第63話 勇者パーティーメンバー3
騎士団長は剣聖として、ゲオルグは賢者として紹介され、顔合わせのため4人で控室に入るとエリザベートは俺にキレ散らかした。
「あなたのせいよ! わたくしがどうしてあなたなんかと婚約なんか…‼」
明らかに自業自得だと思う。俺だって相手を選べるなら、こんなクソみたいな国の女なんて選ばないね。でも今言っても始まらない。
「あなたは女性ですから3人の中の誰かと婚約しなければ醜聞になってしまうからではありませんか? 騎士団長は既婚者ですし、ゲオルグ殿は婚約者でもいるんじゃないですか?」
「そんなこと聞いてるわけじゃないわ‼ どうしてカイルが勇者パーティーから落ちるのよ」
それこそ本当にアンタのせいだよ。
「それはご自分の行動のせいだと思われますが? エリザベート殿下」
そう言ったのはゲオルグだ。正直今回初めて喋るのでどんな奴なのか知らなかった。
「わたくしが何をしたって言うの⁈」
「カイルロッドへの好意を隠さず、ご自分の力を王太子殿下に見せつけておいでだったじゃありませんか。僕だってワレンボーム閣下よりカイルの方がよかったですよ。偉大な騎士団長とご一緒だなんて緊張するじゃないですか!」
「イヤいや、ゲオルグ=オーレンドルフ小伯爵。お互い仲間ですから慣れていただかないと困りますぞ」
「ありがとうございます。残念ですが小伯爵の称号は今回の選出で消えてしまうようです。弟が跡継ぎになることが決まりました。僕が魔王討伐で帰れるかどうかわからないのですから文句も言えません」
「生きて戻りましょう。そうなれば陛下は必ず新伯爵家を立ててくださいますとも。では顔合わせもこのくらいで、急な話でこちらも準備に追われておりましてな」
そう言って騎士団長は部屋から出て行った。
「殿下、聞きましたか? ワレンボーム侯爵も今回の件は寝耳に水だったのですよ。これも皆あなたのカイルへの愛情のせいです」
「わ、わたくしはただ騎士である方々が心配で……幼馴染ですもの」
「ではなぜ彼だけ癒しを与えたのですか? この僕も同じ立場ですが?」
「わたくしが何でお前なんかを癒すのよ! 昔から口うるさいばっかりじゃない!」
ゲオルグはカイルと同じく、エリザベート王女の遊び相手だったらしい。正しくは魔力が強くて周りの大人へ手を焼かせる問題児に付けられたお目付け役だったそうな。癇癪を起して暴れると周りを威圧してしまうので、同じように魔力が強くてもコントロール出来ている子どもを配することで魔力の扱いに慣れさせようとしたのだ。
それがこのゲオルグのことで、彼一人というのは王女の外聞が悪くなるので年が近く家柄もよく体力のある者としてカイルロッドが選ばれていたらしい。
目に見えるようだ。王女が暴れて、彼が嫌味を言い、カイルが宥めるという構図が。
「しっかりと反省してください。今度のお目付け役は僕と違って甘くないですよ」
そう言われてエリザベートは唇をキュッと引き締めたが、そのまま出て行ってしまった。
「やれやれ、あの方は昔からかわらないですね。
申し遅れました、勇者ユーダイ様。僕はゲオルグ=オーレンドルフ。伯爵家の嫡男でしたか今回の件で下ろされることになりました」
「お顔だけは拝見しておりました。最初の召喚の日にもいらっしゃいましたよね」
「おや目ざとい。僕は召喚の間の末席に居りましたのに」
「でも魔力供給する側ではなかったようですね」
「はい、あの転移陣の必要魔力を少なくする研究をしておりました。伯爵家の跡継ぎだったのでかろうじて供給側に行かなくて済みました」
ではコイツも俺の敵の1人ではないか。
「僕もあんな非道な真似をしたくなかったですよ。でも婚約者が人質に取られましてね」
「ほう、そうですか」
「子爵家の三女でね、あの日の召喚の魔力供給側に居ました。僕は王太子殿下に泣いて頼んだのですが、魔力が足りないから下級貴族からも魔法士を出すと言われてわざわざ充てられたんです。あの魔法陣の研究は彼女の命乞いのためだったのに」
「それで亡くなって、俺を仇だと言いたいのか?」
「まさか! あなたは明らかな被害者だ。この僕と、いやレリアーヌと同じね」
彼の婚約者のレリアーヌ嬢はこの国の貴族女性としては魔力量が多く、第二王女と同じくテレジアにとって忌々しく思われていたのだという。それは彼女たちのせいではなく、魔力を継がないような結婚をしてきた王家の責任であり逆恨みでしかない。
「僕の家は王家と……反目といいますか方針が違ったのです。魔力量の多い女性との婚姻を続けて魔力を継いでいたのです。だから僕もそれなりに魔力があります。ただ魔法士というより、研究特化の魔法師です。戦闘向きではありません」
おいおい、そんなメンバーで魔王討伐をするのかよ? この国は何を考えているんだ?
「魔王討伐はいわば持ち回りでやっているのです。200年前は隣国で、100年前は他の国で。我が国は魔力量の乏しさからのらりくらりと断ってきましたが、とうとうやらされる羽目になりました。それで魔法陣の省力化に挑み成功した。という触れ込みで周辺国から平民の魔法士を金で募って集めました。当然この国の魔法士もです。ですが省力化は成功していたものの、元の魔法士の魔力量が少ないと生命力まで使うのです。皆が強い魔法士である方が生存率の高いことは伝えたのですが、聞いてはもらえませんでした」
つまり必要魔力量200を100にしたところで、それ以下の場合は命を削りそれ以上ならば生存できるというものだったようだ。その婚約者は110ぐらいだったそうだが、周りの魔力が少ないため代わりに供給する羽目になり、結果死んでしまったそうだ。
「ですがこうして勇者召喚は成功し、わが国の面目は保たれました。それ以上の成果はついでなんです」
ついでって、そのために俺は無理難題な魔法契約を結ばされたのか?
「なぜそんなことを俺に言う?」
「僕は魔法契約を結ばされていて、あまり多くは語れません。だからどんな立ち位置なのかわかっていただきたかったんです」
つまりコイツは何かの密命を負っているということだ。言えないような何かだ。
「……俺の暗殺か」
彼はニッコリした。
「あまり戦闘は得意ではありませんが、死に物狂いでなら何とかできるとでも思っているんじゃないでしょうか。国としては面倒な人間を合法的に排除する良い方法だったのでしょう」
エリザベートはテレジアを脅かす存在、ゲオルグは王家に反目する家の出で婚約者を奪われて恨んでいる。俺は成功すれば異世界へ戻る契約をしている。
「騎士団長は?」
「さぁ? あの方は陛下の懐刀なんですが、ちょっと増長しすぎたんですかね? あるいは……」
それ以上は言わなかったが、彼こそが真の暗殺者で、俺たちの行動報告も兼ねているのだろう。
こんな不穏なメンバーと共に旅をするのは不安だったが、クソな国のすることはやはりクソということだ。
お読みいただきありがとうございます。
100年前に魔王討伐をしたのがバルティス王国です。ユーダイを召喚した国とはかなり離れています。




