第96話 告白
道中は大したことなく、いやBランクの本物の『スリー・ウォーリアーズ』だったらかなり苦戦したと思うけど、とうとうサクリード皇国に着いた。
「いやぁ、ジョーさんの魔法はすごかった。ゴブリンの集落にサッと魔法を掛けて、1度に仕留めるなんて」
「まだ集落クラスでなく、10数体ぐらいでしたからね。でもあそこまで増えると後は爆発的に増えるだけなので、さっさと倒したかったんです」
簡単に説明すると、俺たちが野営している近くにはぐれゴブリンを見つけたんだ。奴らはGと同じで、1匹見つけたら3匹入ると思えってやつだから念のため近くに巣がないか調べたら、集落になりかかるほど増えていたのだ。
それでゲオルグが爆裂魔法を掛けたんだ。ゴブリンはよく燃えるから火魔法がいいんだよな。森の中なので延焼を起こさないようにするのはエリザの防御魔法だ。
俺は荷を守る役割だ。こういう魔獣の襲撃を利用して、盗賊が来ることは少なくない。
元から巣の場所を把握して置けば、ターゲットが近づいてきたときにそいつらに魔獣をぶつけるようにするだけだからな。
実際、黒服面の男たちが5人いたが、追跡型ウィンドアローで仕留めて置いた。テッドには俺が魔法を使えることを教えていないから、わざわざ知らせなかった。エリザと見張りを交代してから、遺体を見分したけど特にめぼしいものは出てこなかった。手に入ったのは多少の金とそいつらの得物や暗器、目くらましなどの小道具だけだった。身分を明かす物が一切ない。これはプロの仕事だ。
だからサクリードの宿に入ってからも俺たちは警戒を緩めなかった。大事な薬草はテッドの手元にある。俺たちは彼に話があると言って、部屋に招待してもらった。すぐさまエリザが部屋に結界魔法を掛ける。これからテッドにカムアウトをするのだ。
「後は明日の納品にお付き合いいただくだけですね。それでお話とは何でしょう」
「私たちはあなたたちに謝らなければなりません。
実は私たちは『スリー・ウォーリアーズ』ではありません。私がジョー、彼女がリズなのはうそではありませんが、彼はベンではありません」
どうやらテッドが俺たちの恐れていた真贋鑑定の出来るスキル持ちだったようで、それでも驚いていた。
「……嘘はお付きになっていないようですね。それにしてもベンさんはすごいですね。徹底して無口で通しておられた。それとも地ですか?」
「いや、どちらかと言えばよくしゃべる方だ」
「なるほど、それで今からわたしを殺して、「銀鈴草」を奪うんですか?」
「それならこんなわざわざ話の席を作ってもらうと思うか?
俺たちがその気になれば、アンタたち全員、最初の野宿の日に全員殺せたぞ」
「ユーダイ、脅すのはなしだ。私はジョーではなくゲオルグ=オーレンドルフという。こちらはカイブラント王国のエリザベート王女殿下でいらっしゃる。
少し母国が混乱しており、エリザベート殿下の身に危険が及びそうだったのだ。
それで殿下を安全にサクリードにお連れするために、名義を貸してもらって依頼を受けた」
「俺たちはアンタが感じていた通りにBランクではなく、Aランクで勇者パーティーなんだよ」
そうして俺たち3人は本物の冒険者カードをテッドに見せた、
「……勇者パーティーですか。驚きしかありませんな」
「騙していたことは申し訳ないと思っている。ただ私たちも冒険者ギルドに寄ることが出来ない事情があったのだ」
俺たちはテッドに新国王となるテレジアと、エリザが聖女という力のためにライバル視され仲が悪いこと。国から帰還命令が冒険者ギルド宛てに出ているが、それを受ける訳には行かなかったことを話した。
「それで『スリー・ウォーリアーズ』に頼んで、依頼を譲ってもらったんです」
「それでなぜ今になって明かすんですか? 明日には別れるではありませんか」
