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50.ニウエルとの再会と、領都カゼリア包囲解放戦

前章に続いて書けた分です。次はまた一週間以内には上げられるといいなぁ・・・(願望

 あわただしく朝食を終え、まるで逃げ出すように飛び出してきたせいで、マーレにも何かは伝わってしまったらしい。

「ゆっくり飛んでね」

「たいした距離無いからすぐに付いちゃうだろうけど」

 私の腕の中でお姫様抱っこされているマーレは、私をきろりと睨んで言った。

「馬車くらいの速さとは言わないけど、話さなきゃいけない事があるんでしょう?どうせ着いたらその後はまた何もかもがばたばたしてお話どころじゃなくなるんだから」

「・・・違いない」

 とは言いつつ、飛ぶ速度も半分以下に落としたけれど、記憶に無いってものをどこまで話したものか悩んでいると、

「話すまではここで留まってたっていいんだからね?」

 と容赦なかった。

「まだ全部整理しきれてないし、全容なんて把握しきれてないんだけど、その前提で聞いて」

 速度をさらに落としつつ、眼下に野営地を臨むくらいまでには夢で見た内容を話し終えた。

「マーレは、女神になる前のことは何も知らないって言ってたから、実感も何もわかないだろうけど」

「ううん。あなたがとんでもない人たらしというか女たらしだったのは、ものすごーーーく実感わきました。そんなあなただからこそ、99回なんて制約もかけたんだろうし、それに」

「ああ。マーレも言ってた通り、あの当時の自分もユウちゃんというか裕花にかけたんだろうね。でも、それだけでもたぶん無い」

「どういう事?」

「まだ半信半疑ではあるんだけど」

 野営地の中心ではオーガーの大長やセピアスを中心に隊列を組み、出立する準備はすでに終えて、上空から降りてくる自分とマーレを見上げていた。

「自分が誰かを愛し続けられるかどうか、興味があったみたいなんだ」

 ドン引きされるだろうなと予測した通り、マーレの表情は引きつっていたけど、

「なら、こうも言えるんじゃないの?その当時の二人は、自分達が変容していっても互いに愛し続けられるかどうか、互いを試しあった、とか」

「そうだな」

 そう言えなくもないけど、あの大野紗由理という人物の感情を思い出させられた自分の意見としては、もっとどうしようもなく益体も無く、残酷で無謀な動機に基づいていたのではという推測は、まだ、言えなかった。

 着陸すると、すぐにオーガーの大長とセピアスと打ち合わせ、道程の大半は軍に付き添って、メイケンの領都ガゼリアへと出発。ガゼリアが見えてきたら状況を見定めて軍を配置し、私がニウエルさんと合流して意識合わせを行い、包囲軍をどうするのか決める事にした。

「今のあなたなら、一人でどうにか出来ちゃうんじゃないの?」

 とマーレに言われたりもしたけど、

「それだと、全部私に頼りきりになっちゃうし、クェイナを取り戻しに人の大陸に向かって戻るまでの間に何かあったら、結局また分裂してダメになっちゃうと思う」

「そうかも知れないけど、普通の戦闘が始まってしまえば、いくらあなたでもみんな無傷でどうにか終わらせるなんて無理よ」

「それもそうなんだろうけどね。でも、軍勢が生き残ってれば、武器とか取り上げたとしても結局は、皇帝の命令をどうにか果たそうとするんじゃないかな」

「だとしても、あなたは帝国軍を皆殺しにしたいの?」

 聖女らしいといえばらしいマーレの問いかけに、私も正直に答えた。

「避けられるのなら、避けたい。けど、あの外交官みたいな連中ばかりなら、せめて、その意図がくじけるくらいにはしておきたいかな」

「くじく、ねぇ。具体的には?」

「片足使えなければ、戦えないでしょ?」

「そりゃまぁ。でも相手にも回復役くらい帯同してるんじゃない?」

「そうだね、見つけたらそいつらだけでも除外しとかないとか」

「除外って。ユリならなんとでもしちゃうんでしょうけど」

 似たような話をオーガーの大長やセピアス達ともして、戦闘を消極的に避けるワケじゃないけど、極力無力化する方針を全体に伝えてもらった。

「殺せば殺すほど、相手もクェイナをどうにかしようとするかも知れないしね」

 という思いつきの言葉は、ゴブリンやオーガーやオークや人間達にも理解してもらえたようだった。


 全体が早足で移動していたせいか、午前の中ほどくらいには領都を遠目に臨める位置にまで辿り着けたので、みんなにはいったん停止して警戒しつつ小休止してもらった。いったん上空にまで登ってから、たぶん出来るだろーなーという索敵の魔法を使ってみた。といっても、

