24.オーガー大長の息子ガンダの選択と、戦後処理の始まり
先週の久しぶりの投稿にポイントを入れて下さった皆様ありがとうございました!
元々目指していた戦場でも、いつの間にか戦闘は止んでいたらしい。理由はいくつか考えられたし、その中にはまだ死んでいないオーク・オーバーロードを救い出しに残りの軍勢がここに押し寄せて来る事まで含まれていたのだけど、なぜだかそれは起こらなかった。
やがて戦場を征したらしいゴブリンとオークとオーガーの連合軍の勝ち鬨がかすかにでも聞こえてきた頃に、クェイナとオーガの大長と娘さん達がやってきた。
クェイナが駆け寄ってきてくれたので、抱き上げて互いの無事をまずは祝った。
「良かった。間に合って。無事でいてくれて」
「期待以上ですよ、ユリ。ママシュを単独で撃破されるとは」
クェイナはほめたたえるように頬に口づけしてくれたので、私もクェイナの頬にちゅっと口づけた。
そんな私とクェイナの傍らでは、オーガーの大長と娘さんが、ママシュの側から離れようとしない息子さんに声をかけていた。
「ガンダ、ブジ、カ?」
ガンダと呼ばれた息子さんは、首を左右に振って答えた。
「オレノ、カラダノドコカニハ、コノカタトノ コドモ、ヤドッテイル」
「ソンナモノ、オロシテシマエバ イイ!」
「イイヤ、オレハ、ウム。アズア」
「ナゼ?!」
「オレガ、ソウ シタイカラダ」
その後はオーガーの言葉で父と妹からの説得をひたすら息子さんであり兄のガンダが拒み受け入れないというやりとりが続き、説得する側が言い疲れた頃にガンダは立ち上がり、クェイナに向かって頭を下げて言った。
「ゴブリンノ ジョテイヨ。ママシュヲ、スクッテ モラエナイダロウカ?」
クェイナはガンダには答えず、私に向かって問いかけた。
「ママシュを倒したのは私ではなくユリです。ユリはなぜトドメを刺さなかったのですか?」
「このガンダさんが、まぁ、その、初めての相手だし、殺して欲しくないって、頼み込んできたからだよ」
クェイナはガンダさんに再び向かい合うと、問いかけた。
「つまり、あなたはママシュと番になりたいと?」
「ソウダ」
「ミトメラレン!」
「ゼッタイニ、ダメ!ソンナノ、ユルサナイ!」
大長とアズアさん達に、ガンダさんは言った。
「ミトメテモラワナクテ、イイ。ユルシテモラウ、ヒツヨウモ、ナイ」
大長はなおも言い募ろうとしたが、アズアさんは武器を抜いて、虫の息のままのママシュに突き立てようとした。
私はクェイナをちらりと見て、どうぞお好きなように、と受け取れる表情を確かめてから、ママシュに突き立てられそうになった武器を握る手を掴んで引き留めた。
「まだ結論は出てないし、ママシュは私の獲物だよ?あなたが私にお願いしたのは、お兄さんを助け出す事じゃなかった?」
「ソレハ、タシカニ、ソウダガ!モチロン、カンシャハシテイル。ダガ、ソレトコレトハ!」
「何でも捧げるとか言ってなかったっけ?じゃあとりあえず、ママシュを見逃してあげて。大長さんもね。後でトドメは刺しちゃうかも知れないけど」
アズアさんはまだ武器を突き立てようと腕に力を込めたので、私は彼女を大長の方へと放り投げた。大長は意図を汲んだように彼女を受け止め、その両肩を掴んで拘束してくれた。
「ソウダナ。ムスコノオンジンノ、タノミ。コトワルドウリハ、ナイ」
「トウサマ!?」
「アズア、オマエデハ、ママシュヲタオセナカッタ。チガウカ?」
「・・・・チガワナイ」
アズアががっくりと肩を落としたのを見て、クェイナはママシュの両足や両手などの関節部に触れてから、私が内側から破裂させた右胸と右側頭部の傷口に触れて治癒していった。
「カンシャスル!」
「あなたの為だけではありませんよ、ガンダさん。ママシュがいた魔大陸の情報を、私達は知らなすぎます。彼は軍勢の全てを引き連れてきた訳ではないようですし」
ママシュはやがて、意識を取り戻して呻いた。
「ウゥ・・・、オレハマダ、イキテイルノカ?」
「ソウダ!ユリト、ゴブリンノジョテイガ、タスケテクレタ!」
ガンダががばっとママシュを助け起こして、涙ぐむ姿を見て、ある意味私とクェイナもこんな風に見えなくもないんだろーかと思わないでもなかったが、クェイナは淡々と尋ねた。
「ママシュ。私はゴブリン達を統べるクェイナです。あなたを助けたのは慈悲からではありません」
「トウゼンダナ」
「あなたのこの大陸での狙いと、魔大陸に残してきたあなたの軍勢やその敵などについて教えて下さい」
ママシュは何度か苦しそうにせき込んでから答えた。
「コノタイリクノ、オークタチ、タスケニキタ。スキアラバ、コノタリクヲセイハシテ、マタイリクヲセイスルグンゼイヲ、ソダテヨウトシタ」
「つまり、あなたの軍勢は、魔大陸で優位にはいないのですね」
「アア、ソウダ。シタカラカゾエタホウガ、ハヤイクライダ」
