ!」
「しかしな、アラランよ。サヴィエタの言った通りじゃ。わしらには他に選択肢が無い。メイケンが自分たちの躯の上に立つくらいなら、帝国が我らとメイケンの躯の上に立つ方がマシじゃからの」
「・・・だとしても、旧王都の商豪達の協力を得られればまだ・・・」
「そんな望みがかけられるくらいなら、北風兵団はメイケンに味方をせんかっただろう。そしてここまで力の差がついてしまえば、もう彼らが我らやレイガンに力を貸す筈も無い」
そうして、祖父と自分の声を中心に、帝国に助力を求める事が決まり、使者は送られ、オーク・オーバーロードが渡ってきた頃に返答の使者が帝国からやってきて、ユリエールとメイケンのプスルム派閥によってオーク・オーバーロードの軍勢は撃退され、ユリ・コグレによってオーク・オーバーロードのママシュは倒され無力化され、共倒れを狙って傍観していたが果たされなかったので、帝国からの使者と共にユリエールと接触したが、交渉は失敗。彼らは帝国とも対峙する道を選んだ。
「帝国が、当初予定していた倍の兵力を送ってくれる事になった時は、ファララの時代が来るとさえ思っていたのだがな」
サヴィエタは、また足下の石を蹴り飛ばした。
捕虜となってからも、完全には拘束されず、一日何度かは外(館の庭限定だが)に散歩に出る事も許された。間の大陸連絡会議には、アラランは常に参加し、軟禁状態にあるサヴィエタにも情報を共有。ファララ家の留守を守っている祖父他にも会議の様子と自分の意見を書き送っているそうだ。
それなりに広い庭を何周かして、監視役の付き添い兵士達がそろそろ戻るよう声をかけようとした時、アラランがやってきた。
「やあ、良かった。間に合ったみたいで」
「アララン」
「ちょっとくらいお茶にお付き合い頂いてもいいですか?」
サヴィエタが背後に控える兵士達に視線を向けると、仕方ないなと肩をすくめ、サヴィエタにつけられた侍女に声をかけて東屋に茶の支度をさせた。
「それで、何の用だ?」
「マリネさんとの合意は取れました。外堀を埋めるべく動き出しましたよ」
「そう、良かったわね」
そっけないファララの態度に、アラランは少し声を潜めて言った。
「その・・・、縁談が流れてしまったのは、申し訳なく思ってます」
「別にあなたのせいじゃないわ」
「それでも」
「くどい」
「はい・・・」
サヴィエタは、それでも自分をじっと見つめてくるアラランの視線を断ち切るように顔を背け、侍女が入れてくれたお茶を口元に運んだ。
帝国が自分に紹介してくれた相手は、帝国軍の別働隊を率いていたエグゾース・ガレア伯爵だった。
サヴィエタが彼と初めて会ったのは、西岸からゴンドレーザ・ガスガン子爵が連れてきた文官が到着して面通しを行い、エグゾースや兵士達からも事情聴取が終わった後で、エグゾースは開口一番謝罪してきた。
「すまない。約束を果たせなかった」
「それは、でも、万の軍勢がいきなり地面に飲み込まれるとか、普通はあり得ないでしょうし」
「まあ、な。一対一でも結局は届かなかった。全くな。面目ない」
真摯に頭を下げられ、下手な慰めも無駄だと感じたサヴィエタは尋ねた。
「それで、帝国軍の総指揮官は何と?」
「アハバーラタ殿からはお叱りは受けなかったよ。やむを得まいと。帝国本土からは、これ以上のユリエールとの敵対は無用。負傷兵から本土に送還するよう指示を受けた」
「では・・・」
「ああ、少なくとも当面は、帝国が間の大陸に覇を唱える事はあるまい。従って、君が私に嫁がなくてはいけない理由も消えたと言える」
「でも、全ての帝国軍が撤退する訳ではないのでしょう?」
「どの程度を残すかは、アハバーラタ殿が皇帝陛下と協議中だ。およそ半数以下には減るだろうし、駐在するのもファララ家の勢力範囲ではなく、大陸西岸部分に依って開拓しつつ橋頭堡を確実にしていく事になるだろうな」
