48.セピアスとマーレとの対話から
私は、それがクェイナの側にいる誰かかと見当をつけて尋ねた。
「昔の事をぼろぼろと思い出したり、過去生で関わりのあった誰かと次々に再会してるだけでなくて、以前使えてた技能や魔法とかも使えるようになってきてるんだ。その技能か魔法かスキルのせいかは知らないけれど、自分に関わりがあるだろう人達がどこら辺にいるのか感じ取れるようになってる。その中で、クェイナの側に、クェイナやマーレよりも、私と関わりが強そうな誰かを感じたんだよね」
「マチガイナイダロウナ」
「その相手と私とがどんな関係なのか、セピアスは知っているの?」
「スベテ デハナイ。ダガ、カノジョハ オマエノ サイダイノ リカイシャデ アリツヅケタ。サイショノ セイカラノ シリアイダトカ。イヤ、シンユウトイッテイタナ」
そう言われても、私にはその相手が誰なのか記憶が蘇っては来なかった。
「名前は?」
「コンカイノ セイデノ ナマエハ マダ シラナイ」
「じゃあ、今回の生ので無くても、最初の生での名前は?」
「キイテイナイ。トキガイタルマデハ カイジサレエナイ ジョウホウラシイ」
「うーん、それ聞ければいろいろ思い出せそうなのに。んじゃ、何なら教えてもらえるの?」
「ユリガ サイショ ドンナ ソンザイダッタノカ。ソシテ テンセイヲクリカエスウチニ オレノヨウナ キョウリョクシャ ヲ エテ、キオクヲ ツタエラレルヨウニシタ」
「でも、再会できるかどうかなんてわからないし、世界が一回毎に作り替えられてるなら、何にも書き残したり出来ないだろうに、どうやって?」
「タマシイノ キオク。タマシイマデ スベテ マッサラナ ジョウタイニモドサレテ、イッカイゴトニ ムカラツクリナオサレテイレバ ムリダッタダロウ。ダガ、コノセカイヲソウゾウシ カンリシテイル カミハ、ミジュクダッタセイカ、ツカイマワシヲシテイタ。オマエトイウソンザイガ、イッカイゴトニ キオクヲ ショキカサレルトハイエ、ウンメイノアイテガダレカヲ オモイダサナイトイケナイトイウ セイヤクガアッタカラナ」
「神様が未熟とか、そんなのもあり得るんだ。へぇ~」
「ソノカンガエニ イタッタノハ、ユリト ソノシンユウノ コウサツダッタヨウダ」
「それでさ、最初の生とか、転生を繰り返すようになった理由は、今ここで教えてもらえるの?」
「マズ ウワガワレタノハ、メガミトノ ヤクソクダッタ」
「違うっていうの?」
「99カイトイウノガ、オオスギルシ、ソンナチカイヲ マニウケテ、アイテヲタメソウトスルホド、カミハ ヒマデハナイ。ソウ、スイソクシテイタ」
「人生五十年としても、その百倍なら五千年か。神様が不老不死でも、確かに私だけに付きっきりになるには長すぎる感じはするね」
「タトエ、カミガ タクサンノ ブンシンヲ ツクリダシ アヤツレルトシテモ、フツウ ソコマデ タッタヒトリノニンゲンニ ツイヤシ ツキアウダロウカ? ソンナギモンヲ テイシテイタ」
「だとすると、私だけが思い入れてたんじゃなくて、双方向ってか、両思いだったのかな・・・?」
最後に元の世界でユウちゃんが私を見た時の只事ではない様子から、それは実感を伴って想像出来た。
「アア。ナントオリモノ カノウセイハアルガ、メガミガオマエヲ アイシテイタ。ダカラ アノヤクソクハ ナサレタ。ソウモ カンガエラレテイタ」
「考えられなくはないけど、だとすると、前提が完全にひっくり返るね」
「オマエノ チカイヲ タメシ、ジツゲンスルタメニ 99カイノ、イワバ 99コノ ベツベツノ セカイガ ヨウイサレタ。サイショハ ソウカンガエラレテイタ。ソノ ゼンテイガ、モクテキガ チガッテイタコトニナル」
「そう言われてもねぇ。神様の目的なんて」
「コレハ オマエガイッテイタコトダガ、アワセテ 100カイブンノ セカイハ、モトモト ベツノモクテキノタメニ ジュンビサレテイタ。ソコニ メガミトノ チカイト シレンガ、マゼアワサレタノデハナイカト」
「うーん。でも、その目的がわからないよ・・・」
「イゼンノ オマエモ ナヤンデイタ。ソシテ カギモ クチニシテイタ。ダレノタメニ ジュンビサレテイタモノカト、ナ」
「誰って、それは」
私か、もしくは、ユウちゃんの為、としか考えられなかった。
「私かユウちゃん、女神様って事になるんだろうけど」
「ソノ ユウチャントイウノガ、メガミノ ナマエカ?」
「たぶんね。女神としての名前はまた別にあるんだろうけど。マーレはエリュタリアとか何とか言ってたような」
「ユウチャン ハ」
「ゆうでいいよ」
「ユウハ オマエノシルカギリ ニンゲンダッタノダナ?」
「そうだね。この異世界に転移し始めるまでは、ふつーの女の子だった筈だよ」
「ナラバ ヤハリ、100カイノマエ、サイショノ セイデノ カカワリアイガアッタノダロウ」
「そうだとしても、まだそこは思い出せてないし」
「1カイメノテンセイデ、メガミトシテノ ユウニ アイヲ チカッタノナラ、サイショノ セイト、チカウマデノ アイダニ、カミトナリ、オマエニ チカワセタノデハナイカ?」
「その逆よりは、あり得るだろうね」
「オマエノ セカイデハ ヒトハ カミニ ナレタノカ?」
「お伽噺とか神話とか、そういうのの中でならね。こうすればなれるとかって胡散臭いのは、いつの時代でどこにでもあったろうけど」