「なのにあなたはあなたの精鋭を連れてきて、敗れた。あなたの敵は、あなたの軍勢を破り配下に加えようとするでしょうね」
「モシクハ、コロシツクシ、ソシテ、コノタイリクニモ、ツイゲキヲクワエ、セイリョクカニ、オコウトスルダロウ」
「魔大陸の有力な者の中でも、誰がそうしようとするか、あなたには心当たりがあるのですね?」
「アル。ダガ、ソノジョウホウヲ、カタルナラ」
「わかりました。あなたの配下を殺し尽くす事はしないでしょう。あなたが降伏を呼びかければ、応じてくれる者も少なからずいるでしょうし」
ママシュは、ガンダの腕の中で、クェイナに向けて頭を下げた。
「ワレト、モットモハゲシク タタカッテイタノハ、アンデッドノ、コウテイ。シニガミトモヨバレル、ダンダニル」
「そんなに激しく敵対してた中で精鋭と統率者のあなたが抜けてきてしまえば、残されたあなたの軍勢は」
「アイツニコロサレタモノハ、スベテ、アイツノ アンデッドトシテ ヨミガエル。ダカラ、アイツノテキハ、オオイ」
「なるほど。もう死んでるから、あんたの能力はそいつの配下には通じないけど、そいつの能力で強力な部下を奪われていったら、じり貧になっていくしかないよね」
「ソウダ。ソシテ ヤツノノロイ、ボウギョフカノウ。フレラレテ、ノロワレレバ、ソクシスル」
「でも、あんたが纏ってたスライムの鎧なら防げたの?」
「ゼッタイノボウギョデハ、ナカッタ」
「つまり、身代わりにはなってくれてた感じ?」
「ソノヨウナモノダ。グボッ、ゴホッッ」
「ムリヲスルナ。シニカケテイタノダゾ。ユリ、クェイナ、シバラク ヤスマセテハ モラエナイカ?」
「私は構わないけど」
「私もです。まだ聞き出さないといけない情報も、説得して頂かないといけない部下の方も多いでしょうからね。でも、その前に」
クェイナはガンダさんに向き直って言った。
「ガンダさん。あなたがもし子を生み、その後も寄り添い続けたいのなら、あなたの体をいくらか作り替えておかないと、ほぼ間違いなく、死に至るでしょう」
「ゼヒ、オネガイスル」
「マテ、マッテクレ!アニハ、オーガーノイチゾクノ、アトトリダ!ソレガ」
「アズア、オマエニハ、ナンドカハナシタロウ。オレハ、ジョセイニハ、キョウミヲモテナカッタ」
大長さんはむずかしい顔をしていたが口を挟まなかったという事は察してはいたのだろう。
「アズア。オマエガ、イチゾクノダレカカラ、ムコヲトレバイイ」
「ダケド、アニヨリツヨイ、ワカモノイナイ!」
「オレノコトハ、オレガ、キメル。ゴブリンノジョテイヨ。タノム」
「二度と男性には戻れなくなりますが、よろしいですか?」
「カマワナイ。ヤッテクレ」
アズアさんはまだ大長の腕の中でもがいていたが、クェイナはガンダさんを地面に寝かせると、体の隅々まで触れて何かを探し出すと、それに体の表面から触れたまま、手を下腹部まで動かしていき、そこに両手をかざしておそらくは重大な改変を行っていた。ガンダさんはその一大手術?にも苦しそうな表情は浮かべたが悲鳴は上げなかった。
「あなたも女性になりたい訳ではないようなので、胸はそのままにしておきます。出産に関しては、女性とほぼ同様に行えるようにしておきました。乳母は誰かに頼めばいいでしょう」
「アリガタイ。カンシャスル」
「クェイナ、これからどうするの?っていうかどうなるの?」
「メイケンの領都を囲んでいたオーク達は優勢であったのに軍を退いたそうです。私や連合軍と戦っていた近衛達も、たぶんあなたがママシュを倒したのと時を同じくばらばらになりました。一部は狂ったように戦い始めてしとめましたが、一部は戦意を喪失して降伏したり、残りは統制を保ったまま退却していきました」
「戦後処理って感じか」
「そうですね。ママシュの身柄をどうするかも諸勢力の間で協議しないといけませんし、魔大陸で敵対していた者がこの大陸に進出してくるのなら、あっさりと殺してしまうのはもったいない措置でしょうしね」
「取り込めるなら取り込んでおいた方がお得か」
「はい。間違いなく。敵は、別の方向からも来るかも知れませんし」
「そうなの?」
「人の統べる大陸の国家群による争いに一定のケリがついてしばらく経ちます。であれば・・・」
「この大陸をめぐって、人と魔の大陸からの争奪戦になる?」
「まだ、わかりませんけれどね。今は、目の前に起きた事から片付けていきましょう」
そうして厳重に拘束されたママシュをオーガー達が何重にも囲みながら、ゴブリンとオークとオーガーの連合軍とその捕虜達は、メイケンの都へと進発したのだった。
これを投稿してもまだ二つストックが出来ましたので、再来週までの分は大丈夫そうです。
がんばりますので、気に入って頂けたらブクマやポイントよろしくお願いします。
209/11/17 大長の娘の名前がぶれてたのを、アズアに修正しました。




