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23.ユリとオーク・オーバーロードとの戦い

復帰直後という事で連投。まだ読まれてなければ前の章からどうぞ。

 目の前に立つのは、身の丈3メートル以上はあるオーク・オーバーロード。普段からスライムを身にまとってるせいか、ほぼほぼ全裸だった。うん。はた迷惑。


「オマエガ、ユリ、ダナ?」

「そうだけど、初対面なのに、ていうかなぜ待ちかまえられたんだ?」

「テシタ、ゴブリンノナカニモ、イル」

「そういや、ゴブリンの王座、一つ空だったっけ。でも、ここであんたを倒せば終わりなんじゃ?」

「タオセルモノナラ、タオシテミロ」


 んで、背後からは、かわして突破したばかりのスライムがうぞぞぞと迫ってきてる気配がしたので、私は突進した。

 ママシュは、ただ立ち尽くしてる。こちらが手を出してスライムに触れたらそれでおしまい、って思ってるんだろう。

 ママシュの面めがけて、気の玉を放ってみたけど、スライムの表面が若干凹んだくらいだった。

 ママシュの表面を覆うスライムと、背後から迫るスライムとが、ぶわぁっと広がり、覆い被さろうとしてきた。

 脇へ飛び退きスライムの津波をかわすと、前後から迫ってたスライムは混ぜ合わさって、こちらに幾状もの腕みたいのを伸ばしてきた。

 私はママシュの背後へと周り、魔力を練ってママシュの体内へとねじ込めるか試してみたが、やはりスライムの存在に跳ね返されて魔法は成立しなかった。


「やっぱ、そのスライムをどうにかしないとだね」

「ヤッテ、ミロ。デキナクバ、オカス」

「遠慮しとくよ!」


 私はウェストポーチに手を突っ込み、母が入れておいてくれた台所用品の一つの袋を取り出して、その中身を一掴み、ママシュの頭部へと投げつけた。

 スライムの触手が何本かガードしてきれいに顔面にはかかってくれなかったが、それでも頭部から上半身に重曹を浴びたスライムは、あちこちから煙を上げながら溶け落ちていった。


「ナ、ナンダ、ソレハ!?」

「とある科学の、台所用品?もとい調理にも使われたりするらしいよ」


 ママシュには理解不能で、何かまだ言おうとしてみたいだたけど、呼吸が苦しくなったのかせき込んでいた。スライムは、私に触手を伸ばす余裕を無くしてたので、スライム全体へと重曹をぶっかけていくと、その内側ではぼこぼこと激しく泡だっていた。


「理解出来ないだろうし、私も理解してないけど、なんかね。酸性の物にアルカリ性の物を混ぜると、中和反応ってのが起きるらしいよ」


 反応には混ぜ合わされる物によって何種類もあって、化学式なんかを含めて当然私の頭の中には入っていない。ただしあれはネットで調べた時の反応の一つにあった、たぶん二酸化炭素が発生してる様子だ。


「スライムが全身覆ってても呼吸とか出来てたみたいだけど、スライムが二酸化炭素しか生じなくなったらどうなるのかな~?」


 答えは、すぐに出た。ママシュが呼吸できるように、スライムが動いて頭部が外気に晒された。


 せき込むように空気をもとめて呼吸したママシュは、体のあちこちで溶け落ちるスライムの有様に激怒し、私に殴りかかってきた。

 私は腕を覆うスライムへ重曹をまきながら内側へと踏み込み、ウエストポーチから出したマスタードスプレーをママシュの鼻先へと射出した。

 ぶしゅしゅしゅー!と黄色い噴霧を顔面に浴びせられたママシュは絶叫した。

「グアアアアアワアアアッッッ!?」

「効果は抜群だ!ってか」


 身長3メートル以上、体の厚みや重さでは自分の3倍から5倍以上は軽くありそうなほぼ全裸なオークが、豚面を涙と鼻汁まみれにして激しくせき込みながら顔をかきむしっていた。


