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What‘sawonderful another world ! ~なんて素敵な異世界なんだ!~  作者: 詩森さよ(さよ吉)
第2章

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第73話 100年前の勇者


 ローワン共和国の冒険者ギルドでは俺たちは大変歓迎された。


「いやぁ、ホワイトのヤツがいい人材がいるって言ってきたから一体どんな奴が来るのかと思っていたら、まさかこんな美しいお嬢様とは思ってなかったぜ」


 ホワイトと言うのはどうやらビアンカの事のようだ。時々ふらりと現れる流れの冒険者で、いつも少年少女を連れているらしい。だから子どもが来ると思っていたそうだ。


「しかも勇者パーティーに護衛されてくるなんて、素晴らしい人脈です」


 ギルマスとサブマスにそう言われながら、ベリンダはにこやかにほほ笑んでいた。

 俺たちも彼女が落ち着くまで3日程ローワンに滞在することになった。彼女は自分で言っていたようにテキパキと仕事を覚え、あまりやったことがなかったであろうお茶くみや掃除なども嫌がらずにやっていた。これならうまくやっていけそうだ。


 聞けばフィリシアに習ったらしい。彼女は家で冷遇されていて、メイド仕事をさせられていたそうだ。おかげでどこでも生きていけると逞しくなっていた。ますますラノベの主人公みたいな子だな。


 俺たちがベリンダの家から依頼に対して、無事を確認できたことをの証明も相手への連絡も本人とローワンの冒険者ギルドが保証してくれ依頼達成となった。冒険者ギルドはこういう時に便利だ。わざわざベリンダの母国まで報告に行く必要がなく、達成しても支払いを踏み倒される心配がないからだ。



 明日からフィリシアの実家に向かうということで、俺たちは打ち合わせのためエリザの部屋に集まった。当然フィリシアは除外でだ。


「次はフィリシア嬢の所だがゲオルグ、婚約はこのまま継続でいいんだな?

 団長がいないとなると、無理な婚約話はないかもしれないぞ」


「もちろん、いいに決まっている。侯爵がいなくても勧められる可能性は高いから。でも国に帰りにくくなったね」


「どうして? わたくしは侯爵が亡くなったことを知らせなくてはならないわ」


「ではなんて言うんです? 殿下。 彼が獣人を差別したのでパーティーから追放したら、何者かに殺害されましたってそのまま仰るおつもりですか?」


 それだったら隠蔽した意味がない。


「め、名誉ある死だと言うつもりよ」


「ではなぜその仇を討たなかったと言われませんか?」


「……」


 俺たちがアイツの死を大事にしなかったのは、ビアンカを敵に回さないためだ。彼女は圧倒的に俺より強い。それがわかっているから、この2人も口を噤んだ。



「俺たちは大した功績を上げてないしな……」


「私はそうは思っていないよ、ユーダイ。この1年半近くの旅で、それなりに民を救っているだろ」


「だがほとんど人災だったじゃねーか。盗賊や害獣を倒しても、魔族とはほとんど戦っていない。いや俺が今回の旅で一番不思議に思ったのは、一体魔族はどこで悪さをしているんだ?」


「盗賊たちの裏に魔族がいた形跡はなかったね」


「魔獣だって、ダンジョンか魔素の濃い所から湧いてきたものがほとんどだったわ」


「多少の小競り合いはあったけど、それだって魔族の方が引いてくれた。どちらかと言えばテリトリーを侵したのは人間の方だったし。

 なぁ、一体魔族はどこで侵略戦争を仕掛けているんだよ?」


「知らない」


「わたくしも知らないわ」


「はぁ? そんなことでお前ら、俺を異世界から呼び出したのか?」


 あんなに大勢の犠牲まで出しているのに?

 そのせいでゲオルグの婚約者は亡くなり、外国の魔法士からの信用がガタ落ちしているんだぞ。デメリットしかないじゃねーか。


「正直今回程度の討伐ならエリザ、カイル、ゲオルグの3人で回るだけでよかったはずだ。そうなれば騎士団長も死なずに済んだし、国際的な信用もさほど落ちなかったと思うぞ」


「わたくしも今になってはそう思うけれど、当時は勇者という看板が必要だったのよ」


「一応君に貸し与えられているその剣は勇者にしか重たくて使えないしね」


「これなぁ、聖剣なのかもしれないけど俺のための剣ではないぞ」


「どういうことだ? それは歴代勇者が使ってきたとされる剣で持ち回りの国に貸し与えられるものだよ?」


「だから最初の持ち主の勇者のものであって、俺の聖剣ではないってこと。一応使えるし丈夫だけど、特別な権能なんて感じねーし。

 前回の勇者もこれを使っていたのか?」


「いいえ。前回、つまり100年前が本来我が国の持ち回りだったの。でもバルティス王国で悪魔付きが出て、向こうに勇者が降臨したの。しかも30人もね」


「30人? 勇者ってそんなにいるのかよ!」


「全員楽団員だったそうよ。手持ちの楽器が武器に変わるって聞いているわ」


「楽団員?」


 ウソだろ、まさか?


「だ、誰か有名な勇者はいないのか?」


「いるわ。セイリュート王国に嫁いだ女勇者がマリナって言うのよ」


「マリナ……まさかハープが弾けるんじゃないよな?」


「あらっ、どうして知っているの? あとコンマスのマッツとか」


 コンサートマスターの松永さんのことか?


 この時心臓が破裂しそうなぐらいドクンドクンした。

 どうして思いつかなかったんだ! おばあさまと伯父さまの演奏を聴くために、オーケストラの皆さんが舞台袖にいたじゃん。

 俺や萌が転移したように、あの人たちも転移していたとしたら……。


 もしかしたらあの時会場にいたジジイと母さんを除く全員が異世界転移に巻き込まれていたとしたら……。とんでもない大誘拐だ。そしてそれを爆弾事故で隠した。


 こんな恐ろしい陰謀が事故……? 絶対にありえない!


 ジジイにチートを与えた悪い方の女神のことが頭によぎった。全てはそいつの仕業なのか?


『エリーゼ‼』

(すまん、ユウ。エリーゼがやられた)


 ジジイの悲痛な叫びが思い出された。これはただの異世界転移ではない。それだけは間違いなかった。


 

 この後俺はレナのような異世界転生者に何人も出会っている。いまにして思えば、この時俺はもっとよく考えて気がつかないといけなかったんだ。

 ジジイが1人だけ取り残されたのが罠だったように、俺も罠にかけられていたということにな。

お読みいただきありがとうございます。

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