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58. ユリが思い出した事々:最初の転生まで

連休という事もあり、投下しておきます。

ポイントブクマまだの方はよろしくお願いしまーす!

 その晩は一人で考えたい事があるからと、私はマーレとニウエルさんと寝る事を拒否して夜空へと駆け出した。あと少し動き出しが遅ければマーレの光の牢獄に囚われてたかも知れず、私は何となく、クェイナの居城がある方角を勘で当たりをつけ、そちらへと飛んだ。


 そして、飛びながら思い出した事項を検証していった。


 自分、というか紗由理は、七歳の時に木内恵那を喪ってから、あらゆる理不尽に打ち勝ち、何でも出来る存在になるという、人としての存在からはみ出すような目標を掲げた。生まれ変わった彼女と出会い、彼女を娶り、子供を成す。それこそ物語の中でなければ実現不可能な目標の中で、とりあえず真っ先に実現しようとしたのは、自分自身の全ての制御だった。

 人は、意識して体を動かしてはいない。まして、組織や細胞レベルにまで意識し掌握し制御できる人間など、いないと言い切っても間違いは無いだろう。それを、昔の自分は、実現した。それくらい出来ないで、なぜ人間以上の存在になれるのか?そんな単純な動機というか自己洗脳というか。ファンタジー系小説で言うなら、強化形スキルの習得をあの非ファンタジーな筈の世界で習得してしまったに近い。運動能力が求められる時は最適な組織と器官に血液や酸素供給を優先し、記憶や思考能力が求められる時は脳へ。組織や器官レベルまでの掌握に約一年、細胞レベルまででさらに一年。制御を自在に出来るまでで一年。

 自分よりも遥かに優れた体躯を持つゴンドレーザさん=犬塚清美を圧倒し続けたのも、自分の全てを把握し最適な動きへと制御し切っていたからだった。ちなみに大野紗由理という存在と組み手が出来るくらいまでに修練した十二歳の清美の強さがどの程度だったかというと、近隣中学高校の男子不良学生が軒並み一度以上は理不尽にぼこられ、小学生女子に恥を忍び百人を超える集団でリベンジを挑んだが返り討ちにされて、プロスポーツやヤクザのスカウトまで動いたという伝説を残していた。


 森羅万象。人の体はそれ自体が一個の小宇宙であるという例えは時々聞く。ならば人の体と命という神秘は、宇宙の構成を表象する存在でもある。だからこそ、大野紗由理は、その扉に挑み、開け、その管理者ともいうべき存在の目に留まった。意図的な挑戦に成功したとも言えるのだろう。


 確かそれは、こんな心象風景だったと思う。

 真っ白な何も無い空間。自分の立っているのと同じ平面の先に、一人の壮年の女性が佇んでいた。大野紗由理は、にやりと笑い、彼女へと近づいていき、声をかけた。

「あなたが、神?」

 様を付けられなかった事を喜んだのか、彼女はころころとした声で笑い、うなずいた。

「そうね。あなた方からすれば、私は神と呼ばれる存在なのでしょう」

「だとすれば、あなたはもう私が何を成し遂げたいか知っている筈」

「ええ」

「私は、どうすれば神になれる?」

 彼女は私をじっと見つめながら、尋ねてきた。

「あなたが叶えたいと思うような事は、あなたが神になる前に済ませておきなさい。それは神からすればほんのうたた寝の間の夢の中で済ませる事に過ぎないの」

 私は否定もせず、それで?と言葉の続きを待った。

「あなたは、神をどんな存在だと思っているのかしら?」

「神とは、全てを創造し、また回収する者。違う?」

「破壊ではなく、回収。面白い言い方をするのね」

「宇宙が世界そのものだとは思わないもの。世界とは、神そのものから発露され、また回収されるものに過ぎない」

「どうしてそう思うの?」

「神は無限の世界そのものでもあるだろうし、でも世界が何の為に生まれ閉じていくかと言えば、たぶん、新たな可能性、究極的には、自分自身には作れない世界を生み出す新たな神を生む為?」

 壮年の女性は驚きに目を開き、拍手してくれた。

「合格よ」

「それで、私はこれからどうしたらいいのかしら?」

「そうね。数年の間に、あなたはその時を迎えるでしょう。あなたを取り巻く人々の感情の綾から、あなたは転生の契機を得ます。あなたはそれを望みますか?」

「はい、望みます。それが私がなりたい私に至る為に必要な一歩でしょうから」

「よろしい。その後、あなたは何度も転生を繰り返す事になるでしょう。その繰り返しと積み重ねの中でも、あなたはあなたが本当に必要とする事も学んでいくでしょう。それとは気付かないままに」