 私は今一度全周に重曹をまいてから、手をママシュの頭部と胸部に向けて差しだし、魔力を練り始めた。今度は、表面のスライムに弾かれる感触は無かった。

 ママシュの体内に魔力の塊を生成し、後は炎の玉として炸裂させればおしまい。ママシュもスライムも逆転の一撃を放ってくる気配は無かった。


 けれど。

 背後からかすかに聞こえたバヒュンという石弓から矢が放たれた音。風切羽が空気が裂いて進んでくる音。そして私に向けられた殺意。

 私は半身になって背後からの矢をかわしつつ、ママシュの体内で練っていた魔力を起爆させた。


 ボボンッとたぶん音を立ててママシュの体内で弾ぜた炎の玉は二発。背後からの矢をかわした事で狙いはそれて、心臓ではなく片肺を。頭蓋骨の中心ではなく、右側頭部を破裂させた。

 二本目の矢が放たれてきたけどトドメ刺すのを優先した私は、矢との間にママシュの体を挟むよう回り込んで盾にしようとした。

 ママシュの巨体は膝立ちになり、地面にくずれ落ちかけていた。魔法でも気弾でも拳でも、何でもあと一撃を叩き込めば終わりって状況だったけれど、


「サセンゾ、ニンゲン!」

 大柄なオーガーが一人、どでかい双刀を私に振り下ろしてきていた。

 とりあえずバックステップでかわし、相手を良く見てみると、大長とその娘さんの面影があった。


「もしかして、大長の息子さん?無事、かどうかは知らないけど、邪魔するならボコるよ?」

「コロサセハ、シナイ!コレハ、オレノ、ダイジナ・・・!」

 オーガーの巨体で私とママシュとの間に割り込んできた息子さんは、私に話しかけつつも攻撃を止める気配は無かったので、左右からの連撃をかわした後の隙に踏み込んで、ボディへ拳をめり込ませ、浸透勁も打ち込んだ。


 ガハッ、と息を吐き出し、地面へと崩れ落ちた息子さん。気絶しててもおかしくない強さで殴った筈なのに、力が足りなかったのか、私を見上げながら、問題発言をかましてくれた。

「タスケテ、クレ!ママシュハ、オレノ、ハジメテノ、アイテ、ナンダ・・・!」

 一瞬フリーズしかけたけど、何とか返答する。

「・・・・・えっと、その意味で言うなら、無理矢理初めてを奪われた(オス)の皆さんは大勢いたんじゃなかったのかな?てわけでトドメ刺しておくね。放っておいても死にそうだけど」

 頭部の右側をえぐられ片肺をやられてても、倒れているその背中はまだ上下していた。私がママシュに歩み寄ろうとすると、息子さんに足を掴まれて懇願された。

「タノム!コノオカタヲ、タスケテクレルナラ、ナンデモ、ナンデモスルカラ!オネガイダ!」

「掘られて惚れたの?だとしても、こいつは危険だから」

「ソノカタヲコロスナラ、オレモ、アトヲオッテ、ジブンヲ、コロス!」


 うわぁ、とどん引きしつつ、大長と妹さんの言葉を思い出して、死なれるといろいろ面倒なことになりそうだなと考えて、妥協案を実施することにした。


「この場ではトドメは刺さないでおいてあげるよ。だけど、犠牲者はもう出させない。この後生きようが死のうが、ね」

 ファンタジーな異世界なら、体の部分欠損をも回復させてしまう薬や魔法の類もあるかも知れないけれど、私は息子さんの刀を一本拝借すると、倒れてるママシュの、長大なイチモツと玉々とを、ざしゅっ、と切断。後腐れとか付け直しが出来ないように、炎の魔法で灰にして、風の魔法で吹き散らしてやった。


 その後のことは偉い人たちに押しつけようと、私は私の背中にへばりついたままだったゴブリンのポツドに頼んでクェイナに連絡してもらい、彼女と大長と妹さんとが駆けつけてくれることになった。


 とりあえず命までは取られなかったことで、息子さんは安堵したのか、地面を這ってママシュの側まで行くと、その手を取って握り締め、私に言った。


「アリガトウ、タスケテクレテ。コノ、レイハ、カナラズ」

「そのままだと死んじゃうだろうけどね」

「オーク・オーバーロード、オークノナンバイモ、セイメイリョク、ツヨイ。キット、ノリコエテ、クレル」


 そうなってしまうとまた対立したり戦ったりしないといけないのかなとも思ったけれど、約束した手前、クェイナ達が来るまでは手を出さないでおいた。


次回は来週投稿予定にします。(ストック1なので。。。)

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