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What‘sawonderful another world ! ~なんて素敵な異世界なんだ!~  作者: 詩森さよ(さよ吉)
第一章

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第8話 わたしの最推し2


 そんな話をしているうちに支度が出来上がり、わたしはウキウキで縦浜のコンサート会場へ訪れた。


 そこはパイプオルガンが付いた、海近くのクラッシックの演奏会の多いホールだった。よく晴れて雲一つない青空で、海面がキラキラと輝き、最推したちの最後の演奏にふさわしい最高の天気だと思った。


 贈られたチケットを差し出すと係員に舞台裏の方に案内された。招待客はわたし以外にも何人かいて、なんとエリーゼ様たちとお話しできるという。遠目で見かけたことはあったけど、お話なんてしたことなく胸が高鳴った。コンサート後の出待ちもしたことあるけど、一度も見かけたことはないのだ。


 昔エリーゼ様の旦那様が生体コンピュータの実用化に成功したことで、テロリストに誘拐され亡くなったという痛ましい事件があったからだ。それ以来、彼女たちは不特定多数の人物と触れ合うことが一切なくなった。

 だから今回の招待客もものすごく厳選されている。30年以上追っかけて絵を贈っているとはいえ、一面識もない私が選ばれたのは奇跡だ。多分絵師として成功して商業イラストを多数手がけていたから、テロリストが入り込む余地がないと認められたんだと思う。



 天使のようなとは言ったけれど、ルエーガー兄妹にスキャンダルは少なくもない。

 先ほどの旦那様の死もそうだし、なにより彼らの幼少期の事件がある。

 彼らの母親の従妹が毒女で両親を殺害後彼らの養育権を握り、2人を虐待し、財産を奪おうとしたのだ。妹のためにその被害を受け入れていたアル様も我慢できずにファンの中で同年代だったアンドリュー=カーライルに助けを求めた。その時の裁判で発覚したのがアル様への虐待が性的なものだったこと。大スキャンダルになった。


 その後エリーゼ様は亡くなった旦那様の娘と共に生体コンピュータの権利をもって、アル様の親友で恩人でもあるアンドリューと再婚した。それはゲノムに手を加えることで自分の体をデバイスにするシステムであり、今全世界を席巻している。もはや生体コンピュータなしでは生きていくのは出来なくもないが難しい。彼女の夫は一躍世界の富と情報を掌握したのだ。

 その彼女の娘さんが日本人と結婚して2人の子どもを残した。つまりエリーゼ様の孫の1人が田原雄大くんこと、勇者ユーダイなのだ。



「君はあの時のコンサート会場にいたんだね」


「はい、私は招待客だったので雄大さんの斜め後ろに居ました。私の前にはモエとナツナと呼ばれる中学生くらいの女の子たちが居ました」


「……間違いないな。萌香がいるのはあてずっぽうでも言えるけど、なっちゃんがいたことはその場にいないと言えないからね」


 どうやらモエちゃんがもう一人のエリーゼ様の孫で、ナツナさんはお友達のようだ。



「あの日、わたしはエリーゼ様とアル様とお話ししました」


「そうなの? 何か特別なことあった?」


「いえ、長年の応援ありがとうってことを言ってくださっただけです。ただ……」


「ただ?」


「エリーゼ様が何か変な音がすると言っていました。アル様は気が付かなかったみたいです」


「そうか……」


「その後、爆発音と天井が落ちてきたのを覚えています」


「うん、そうだったね」


 よく考えれば事故というより、テロだったのかもしれない。

 でもわたしも、ユーダイ様も同時に亡くなったはずだから、知る由もない。


 ユーダイ様は静かに考え込んでいたが、やがてわたしに顔を向けた。



「その話がしたくて、俺に近寄って来たわけじゃないよね?」


「はい、わたしはこの村を安全に出ていきたいんです。それで近所まででもいいので同行させてもらえませんか? できれば一緒に都会に行けたら一番いいんですが」


「理由は? もうオークの侵攻はないんだよ?」


「村の若い娘の中で、わたしだけが今回の被害に遭わなかったんです。それだけで妬まれます。あとあの村長を敵に回しましたし」


「ああ、がめつくて執念深そうな男だったね。でも君はオークたちが生きていると気が付いて、俺に討伐を依頼したんだからみんなの恩人じゃないのかな?」


「いいえ、その発見したことが問題なんです。なぜならわたしはみんなから抜け駆けして、オークの集落に残る金目の物を探しに行ったんです。

 前世の記憶があるせいかわたしは村のために体を差し出せなかった。勇者たちとエッチなことをしたくなかったし、それを強要するこの村も嫌になったんです。

 だけど他のみんなが我慢したことをわたしだけが我慢しなかった。田舎ではそういうはみ出し者を嫌います。次に何かあったら一番に矢面に立つのはわたしなんです。ですが詳しいことが発覚していない今なら違います」


「なるほど、理由は分かった。でも親御さんに迷惑がかかるんじゃないのか?」


「わたしの父はこの村一番の薬草栽培の達人なんです。この村の収益のほとんどを薬草に頼っています。父のスキルを使えなくなることは、この村の死活問題になります。母は今回かなり体を張りましたし、村長と次はしないと約束しています。約束を破ったらこの村から父が出て行くと言っています。それも村の死活問題です。

 ですが私のことは契約外です。必ず何らかの奉仕をしないといけないでしょう」


「そっか……どうしようかな?」


 ユーダイ様は困ったように額に手を当てていた。

お読みいただきありがとうございます。

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