「それで間に合う(・・・・)のであれば、私に異論はありません」

「・・・あなたは、本当に面白い子ね。気に入ったわ」

「恐縮です」

「また会いましょう」


 次に会ったのは、最初の転生時だった。

 殺された直後でも、大野紗由理(自分)は落ち着いたままだった。

「お久しぶりです」

 真っ白な、何も無い空間で、壮年の女性は微笑んで紗由理を迎えて言った。

「これからの事について説明します」

「お願いします」

「あなたが転生する世界は、とても小さな、最小限といってよい規模のものです。あなたが最初に生きていた世界ではファンタジーとでも分類される剣と魔法、魔物がいる世界。そこであなたはほぼ自由に一度目を生きられるでしょう」

「一度目と限定された理由は?」

「あなたの近しかった誰かが割り込みをかけてくるからです」

「・・・裕花が?彼女も神に?」

「まだ見習いとして、ですけどね。彼女に権能を仮譲渡した別の神は、私にはまだまだ及ばないものの、それなりの神格を持つ者です。在り続ける事に膿んできていますけどね」

「あなたは?」

「さあ?そのくらいの程度はとうの昔に通り過ぎてしまいましたから。さて、あなたはこの転生された先の世界で、女神エリュタリア、あなたのお友達が仮にでも神格化した相手ですね。彼女に愛を誓います」

「愛など知らないのに誓えるのか」

「相手が誓われたと信じたら、誓いと同等の意味を持つ場合もあります。そしてあなたは99回の転生回で彼女を愛し続ける事によって、あなたの愛を証明する事に挑みます」

「さすが裕花だ。私が彼女を何とも思っていなかった事に気付いていたか。私が愛を知らない事も」

「あなたは元の記憶を封じられ、彼女への愛をいわば植え付けられた状態で、世界のどこかにいるだろう彼女の写し身を探し出し、愛を証明する。条件は繰り返していくほどに困難になっていくでしょう。しかしあなたであれば何という事も無くこなしていくでしょうけど」

「相手が仮にでも神なのであれば、それなりに手こずりそうですけどね」

「あなたはその99回の間に、以前の生では学べなかった様々な事を学び習得していくでしょう。それらの中にはあなたが神に至り、その後の永い時間の中でも有用なものも含まれます」

「こちらから彼女に条件を付けていく事は可能ですか?」

「私から、彼女に権能を仮譲渡している神に交渉すれば可能でしょう」

「であれば、回を追う毎に、私の姿を醜く、ではないな、逞しいものにしていって下さい」

「意図は読み取りました。叶えられるでしょう。他にはありますか?」

「最終的に、私は神にならなければならない?」

「あなたがそれを選ぶでしょう」

「ふ、ふふ、楽しみですね」

「そうね、私も楽しみですよ。あなたがどう神に至り、どんな神となるのか」


 私は、神ならば結末を知っているのではないか?とも思ったが、すでにその質問を心から読み取り穏やかな微笑を浮かべている彼女を見て、聞くだけ無粋だし面白くないと問わない事に決めた。


「他に何か聞いておきたい事はありますか?」

 私はしばし考え込んだ後に尋ねた。

「そういった小説などでは、神の力は崇める者の信仰心の総量で決まるという説もあったりしますが」

「下らない戯言に過ぎません。人間に観測されない何かは存在しえないとかいう驕った欺瞞と同じです。なぜ神が被造物抜きに存在できないなどという事があり得るでしょうか?そんなのは神の紛い物、亜神ともいうべき、単なる人以上の低級な存在です」

「四大元素や、太陽や月や空や海、鍛冶や農業商業の神など、人の歴史とともに世界各地に信仰は生まれていましたが」

「人の知覚し得る範囲がその程度だったという事です。あなたの住んでいた社会に黄金の牛の像を神として崇めろと誰かが言ったとしてもなびく者は少なかったでしょう」

「偶像崇拝を詐欺の種にする者はいつどこにでも現れましたけどね」

「でも、私の姿はその中にはいなかったと?」

 私はただ肩をすくめた。それで十分な答えになったみたいだった。

「そう、その必要が無かったから。本当の神は崇められる必要など皆無なのです。ただ、あなたの様な候補者を見い出せれば、それで目的は達成し得るのですから」

「今まで何人くらいを?」

「さあ。何人くらいだと思いますか?」

「少なくとも、あなた以上はまだ誰も」

「それが答えです。今のところは」

「では、私からも、以上です。今のところは」

「楽しんでいらっしゃい」

「お心遣い、ありがとうございます」


 そうは言ったものの、相手に心があるのかどうか、疑っていたふしがあるし、その疑念は当然、相手にも伝わっていただろう。


 そうして最初の転生回だけ、毛色が違っていたらしい。いわゆる転移/転生系のテンプレ的な、ステータスやレベル成長あり、なんと勇者や魔王ありありの世界だった。


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