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What‘sawonderful another world ! ~なんて素敵な異世界なんだ!~  作者: 詩森さよ(さよ吉)
第2章

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第71話 追放


 ビアンカが用意してくれた馬車とはいえ、普通の馬と人間の御者なのでローワン共和国まで10日程かかる。すでに7日目とはいえ時折宿屋を利用しなくてはならない。

 おかげさまで彼女が宿屋の路銀も持ってくれているので、俺たちは毎夜よい宿屋に泊まれることになった。ただ騎士団長のおっさんがうるさい。


「俺に関係ないローワンなんぞになぜ行かねばならんのだ。穢れ者の国になど行く必要はない!」


 それは勇者パーティーだからだよ。


 1年以上旅を続けるには初めに国からもらった金だけではやっていけない。だから各地の様々な困りごとを解消して金を稼いでいる。

 ウチのパーティーで一番金喰い虫なのが宿賃だ。そして王女であるエリザベートよりも団長がうるさいんだよ。そういうアイツだって金がないから良い宿に泊まれなくなると言ったら、ベリンダの親の出す金に飛びついていたじゃねーか。そのくらいわかれよな。


 だから部屋割りはいつもアイツは1人部屋にして、俺とゲオルグ2人、エリザ、ベリンダ、フィリシアが3人と分けた。本来なら個室は王女であるエリザの物だろうに。



 とはいえ俺はゲオルグとフィリシアの婚約に少々疑問を持っている。なぜこんなに急ぐのかがわからないからだ。彼女の家族に会ってからでも間に合うと思うし。

 しかも魔法契約だなんて、契約者両名が揃わないと解除できないのに……。


 なので寝る前に部屋に防音魔法を掛けて、聞くことにした。


「一体全体どうしてこんなに婚約を急いだんだ?」


 俺の質問にゲオルグは目をギュッと瞑った。どうやら何か嫌なことがあるらしい。


「2人を送り届けたら……これから俺たちは帰国する」


「ああ」


「もしテレジア殿下がカイルと結婚していなければ、次は俺と結婚することになる」


「なんで? お前、伯爵家だろ? 身分が低いんじゃないか?」


「魔族と戦えるだけの高い魔力量と、勇者と共に戦った英雄……十分王配にふさわしいだろ」


「うーん、そういうものかな?」


 まだ魔王も有力な魔族も倒していないし、倒せそうにもないけど。戦ったうちに入るのか?


「殿下が多くの高官と関係を持っていることはその息子たち、つまり王配にふさわしい身分の男たちはみんな知っているってことさ。

 必死で戦わされての褒美があの女との結婚? 冗談じゃない。

 だがワレンボーム侯爵はたぶん共和国では長居できないので早く帰ってしまう。そうすると国で私抜きの婚約を締結する可能性もある。その前に魔法契約込みの婚約をすれば勝手に話は進められない。しかも相手は他国の次期伯爵だ。フィリシア嬢を暗殺して話をなしにすることも難しい」


 おいおい、思ったよりエグイ内容だったよ。しかもそのデメリットをフィリシアに話していないじゃねーか。まぁ言ったら断られるかもしれないがな。



「わかった、よく考えた上の行動だったのか。彼女に同情してかと思った」


「まさか! 後妻に家を乗っ取られそうな娘なんか掃いて捨てるほどいるさ。むしろそうなって何年か経つんだから、彼女は社交をしてだれか後ろ盾を見つけるなり、なんなりしないといけなかったんだ。男とは限らず、侯爵夫人以上ならばそれでよい。

 だから帳簿付けは出来そうだが、社交はあまり得意でないと見た。

 あと容姿だね。王太子殿下と全く違う可憐な姿はレリに近いから説得力がある。フィリシア嬢の方がずっと美しいが」


 まぁあの唯美主義そうなビアンカの好みだからな。

 ベリンダ嬢も、フィリシア嬢もかなりの美少女、いや成人しているから美女だ。


「レリはそういうところがきちんとしていた。社交界で生きるというよりは研究費欲しさだったけれど」


 ああ同じ魔法オタクで仲良くしていたんだったな。子爵家ならやはり研究費は不足するだろう。カーライル社にもスポンサーになって欲しいといろんな大学や研究者がプレゼンに来ていたよ。


「それで侯爵に聞かせた、愛していない発言を否定できる。彼女を安心させるために言ったのだとな」


「貴族としての立場を守りつつ、恋愛もしていると切り抜けるのか……。

 それはそうと何で団長は先に帰るんだ?」


「共和国は貴族の一部を打ち倒して、平民も政治に参入することになったのだ。しかも獣人やドワーフもいる。さっきの穢れ者発言を聞いただろう? 

 異世界から来た君のことも差別するんだ。他のヒト族も見下しているに違いない」


「ああ、そうだろうな」


 獣人とかドワーフとかに会えるのか……ファンタジーが大好きな萌が聞いたら喜ぶだろうな。ああ家族に会いたいなぁ。帰りたい。やっぱり俺、元の世界に戻ってみんなと暮らしたい。



 そうして明日にはローワン共和国に入ろうかという晩に、団長が食堂で失言を繰り返した。別のパーティーにいた獣人に汚らわしいと唾を吐きかけたのだ。

 さすがにこれは相手や俺だけでなく、エリザが怒った。


「いいかげんにしなさい! 汚らわしいのはあなたのその性根です‼

 聖女の名において、あなたをこのパーティーから追放します。さっさと出て行きなさい‼‼」


「殿下! 私を追放するということは国を裏切ることですぞ‼」


「いいえ、今日という今日は許しません。

 あなたこそ、わたくしたちの面汚しではありませんか!

 もうあなたの宿賃も払いません。さっさとここから出て行きなさい‼

 ユーダイ! この者を宿から出すのです」


 ウチのパーティーは勇者()ではなく、(つけてないけど)隷属の腕輪の権利を持ったエリザがリーダーなのだ。ほとんど俺とゲオルグの言うことを聞いてくれるけどな。

 騎士団長に従うと金がいくらあっても足りないのだ。魔獣と魔族との戦いというよりは、魔獣と金稼ぎの戦いだったよ、ホントに。

 かと言って勇者パーティーなので、目の前で起きた事件を見過ごすわけにも行かないし、本当に大変なんだよ。


 俺はまるで隷属の腕輪をしているように騎士団長を宿から追い出し、俺たちに近づけないよう魔法を掛けた。


「丸腰じゃヤバいよな。コレ持って帰れ」


 俺はビアンカが捻じったヤツの剣を投げ渡した。切れはしないが棍棒ぐらいにはなるだろう。そうしておっさんは俺たちのパーティーから追放された。

 路銀は……みんなで稼いだ資金は6割がパーティー資金。後の4割を4人で割って、1割ずつを各人に分配していたから多少は持っていただろう。

お読みいただきありがとうございます。

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