ついていく、そういう選択肢も思い浮かびはした。だが、表情から読み取ったのか、エグゾースは再び頭を下げて言ったのだ。
「こちらが約束を守れなかったのだ。こちらに残れるよう皇帝陛下に進言して頂いているが、どうなるかは分からない。将来に渡って、約束を守れるかどうかも分からない。そんな男を待ってもらうなど、申し訳無さ過ぎる」
彼が身分を捨てれば、とも思ったが、それこそ現実的ではない。自分もファララ家を捨てられはしないのだ。
ぐっと唇を噛んだサヴィエタは、悔し紛れに言った。
「せめて私が囚われの身になっていなければ」
「いえ。もしこちらにいらっしゃらなければ、お会いする事も叶わなかったかも知れませんし」
「それでも、人質の解放交渉は、もう少し違ったかも知れませんし」
「結局ユリ・コグレ殿一人に敗れていたのであれば、大差は無かったでしょう。あなたが気に病むべき事ではありません」
「しかし、それでも・・・!」
「では、失礼します。あなたに良いご縁がある事をお祈りしております」
そうして別れた後は、もう会っていない。噂では、北岸方面で上陸した地点で待機していた船団に合流し、そのまま帝国へ帰還するとも聞いた。
つまり、縁談は完全に流れてしまった。
そんな最近の思い出に浸っていたサヴィエタを、アラランはまだ見つめていた。その瞳の中に宿っている仄かな感情を認めたサヴィエタは、東屋の席から立ち上がり、告げた。
「あなたも、あきらめなさい」
背を向けたサヴィエタに、アラランは告げた。
「だとしても、あなたが誰かを自由に選べるよう、私は動きますから!」
だとしても、私があなたを選ぶ事は無い。
そう告げても良かったが、何となく、サヴィエタはそのまま振り返る事無く、居室へと戻っていった。
部屋に戻ったサヴィエタは一人にしてもらい、ベッドに寝ころび、ため息をついた。
これからどうなるんだろ、私。どうしたいんだろ、私・・・。
ユリ・コグレがいる限り、たぶん、どうにもならない。あの女さえいなくなれば、帝国の遠征軍はユリエールもレイガンもメイケンも蹂躙して、派閥抗争は終わってた。私も、あの人と一緒になって、たぶん、幸せになれてた筈だったのに。ユリ・コグレさえ、いなければ・・・・・。
どうやったら殺せるんだろ?まっとうな手段はたぶん無理。毒を盛っても何とかしちゃいそうだし。メプネンの全財産を五星のイグニオにつぎこんで暗殺してもらう?ううん、たぶん無理。ユリの才能に惚れ込んでるって噂だったし、そのイグニオより強いって話だったゴンドレーザって人もぜんぜんかなわなかったらしいし。でも、生きてるなら殺せる筈。どうにか、どうにかしたら、それしか・・・。
そんな物騒な事を考えていたせいか、ずきずきと頭が痛んできた。寝返りを打って、窓の外を見ると、空を飛んで戻って来たらしいユリ・コグレの姿が見えた。
「相変わらず、美しくないわね、あいつ。あんなのを取り合ってるっていうゴブリン・ハーフの女帝も、聖女マーレも、ろくな、もんじゃ・・・・な・・?」
ユリの姿は窓をすぐに横切って見えなくなったのに、頭痛は激しさを増していき、ふと、脈絡も無く、ファララの脳裏には、見た事が無い筈の光景で、見た事の無い筈の誰かを突き飛ばしている自分の姿が見えた。
突き飛ばす筈の誰かではなく、かけがえの無い筈の誰かを、ファララは、いや、古谷肖は・・・・・・。
「いやーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」
唐突に部屋から聞こえた絶叫に、監視役の兵士達も侍女も扉を開けて飛び込んできた。ファララは、頭をかきむしりながら独り言を涙ながらに繰り返していた。
こんな筈じゃ無かった。
そんなつもりは無かった。
私が、私が、あの人を・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、殺してしまった。
