↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
What‘sawonderful another world ! ~なんて素敵な異世界なんだ!~  作者: 詩森さよ(さよ吉)
第2章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
98/132

第97話 宿の襲撃


 俺たちがテッドと別れた夜遅く、俺の危険察知に引っかかるものがあった。ちょうど月が雲に隠れて、暗くなったころだ。気配の方向はテッドが止まっている宿、やはり銀鈴茸を狙っている者が来たようだ。


 俺が起きると、同室で寝ていたゲオルグも目を覚ました。


「来たのか?」


「みたいだな。お前、銀鈴茸って何に使うか知っているか?」


「詳しくはないが、自家魔力中毒の緩和に使われると聞く。ただしかなりの高濃度魔力に効果があるから、なる人間は限られる」


「自分の魔力の多さに中毒するってことか。この国だと、例えば皇族とか?」


「そうかもしれな。大体は魔力コントロールの出来ない子どもがなるものだ。相当高価な茸だと考えると上位貴族でも侯爵家以上と思われる。そして納品先が皇宮だから、皇族その人あるいは婚約者や重要な側近といったところだろう」


「もしかしたら治療を失敗させたいという意図かもしれないな」


 そういう重要性の高いポストは成り代わりたいヤツが多い。権力志向の親がいるとかな。


「可能性はある」



 俺とゲオルグは外に出て、様子を探ることにした。俺たちが護衛を外れたことで皇族に何らかの害を及ぼしてしまったら、エリザの亡命が上手くいかなくなるからだ。

 ホントのところ、誘拐の被害者である俺がそこまでする必要はない。それでもこの2年共に戦っていた仲間でもある。恋人や妻にしたいとは思えないが根は悪いヤツじゃないし、不幸になって欲しいとは思わない。大体そう思うなら、あのままあの国に置いて来ればよかったんだから。たぶんゲオルグも似たような気持ちだろう。


「私は表を見張る。ユーダイは裏口を頼む」


「りょーかい」


 俺が裏口に近づくと、何者か2人組がちょうど風呂場の窓を外しているところだった。どうやら魔法は使えないらしい。

 空気の入れ替えのためだけの窓なのでとても小さいが、小柄で細身の子どものような体型ならギリギリ通れそうな大きさだ。2人ともそのような体型をしている。黒い覆面に体にフィットしたシャツとパンツ。そしてベルトで止められた武器の数々。怪しさ満点だ。


「お前ら、泥棒か?」


 俺は直接声をかけた。本当は暗殺者かもしれないがそういうのは関係ない。盗賊や強盗は死罪。もちろん暗殺者もな。

 盗みの罪で許されるのは、10歳未満の子どものかっぱらいやスリだけなのだ。しかも1度きりだ。


 窓を外していない方の1人が俺にナイフを投げて来た。それをはたき落とすと、その隙に俺の側まで肉薄してきた。つまりナイフは陽動で、本命は手甲についたかぎ爪での攻撃のようだ。だがこれは一撃で仕留められる武器ではない。


 それに動きが遅い。この小柄さにしてはかなり早いスピードだろうけど、日々戦いに明け暮れさせられた勇者チート(というかジジイのくれたチートだけど)には敵わない。


 俺は攻撃中の相手の手首を引っ掴んでそのまま折った。そしてそのまま手甲を引き剥がす。手の骨格から見て女だ。


「やっぱり毒か」


 舐めてみてピリリとする。神経をマヒさせる系の猛毒だ。だけど俺の状態異常無効が毒の要素をかき消していく。


 俺が毒をなめたことで、馬鹿めと思っていた小柄な女が驚愕する。俺がケロリとしていたからだ。


「なぜ効かない!」


「ああ、期待させて悪い。状態異常無効のチート勇者なもので」


「ゆ、勇者?」


「そう、だから深夜に不法侵入する悪いヤツは捕まえるんだ」


 そのまま腹パンして1人仕留めた。


 もう一人は窓を外すのに成功して、ちょうどくぐろうとしているところだったので。俺が引きずり出した。こっちも女だ。この窓だと骨格が細くないと無理だから両方女になったんだろう。こちらも殴り倒す。念のため2人とも武装解除しておく。


 そのころ気配を察してか、ゲオルグが駆けつけてくれた。


「向こうに居なくていいのか? 別口が来たらマズいだろ」


「館の主人を起こした。あとはテッドの護衛が見張るだろ。でこの2人か?」


「今のところは」


「この窓を元に戻すか?」


 魔法なら簡単だからな。


「いや、こいつらの仕事の跡を消したらダメだろ。まぁ夜中にこんな格好でここにいること自体おかしいけどな」


「では宿の主人を呼んでこよう」



 ゲオルグが主人に説明して、警吏に2人の女を引き渡した。テッドも部屋から降りてきていた。


「お2人が助けてくださったんですか……」


「アンタが襲われたら、殿下に不利益になりますから」


 エリザはあれでも王女なので、一応敬語ぐらい使っておく。


「とりあえずありがとうございました」


「礼ならいらない。こちらの都合だ」


「あのお姫様に忠実なんですね?」


「いいや、全然。ただ一応は仲間なので、寝覚めの悪いことはしたくないだけだ」


「明日の納品で、お三方のことを依頼人に同行していいかお問合せしてみます。お礼の話はその後したいです」


 俺とゲオルグは顔を見合わせた。


「それはとても助かります」



 俺たちは結局、捜査の協力で朝まで付き合っていたので、宿の好意で朝食と朝風呂をいただくことになった。お向かいの汚い宿で目を覚ましたエリザが、風呂上がりの俺たちを見て顔をしかめる。


「なんでアンタたちだけ、お風呂に入っているのよ!」


「昨日、軽い捕り物をしたからな」


「わたくしにも声を掛けなさいよ!」


「殿下は女性ですから、夜更けにお声がけすると外聞が悪くなってしまいます。嫁入り前でいらっしゃいますし、今が一番大事な時です」


 そうゲオルグはしれっと言い放つ。俺としてはめんどくさかっただけだけどな。


「それより殿下、パタール商会テッド殿が、今回のご依頼主をご紹介くださることになりました。正装にお着換えください。我々もそういたします」


 正装だからといってキレイなドレスではなく、勇者パーティーとしての正装だ。つまりエリザの場合はパレードの時に着た、豪華な刺しゅう入りの聖女服である。


「ちょっと、わたくしもお風呂に入りたいんだけど」

「悪いが時間がない。俺たちも着替えないといけないからな。とりあえず部屋に服出してあるから、着替えて来てくれ」


 宿から出てきた時点ですでに清浄魔法《クリア》をかけているはずだ。いまから風呂に入られると時間がかかって仕方がない。


 そういうことで俺たちはサクリードの皇宮に赴くことになった。

お読みいただきありがとうございます。


所用のため29,30日とお休みさせていただきます。次回は10/1になります。

なんだか今月は忙しいみたいです。どうぞよろしくお願いいたします。


10/1 タイトルの話数を変更いたしました。申し訳ございません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。