「私は、潜んでいる敵対的な存在の位置を知りたい」

 という導師/言霊師としての力の行使。自分の脳裏に描いた地形図にレーダー波を打って、危険な存在や無視出来ない存在をマッピングしていくイメージ。眼下に見下ろす地上の敵部隊は、領都の東西南北の門の前を厚く、それ以外は薄く覆ってる感じだけど、門前以外の部隊の二つほど、北西の部隊が南西の部隊に合流しつつあり、北東と南東の部隊がその穴を埋めるべく動き出していた。

「相手からはいちおう直視されない辺りで部隊は止めてた筈なんだけど、増援が来るだろう方角がわかってたら偵察とかも配置してた筈か」

 ゴブリン達も斥候を放ってた筈だけど、きっと魔力的な補助とかもあって発見できなかったのだろう。私が目を凝らすと、増援部隊から離れて囲むように敵の斥候だろう存在を知覚出来たので、試しに唱えてみた。

「私は、あの敵達を傷つけず生かしたまま捕らえたい。出来れば麻痺させた状態で」

 自分を取り巻く風の玉から、対象の人数分、16本かな、不可視の矢が放たれて、その大半は命中。当たった相手はだいたい木の梢の上にいたけど、身動きが取れなくなって地面へと落下。姿を見えなくしていたらしい魔法だか魔道具の効果は切れたので、私はセピアスへそれぞれの大まかな位置を伝えて捕縛するように依頼。グルガンには敵部隊の動きを伝えて迎撃体制を取るように伝えてともお願いしておいた。

 そして最も敵部隊寄りにいて、不可視の矢を弾き返したか無効化して逃げ戻りつつある相手を私は急降下して補足。

「止まれ!」

 と命じて一瞬立ち止まったものの、またこちらの力を打ち消す何かを発動させ、煙球や五つの分身を生み出したりと、必死の逃走を図ったので、めんどくさくなった私は気弾を五つの分身と、また透明化して逆方向に逃げていた本命にぶち当てて捕らえた。

 中年のおじさん。それも恐らくはザンネール閣下と同等以上の力を持つ相手。逃げられないと悟った相手が何するかも想像ついたので、

「自殺を禁ずる!」

 と相手の動きを特定して封じながら、急いで素っ裸にひんむいた。だけでなく、体内にも精神的にもいろいろ仕掛けられてた諸々を嫌だったけど体とか頭とかに触診し言霊で解除して、装備もまとめて私の傍に浮かせ、腰布一枚だけは私の精神的安定の為にも戻し、そのまま敵包囲部隊の上空を越えて、メイケン家の館、ではなく、ニウエルさんがいるだろうと知覚できた西門上の詰め所へと飛んで降り立った。


 幸い、私の風貌は誰かと取り違えられる事は無いので、守備兵達にも歓迎してもらえたし、ニウエルさんも私が飛んでくるのを見つけてたらしく、風の玉を解いて着地すると駆け寄って抱きしめてくれた。て、このパターンは、と危惧したけど、ニウエルさんは割り切ってくれたらしい。兵士達の前だって事も思い出したせいかも知れないけど。

「ユリが戻ってきたって事は、アンデッドの皇帝は始末して、聖女とも合流して戻ってきたって事でいい?」

「そうだよ」

「さすがね。それでこの男は何者なの?」

「さあ?こっちの増援部隊へ対応した動きが早すぎたんで偵察されてたんだろうなと当たりをつけて、大半は魔法でそのまま捕らえられたんだけど、この人だけやたら魔法とか打ち消されたり粘られたから、たぶん、相手の偵察とか諜報を司る中でもそれなりな立場にいる相手だと思うよ」

「・・・ほぼ裸なのも、そういった装備とかも剥ぎ取る為ね?」

「ああ。いちおう、体内とか精神に仕掛けられてた何かも全部無効化出来てると思う」

「じゃあ、取調べはひとまず後回しかしら。地下牢にでも入れておく?」

「それでもいいけど、ちょっとだけ待ってね」

 私はこれもたぶん出来るだろうなと、倒れている相手の額に手を触れながら囁いた。

「あなたの名前、役職、皇帝から受けている任務、包囲軍の指揮官級の名前と配置場所を教えなさい」

 名前はイザール・バルガス。ガルバード帝国の諜報組織『闇の爪』の第四位。今回の遠征軍の別動隊の諜報索敵部隊の指揮官で、西岸の部隊には第二位が帯同してるらしい。組織の名前が中二病ぽいのはそっとしておこう。他に指揮官の名前とか、あと魔法使いとかの要注意人物についても網羅してたので、自分自身の索敵マップ情報と重ね合わせ、得た情報をつぶやく事で傍にいるニウエルさんにも随時共有した。