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい・・・
繰り言を繰り返し、錯乱したように自らをかきむしり血をあちこちから流すファララを兵士達は必死に取り押さえ、侍女に医者と、おそらく何でもどうにでも出来るユリ・コグレを呼びに行かせた。
だが、その名前を聞いたファララは、
「だめ!絶対だめ!あの人だけはだめなの!呼ばないで、お願い!何でもするからぁぁぁっ!」
と泣き叫びながら一層激しく暴れ、大の男二人でも押さえつけられず騒ぎを聞きつけた増援が四五人でようやく拘束したものの、その顔や手などにはファララの爪などで抉られた跡が痛々しく残っていた。
慌しく呼び出されたユリは、部屋に入ってファララを見た瞬間に、彼女との関わりを思い出し、彼女が取り乱した理由も把握し、とりあえず彼女の額に指を触れて優しく語りかけた。
「あなたはこれから眠りに落ちて、とても幸せな夢を見る。その夢の中では、あなたを苦しめるような事は何も見ないし、あなたが泣いていた理由も、あなたが起きた時には忘れている。私が、思い出してもいいよと言うまで。さあ、眠って」
ユリが指を離すと、泣き叫んでいたファララはことんと眠りに落ちて、激しい感情に歪んでいた顔も安らかな寝顔になっていた。
ユリについてきていたマーレは、ファララや兵士達の傷を癒してから、ユリに尋ねた。
「それで、この人も関係者だったのね?誰?どんな人?」
「・・・ちょっと、ここでは言えないかな」
ユリが固い表情のまま部屋から出て行ってしまったのでマーレは後を追ったが、やはりついてきていたニウエルは、ファララの顔をしばしじっくりと見つめてから彼女達の後を追った。
そんな三人が玄関ホールを通りがかった時、その外側でも何やら騒ぎが起きていた。
「何があったんだろ?」
「また別の誰かが記憶を取り戻して押し掛けてきたんじゃない?」
マーレとニウエルのやり取りは、ほぼ当たっていた。結果的にだが。
館の正面玄関がばーんと勢い良く開かれると、押し開いた誰か、ユリもニウエルも見覚えのある誰かだったが、彼女はホールの階段の先にいたユリを見つけると駆け上がってきてユリの胸にすがりついて言った。
「ユリ様、お願いです!助けて下さい!」
「助けるって、レイガンを?何か西岸の方であったの?」
ユリがクェイナの居城から戻ってくる時、上空から視察して異変が起きていない事は確認してから戻ってきた筈だったが、現レイガン家当主、レジータ・ルク・レイガンは涙を額の縁から溢れさせながらユリに懇願した。
「兄が、マサラが、危篤に陥ったんです!このままじゃ、もう、助からないって、お医者様が・・・。でも、ユリなら、どうにか、助けてもらえないですか?!」
そうして、ユリに抱きついて号泣し始めてしまったレジータを見ながら、ユリは、レジータとマサラとの関わり合いも思い出してしまった。たぶん、泣きながらでもレジータも思い出してしまってるだろうと当たりをつけながら、別の事を考えていた。
レジータを抱えて、二人で転移、可能だろうね。
マサラを助ける事も、可能だと思う。でもそれは、寿命を延ばす事そのもの。確定した死の運命の書き換え。どの程度かは分からないけれど、確実に、自分の中で噛み合ってしまってる歯車は回ってしまうだろうね・・・。
どの程度回ったら、私は今の私ではいられなくなる・・・?
レジータの頭を撫で背中をさすりなだめつつ、ユリは迷い続けた。
二つ選択肢があって、ユリの話だけ直線的に追っていって物語を畳んでいくのと、周辺を掘り下げながらだんだんと終わりに近づけていくので悩んでいた(?)のですが、とりあえずこんな方向性で続いていくみたいです。
ポイントブクマ感想などよろしくお願いしまーす!




