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今のままで…いい…。 vol.010 「事態は…それだけでは…済まなかった。」

「なんたって、今から25年も…、む・か・し…。」

瀧澤。


何も言えずに奈都美、

「…そう…だったんだぁ~~。尾田君…、おかあさん…。」


「でもね~~。事態は…それだけでは…済まなかった。」


店員が、

「お待たせ…しました~~。生ビールと…酎ハイになりま~~す。」


内海、

「おっと~~。ありがと。ほれ、七瀬。」


奈都美、

「あっ、は~~い、頂きま~~す。」


瀧澤、

「まずは…ほぃ、ナッちゃん。」

ジョッキをカチン。

瀧澤、生ビールを一口。

「…で、伸永のお父さん。」


奈都美、

「はい…。」


「物凄いショックで…。…それもそうだよ、愛妻…2人も…失くしたんだもん。育児に子育て。」


その言葉に奈都美、

「えっ…???でも…親族の方々…???」


そんな奈都美に瀧澤、右手を振り、

「全~~然…。…うん。…でも、最初は、やんや、やんや…だったらしいんだけど…。母親の愛情を知らない伸永…、なぜかしら…親戚のお世話にも…馴染めなかったんだって…。そんな伸永を親戚の人たちも毛嫌いして…。…やがて、それが姉にも及んだ。梨花(りか)って言うんだけどね。伸永のお姉さん。…結果的には…、伸永のお姉さん、世話になっていた親戚の家、伸永を負ぶさりながら飛び出して、自宅に引き籠り。」


奈都美、黙って瀧澤の話を…。

内海、腕組みをしながら…。


「父親もそれからは…。もぅ…、子供たちの事は自分で見るって…。…けれども…、結局は無理が祟って、ノイローゼ。挙句は鬱になって、仕舞には、その無理と鬱で体が限界。倒れて病院に運ばれて…、数日後には…。過労死だよ。…伸永、2歳。お姉さんは14歳、中学2年。」


奈都美、

「う~~っわ。」


「でもね~~。お姉さんが凄いのよ。全~~部、お父さんから生活の事、教え込まれて。中学生ながらも、お父さん仕事の時は伸永の面倒、ひとりで…。」

「へぇ~~。」


「まっ、その甲斐あって、今はもう~~。心臓外科医師の奥さん。」


奈都美、

「そうだったんだ~~。」


「まっ、梨花さん。中学時代から伸永を育てて…。頑張っては来たんだけど…。中々ね~~。両親がいないせいも…あってか…。伸永は物凄い人見知り…。しかも…内気ときている。」


内海は首を縦に、数回。


そして奈都美は、

「うん。見てても分かる。」


「…けど…、あんな伸永…なんだけど~~。」


奈都美、首を傾げて、

「ふん…???」


「勉学は…姉以上。」

そして瀧澤、

「ぷっ。笑わないでよ。梨花さん。高校は…通信制なのよ。」


奈都美、

「へぇ~~。」


「お父さんの建設会社。まっ、今や盤石…。だから、伸永のお姉さん…経済的には安定。つまりは、会社の今の状態の礎を作ったのは…お父さんの実績だったから…。会社組織が、尾田家に支援を怠ることはなかったんですって。」

そして、ひと呼吸置いて、

「なんだけど…、梨花さん、お姉さんね、甘えられないって…。だから、働きながら通信制。ちっちゃな…伸永、見ながらだもん。…しかも…、自分だって、大学でしょ。物凄い努力家。」


奈都美、

「へぇ~~。凄~~い。」


「私だって、最初に梨花さん見たとき。えっ…、この人…大学生…???って、目を疑った。物凄い貫禄。」


内海、

「ぷっ。あ…、いや…失礼。」


奈都美、

「うそ…、部長より…貫禄あり…。」

瀧澤を見ながら…、小さく顔を左右に震わせて…。


「そんなこんなで、伸永、お陰様で、高校も名門。そして、大学も芸大。彼の絵…見たら凄いよ~~。ふふ。」


奈都美、

「あっ。」






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