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25.戦闘後の会談の始まり

 戦いが終わって、負傷者の手当とか死者の埋葬とかに一区切りがついた翌日。メイケン領都ガゼリアの門の外に会見の場は設定された。


 中心にいるのはもちろんクェイナ。オーガーの大長と子供達に囲まれたオーク・オーバーロードのママシュ。オーガーやオーク、そしてゴブリンキング達とその配下に囲まれたママシュの配下のオークやハイ・オーク、オーク・ジェネラルに、二十ほどの近衛兵達。


 街道をふさぐような形で展開したいわゆる魔物の軍勢の前には、メイケン家の精鋭三千が整列し、その中央には当主のアストランザと第三子のザンネール閣下に挟まれた長子らしき人が、両勢の中央に据えられた床几に腰を下ろすと、それぞれの背後に、イグニオと、一番弟子という小太りした金髪長髪なヨーウェル、二番弟子のフォボル、三番弟子のフィーネさん達が控えた。


 対峙する位置の床几には、クェイナと私とニウエルさん、オーガーの大長、オーク・ジェネラルのミスド。両者の中間、コの字の間の部分には、中立的な進行役として、レイガンからのガンツさんとワッハウ領主のストラピアさんに立ち会ってもらった。


「では、始めましょうか」

 クェイナが立ち上がり、自分達の側の主要人物の名を連ねて紹介すると、メイケン家当主も家族や配下の有力貴族達を紹介してから、問いかけてきた。

「此度のオーク・オーバーロードの侵攻をくい止め、オーバーロードのママシュを倒し、その兵を退かせた功績は、ゴブリンの女帝クェイナ殿の最強の配下、ユリ殿。さらにオークとの混合種(キマイラ)により編成された近衛兵達の攻勢を真っ向から受け止め、これを撃退されたと聞く。相違ないかな?」

「間違いございませんよ。アストランザ・メイケン殿」

「他にいくつもの大事がある中で、一番はオーク・オーバーロードの処遇であろう。いかがなされるおつもりか?」

「彼を覆っていたリビング・スライム・アーマーはユリにより取り除かれました。彼を殺すのはいつでも出来ますが、散り散りになった彼の敗残兵や近衛達に降伏を呼びかけるにも、また、新たな侵略が魔大陸より起こった時に対処するにも、彼を生かしておいた方が何かと役立つと判断しております」


 アストランザさんは、鷹揚にうなずいてみせてから尋ねた。

「かの者を打ち破ったのは女帝の配下。ならばその身柄も処遇もそちらが決めるのが道理。しかしオーバーロードの兵にこの領都が囲まれ攻められた際、兵にも民にも少なからぬ被害が生じましてな。生きて虜囚となったのなら、賠償を求めるのが世の常であります」

「お話は理解できます。しかし、あなた方の間の貨幣は、私達の手にそれほどありませんので、別の形でお支払いしたく思います」

「別の形とは?」

「おそらくそちらにもすでに伝わっている通り、私は、いえ私達は魔物と人と、その間に生まれた者達による国を建てます。イズクン大山周辺地域を主な領土として。私達が統制を効かせる事で、人の領域への魔物の被害はこれまでとは比較にならないほど減るでしょう」

「ふうむ。それはそれで実現すれば確かにありがたくはありますが」

「ええ。もう一つは、魔大陸から新たな侵攻があった場合、我々は再びあなた方と共に戦う事を選びましょう」

「なるほど。それは、非常に、価値のある提案ですな。クェイナ殿はすでにその情報を掴んでおられるのか?」

「はい。ママシュと最も敵対していたアンデッドの軍勢の主が、やってくるであろうと予測されています」

「ママシュが残してきた配下がこちらに渡ってくるのを追って?」

「そのように聞いております。彼を覆っていたスライムの一部をあちらに残してきたそうです。何かあればそれで伝わるようになっていたので、少なくとも彼の配下は渡航してくるでしょう」

「彼の残してきた手勢の数と、そのアンデッドの軍勢の数はいかほどか?」

「オーク達は五千、近衛兵は三十。そして彼の地に亡命していた人々が数百とか」

「人が?なぜ魔大陸の、それもオーク達の配下に?」

「なんでも、人の大陸フュリオの三大勢力にまたがるような形で独特の勢力をもっていた宗教勢力が、互いに相争わせ弱体化させ、自らを最大勢力に仕立て上げようと裏で蠢いていたのを三大勢力から逆襲され、魔大陸へと追放されたそうです」

「それはおよそ十年前の出来事ですな。その後の顛末などは伝わっておらず、まず間違いなく全滅したと見られていたのですが」

「当時はまだオーク・ロードだったママシュが、自分達と共存できる者達を保護したそうです。アンデッドの勢力に対抗する有効な手段として」

「なるほど。彼らがママシュに恩義を感じているのであれば、なおさらママシュを安易に殺せぬという訳ですな」

「はい、そうなります」

「ところで、国を建てるとおっしゃられていたが、名は決められたのですか?」

「ユリエール、そう決めました」

「響きは良いですな。どんな意味が込められた言葉ですか?」

「力と愛とが調和する国になればと願っております」

「よろしいでしょう。我らメイケン家を主軸としたプスルム派閥は、ユリエールと講和を結び、必要に応じて共に戦う事を選びましょう」

「レイガンも、同じ道を選ぶでしょう」

 立ち会い人のガンツさんが言葉を添えてくれて、もし実現すれば、ユリエールと接する人の領域とは、少なくとも争いは避けられる事になった。


 それから領域のおおまかな策定など細かい話がしばらく続いた後、南の方角から騎馬の一団が接近してきた。その数およそ三百。

 ガゼリアの外壁の外に展開している魔物の数に怯んだようにいったん止まったけれど、先頭にいた数名が周囲を叱咤するとコの字の空いていた一辺に到着。

 先頭にいた若い女性は、おそらく二十代前半くらいだろうか。肩くらいまでの金髪に、膨らみのあるブレストプレートや鎖かたびらなどを着込み、長剣を腰にさしていた。

 彼女は、商人風の男と、お役人に見える男を従えて、会見の場の中央にいたクェイナとアストランザさんの側にまで進み出て名乗った。

「私はサヴィエタ・オグ・ファララ。現ファララ家の当主にして、メプネン派閥の盟主でもある。その方らは、メイケン当主のアストランザ、そしてゴブリン達の首領たるクェイナとやらで間違い無いか?」

「いかにも」

「はい。ゴブリンの王達を統べる女帝にして、オークやオーガー達や、彼らと共存する人を合わせた国、ユリエールの国主でもあります」

「はっ、魔物が国主を名乗るか」

「いけませんか?」

「我らは認めぬよ。滅びかけのレイガンや怯えあがったプスルムは、そなた達の国とやらを認めたとしても、まとめて滅ぼしてくれよう」

「ふむ。メプネンにそこまでの力が無いのは皆知っておる。という事は、そこにいる者が、人の大陸からの使者という事か?」

 アストランザさんの言葉に、サヴィエタさんはにやりと笑った。

 お役人風の格式ばったローブを着込んだ、だいたい四十歳前後のめがねをかけた人がくいっとそのフレームを押し上げながら進み出て、魔物の軍勢をも恐れずに見下しながら言った。

「人の大陸フュリオの最大勢力、ガルバード帝国皇帝のお言葉です。従属せよ。さもなくば滅ぼす、と」



今のところ、ストックは2個くらいをキープできてます。

ブクマやポイント等頂ければさらに励んでいく所存です。

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