 拒否権の無い尋問を終えると、ほぼ素っ裸のおじさんは地下牢へと退場願った。それなりの保険はかけた上で。

 ニウエルさんも魔道具を持ちつつ何かをつぶやいてたけど、おそらく各門とか館に分散してるメイケン家の方々に連絡を取っていたのが済むと、面を上げて尋ねてきた。

「館にいる兄様に伝えて、西岸にいる父様達への連絡も頼んでおいたわ。ここからどうするつもり?ユリ・・・、いえ、紗由理・・・」

 最後の方は尻つぼみに小声で、私にしか聞こえない感じだったので、私も顔を近づけて尋ねた。

「今まで、途中で、会ったことあったっけ?」

「途中って何?あの時以来、会えたのは初めてだと思うわ」

「・・・説明とかは後回しで」

 瞳を潤ませたニウエルさんから離れると、すぐ傍にはイグニオ爺さんが佇んでいた。

「内緒話は終わったかの?」

「ひとまずはね。それで、私が何か始める前に、伝えておいてもらった方がいいことある?」

「お主がここに来るまでの間に、メイケン家を襲おうとした暗殺者どもは潰しておいたが、まだ大物が残っておったようじゃの。さっきすれ違ったが、正面から対峙すればわしでもそれなりにてこずったかも知れん相手と見た」

「ガルバード帝国の諜報組織の第四位だってさ。西岸に上陸してる部隊には、第二位ってのが来てるらしいよ」

「ほっほ。それは楽しみじゃ。してどう攻める?お主のことじゃから、犠牲は最小限にとか思っとるじゃろうけど」

「まぁね。一万人。ユリエールからの増援部隊に対峙してるのは五千人くらいか。ちょうど良い規模だと思うんだ」

「ちょうど良いっていうのは?」

「いや、これから西岸まで行って、また一万て規模の兵を相手にしないといけないし、何なら帝国には十万以上兵士がいるとか言ってた気もするから、この程度がちょうど良いサイズかな~って」

「あなたね。軽く言ってるけど、五千人とか一万人を相手取るなんて、何十人かの魔法使いが力を束ねてどうにかなるかどうかって感じよ?それだけの魔法使いがまず揃えられないだろうし」

「少なくとも二十人くらいはこの包囲網の中に混じってるし、さっきの第四位さんと同等くらいの魔法防御を装備してる人はその倍くらいはいそうだよ。て事で、試してくるね」

「待ちなさいって!何をどうするつもりかくらいは・・・」

「ほっほっほ。楽しみにしておればいいじゃろ、娘っ子よ」

「もう娘っ子とかって歳じゃないんだけどね」


 そんな掛け合いをしてる二人を城壁に残して、私は上空へと登り、敵包囲軍の動きを改めて観察。セピアスとグルガン達が展開した兵力に対応するように、何層もの防御陣を敷いていた。

 敵部隊の中に散在する指揮官や魔法使い、回復役などの要注意人物達をマーキング。その数およそ百。その数だけ不可視の矢を用意。そこからさらに「その相手を護る力を無効化する矢」を各自の装備数/付与数分だけ追加。約五百本近くの矢を待機させながら、敵部隊の下の地面に自分の魔力を浸透させていき、それなりの負担を感じながらも唱えた。

「地下10メートルくらいまで陥没なさい」

 出来たらまるで神様みたいだな、ってふと思ってしまった途端、自分の中で決して戻せない歯車の歯がかちりとかみ合ってしまったのを感じた。途方も無い力が領都周辺の地面に一瞬で染み渡って、次の瞬間にはぽっかりと、冗談の様に敵部隊の足元から地面が消失していた。ユリエールの部隊と対峙していた五千の敵兵だけじゃなく、領都を包囲していた総勢一万の足元の地面が失われて、落下していった。


 一万の兵が一斉に10メートルの深さの落とし穴に落とされたらどうなるか?阿鼻叫喚というよりは茫然自失という感じだったけど、私はマーキングされた相手に滞空させていた不可視の矢を放っていき、たった一人を除いて無力化することに成功したけど、その相手は剣で不可視の矢を打ち払うと、地上まで跳躍して戻り、上空にいる私に呼びかけてきた。