セピアスは、しばし記憶を辿るように考え込みながら語った。
「オマエノ サイショノ セイデ、スガタ モ イマトハ マルデチガウ ウツクシイモノダッタソウダガ」
「ああ。それはこないだ戻った時に確認したよ」
「ウム。ダガナ、オマエノ ヒトトナリハ ナンデモデキテ ダレカラモスカレテ マルデ カミノヨウニ ウヤマワレテイタソウダ」
「それは、ぞっとしないね」
「イゼンノ オマエモ ソンナフウニ イッテタ」
「今だと、もっと洒落になってないけどね。しかし、何でも出来て、誰からも好かれていたか。正直、ろくでもない人間だったような気しかしないけど」
「オマエノ シンユウタル ソンザイハ、ソンナフウニ オマエヲ カタッテイタ。バンノウダガ ヒトラシサニハ カケルト」
「いろいろ思い上がってたりしてたのかねぇ。思い出せてないから推測だけだけど」
「お姉様」とユウちゃんから震える声で呼ばれた時の様子からすると、単なる知り合いや先輩後輩で済むような間柄でないことは察せた。
そんなところに、何でも出来て誰からも好かれてたり崇拝されてたりしたなら、かなり面倒くさい人間関係をあちこちでこさえてたのかも知れない。
何せ、外見がどんどんいかつくたくましくなる一方の連続転生中でさえ、両腕で抱えきれない人数になっているのだ。それが神に例えられるような外見だったのなら、いや考えないでおこう。主に私の精神的平和の為に。
ふと空を見上げれば、空の中央に月が上り詰めかけていた。
「もうだいぶ夜も遅くなっちゃったみたいだから、戻るよ」
「ワカッタ。アスカラハ、ドウスルノダ?クェイナサマ ヲ オウノカ?」
「クェイナが率いてた部隊を連れて、メイケンの領都の包囲解くのが先かなぁ。メイケン派閥の貴族たちがガーランド帝国側についちゃうと、クェイナが築いたばかりのユリエールが無くなっちゃうかもだしね」
「ソウダナ。ワタシモ ブタイニ ゴウリュウシテオコウ」
そして私はまた風の魔法に身を包んでワッハウへと戻った。
「遅かったですね」
マーレには小言をちくりと言われたけど、事情を説明したら納得してくれた。
もちろん、誰にでも話せる内容ではないので、マーレと二人きりだ。
「マーレには、最初の生とか、女神としての記憶とかは無いんだよね?」
「はい。普通に生まれて、物心ついてからの記憶しか」
「生まれる前。女神っていうか、ユウちゃんがどうやって女神になったかとかも?」
「一切ありませんね」
マーレは、巫女であり、聖女であり、女神の分身でもあるのかも知れないけれど、少なくともその人格は独立しているように感じられた。
部屋に戻りつつ、飛び出してから戻るまでにあったことを伝えた。マーレに伝える、イコール、女神にも伝わってしまうことも懸念されたけど、相手がこの世界の創造主なら、どのみち思考も記憶も覗き見られてしまうと考えておいた方が良いかなと思えたから。
ただ、あちらのユウちゃんとの別れ際にあったことは、言わなかったというか言えなかった。
「今のあなたのごつさやいかつさとかが全部消えて、何でもできて、まるで神様のように崇められてもいた、ですか。それではやはり最初の生に何かあって、というか、女神様かその元となった人物があなたに惚れ込んだのが全ての始まりだったのでは?」
言わなくても十分だったらしい。
「自分の性格も、今とは相当違ったのかもね」
私の何気ない一言は、マーレにクリティカルヒットしたようで、しばし無言で考え込んでしまった。
「マーレ。どうかした?何か思いついたの?」
「いえ。女神様の記憶とかではないのですけど、もしあなたの推測の通り、関係が一方向ではなく、全ての世界があなた達二人の為に用意され続けていたのであれば、やはり試練も双方に課されていたと見るべきではないでしょうか?」
「ユウちゃんにも?」
「というか、私のような、あなたを愛すべき存在として用意された写し身たちですね。あなたは転生を繰り返す内に、元の美しい姿から今の逞しい姿へと変貌していったのでしたよね?」
「ああ、たぶん、その筈」
「で、あれば、です。女神になった相手に、あなたも課題を課していたのではないでしょうか?どんどんと元の姿からかけ離れていくあなたを愛し続けられるかどうか。あなたの外見であなたを愛してはいないかどうか。最初の世界で心を奪われていたのは、あなたではなく、女神様か、その元になった少女だったのでは?」
説得力のある推察だったし、確かに、自分の優れた容姿が当たり前で崇められるくらいに自惚れてたのなら、そんな鬼畜な課題を相手に課すかもと考えられた。
「でもさ、だとしたら、何で、99回も転生を?最初に愛を誓った時に受け入れてれば」
「あなたから女神様への課題のせいだったかも知れませんし、ただの人が神様になれた時の交換条件か何かのせいだったのかも・・・」
「そうか。人が自力で神様になるのがとてつもなく難しいかほぼ絶対に不可能なら、人を神様に出来るのは、すでに神様な誰か、くらいだよね」
自分でそう言った瞬間、一気に何かの記憶が大量にフラッシュバックしたせいか、私は気を失ったのだった。
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