「あなたの行先がサクリードの皇宮だからです。私とユーダイはこの国に殿下を亡命させたいと考えております」
「亡命ですか⁈ それは思った以上に大事ですね!」
「殿下は聖女です。神に愛された国において、立場を認めていただける存在です。この国以外に最適な受け入れ先はないと考えている」
「だがサクリード側に接触したくとも、今は伝手がない。しかも身分を偽って皇宮に入ることは今後のことを考えてよくない。それで俺たちは身分を明らかにして、できれば協力を仰ぎたいと思った。俺たちの事情を理解してもらえないだろうか?」
「もちろん我々のことを信用が置けないというのなら、ここで解雇してもらって構わない。ここでならばあなたの茸を求めた客に協力を仰ぐことも出来るでしょう」
テッドはしばらく考えていたが、何かを決断したようだ。
「わかりました。ではまずお三方を解雇し、パタール商会の協力を仰ぎます。ここから出て行ってもらえますか?」
ああ、『スリー・ウォーリアーズ』のみんな、依頼失敗で悪いね。でもよく知らない他人に依頼を横流しした時点でそうなる運命だったし。降格は間違いなしだろう。まぁ男に美人局されたことよりは恥ずかしくないかな。
「了解した。テッド、世話になったね」
「わたくしたちはすぐにでも宿を変えることにするわ」
「ちょ、ちょっとお待ちください! 報酬はよろしいんですか?」
「ここまで無事に来られたし、道中の費用も払ってもらったから結構よ。買い取ってもらった魔獣の素材はお詫びとして受け取るといいわ」
「では我々はここで失礼する」
俺たちがあまりにあっさりと引いたので逆に不安になったようだ。
「いや今すぐ行かれると困ります。まだ納品が済んでいないんですよ!」
「なぜ? 信頼できないものを側に置く方が心配でしょう?」
「解雇されましたしね」
「せめて連絡先でも」
「必要ないわ。わたくしはもうパタール商会と関わる気がないですもの」
「「殿下の仰せのままに」」
呆然とするテッドを置いてけぼりにしたまま、俺たち3人は部屋から出て行き、宿を引き払い、出て行った。
「さて次はどうしますか?」
「サクリードの神殿へ行こう。そしてエリザは改宗するんだ。
……それで本当にいいよな?」
「多少は不本意だけど、神殿預かりにしてもらう方が身の安全が図れそうだわ。あなたたちはどうするの?」
「俺は特にサクリードにいる必要ないしな。多少観光と情報収集して出ていく。ゲオルグは?」
「私は国に帰ろうと思う。誰かが後始末をしないといけないでしょう」
「平民落ちするかもな」
あるいは死罪か。
「それは、国の宝である聖女を亡命させたんですから覚悟の上です。俺の命はレリに捧げていましたしね」
「そんな極端なこと言わないでよ。とりあえずは宿屋を見つけましょうよ。神殿に行くところまでは付き合ってくれるでしょう?」
ゲオルグはどっちでもよさそうだったので、俺もそうすることにした。
「ただし、宿は目の前のヤツな」
「ええっ! もっときれいな所がいいんだけど」
「テッドがかわいそうだろ。この周辺に危険察知で注意しておくから、悪いのが来たらわかるし、近場がいいんだよ」
「ユーダイは優しいよね。私は貴族の命に背くような商人などすぐ切り捨てるけど」
「皇族の方が大事なんだよ。商人だったら、あたりまえだろ」
「ユーダイ、アンタも商人だったのよね? アンタだったらどうする?」
「俺だったら? まぁこれまでの実績を考えて、今日一晩は保留にして護衛させるね。その間に新しい護衛を用意して、明日の納品にはそっちと行くね」
「それが一番よさそうだね」
「でもテッドの気持ちもわかるよ。嘘つきは側に置きたくないんだよ」
「違いない」
テッド、この程度の罪滅ぼしで悪いけど、これが精いっぱいだ。
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