「我こそは、遠征軍第二部隊司令官、エグゾース・ガレア伯爵である。そなたがユリエール最優の戦士と名高いユリ・コグレだな?いざ尋常に果たしあえ!」

 どうやら空は飛べないみたいなので、私はしばし滞空したまま麻痺の風矢を兵士の人数分x何セットか陥没した地面の先へと叩き込み、セピアス達にはそこへ到る階段を何箇所かに設けて全員を捕縛するよう依頼してから、エグゾースさんの目の前へと降りていった。


「初めまして。ユリ・コグレです。今更果たしあえとか言われても、もう決着ついてるのでは?降伏してくだされば怪我もしなくて済みますよ?」

「黙れ!人間のくせにゴブリンや魔物に味方する裏切り者めが!成敗してくれる!」

「なるたけ怪我させたくないんですけど」

「抜かせ!そなたを倒せばユリエールの軍もまた瓦解しよう。覚悟せよ!」

 その場で振るわれた剣撃から風の刃みたいのが放たれたので、こちらも似たようなのを放って相殺すると、身体強化も使ったのか10メートルくらいの距離はわずか数歩でつめてきていた。

「くらえぇっ!」

 と大きく剣を振りかぶり、最後の一歩を踏み込む直前。重心を残した後ろ足が接する地面を少しだけ後ろにずらした(・・・・)

「なぶっ?!」

 突進する勢いのまま顔面を地面に強打したエグゾースさんはそれでもすぐに立ち上がろうとしたけど、後頭部を思い切り踏みつけて拘束したまま、諜報組織の第四位さんと同様に(とは言っても地面に埋まりこんでる部分は地面に動いてもらって。言葉だとわかりにくいかも知れないけど、ほら、某国民的RPGでも土の腕みたいなモンスターいたでしょ?あんな感じに地面が動いてくれたと想像してもらえると近いかも)、身包み剥いで、その頃には領都内からも守備兵が出てきて崩落した地面の下で呻いてる敵兵に降伏を呼びかけたり、ゴブリンやオークやオーガー達が地下から運び上げてきた麻痺してる兵士達を武装解除して拘束し始めていた。


「まったく、何をするかと思えば・・・、こんな」

「とんでもないのう。規格外にも程があるわい。もはや人間の枠に留まってないのではないか?」

 ニウエルさんとイグニオさんが傍に来て、特に爺さんの一言は今の私にクリティカルヒットだったけど、

「何とか、今はまだ踏みとどまってる感じだよ」

 と返しておいた。そう、何とかまだ、歯車は噛み合っただけで、まだ回ってはいない。時間の問題かも知れなくとも、だけどそれこそが、目的だったのでは?と推測も出来た。それが誰にとっての目的だったのかも含めて。片方か、両方か、どちらの可能性もあった。

「あなた一人で何とか出来ちゃうんじゃないのって言った時、あなたは何て言ってたっけ?」

 マーレも傍に来て、ちくりと嫌味を言われた。

「返す言葉も無いくらいなんだけど、これから西岸にも行って似たような事しないといけないからね」

 呆れた様な表情を浮かべたマーレだったが、

「またついていきますからね!」

 と宣言したのを聞いて、ニウエルさんがまじまじとマーレを見つめて、

「小谷・・・裕花、でしたか?今は、聖女マーレ、女神のうつし身?でも、そう、ふーん、そういう事なの?」

「そういう事がどういう事なのかはさて置き、私とユリとの間にあなたをさしはさむ余地はありませんから」

「それを決めるのは、あなたではなくて、ユリではないの?」

 二人からキッときつい視線を送られた私は、

「西岸に移動する前に、要注意人物達拘束して身包み剥いでおかないと」

 とその場から飛んで逃げ出して、マーキングしておいた人物達を風の玉にくるんで拘束。身包み剥いで心身にかけられた何らかの制御とかも全部解除して、それら全部終えてから、

メイケン家の屋敷で今後の対応会議が開かれる事になった。

 すぐにでも西岸に飛んでいこうとした私は、マーレとニウエルさんの両方に片腕ずつを拘束されて逃げ出せなかった事も付け加えておこう・・・。

「別働隊一万の兵が全て無力化され拘束されたと捕らえた司令官から停戦を呼びかけてもらえば、無駄な犠牲も減らせるのでは?」

 とラシェルさんから言われれば、それはその通りとしか思えなかったし。


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