第54話 ガチャ
俺の義祖父であり、すんげぇムカつくクソジジイはニヤニヤしながら話を続けた。
「簡単に説明すると、俺は子どもの頃に以前誘拐されかけたことがある。旅行で日本に来て、こっちの友人と一緒にいる時に、そのバスごと異世界転移させられそうになったんだ」
いや、意味わかんないですけど?
「その時俺以外の全員が死んで魂を連れていかれたが、俺は生き残ったため連れていかれなかった。異世界に行くためのチートを与えられた状態でな」
「そんなラノベみたいなこと信じられるかよ!」
「まさにラノベだ。俺の友人たちはこの小説に書かれている」
そう言って彼はタブレットに、ある小説サイトの一作品を表示した。書籍化もしていない特別人気も出なかったラノベのようだ。しかも作者が途中から書かなくなっていた。
こいつら、マジで狂っているのか?
「狂っていない。ああ俺はその時相手の感情や思考が読み取れるようになっていてな。お前が今考えたことぐらいお見通しだ。それとも全部丸裸にしてやってもいいぞ。お前が信じるまでな」
そういってクソジジイは俺の頭を掴んだ。
「やめろアンディー。ユウに危害を加えるなら、僕は協力しない。
僕が後押ししなければ、エリーゼがお前の能力を受け継がせるはずがないからな。
ユウ、こいつはその思考が読み取れるがゆえに、ジャックやエリーゼ以外の人を信じることが出来なくなっているんだ」
ってかおばあさまが反対するようなことなのかよ。ますます聞きたくなくなってきたな。
「旦那様。他にエリーゼ様を守れる方はいないのですよ?
ユウダイ様、私も以前任務に失敗し敵に拘束されているところを旦那様に助けていただきました。今はご理解いただけなくても、どうか話を聞くだけでも聞いていただけませんでしょうか? どんなに愚かで荒唐無稽な話でもです」
祖母を守るためだとコルドにまでそう言われて、仕方なくもう一度席に着くことにした。
「セバス、お前愚かは言いすぎだろ?」
義祖父はコルドのことをセバスチャンと呼ぶ。マンガやラノベの執事がセバスチャンだからだそうだ。いつの時代だよ。
その話は思ったより長くてうんざりしたが、簡単に言うと「ある悪い女神に友人たちの魂を誘拐されたが、なぜか義祖父だけチート能力を残してこの世界に置き去りにされた。だけどそれは悪魔の罠だった」という話だった。
その中で重要だったのが義祖父に与えられたチートだ。1つは先ほどの読心術。そしてもう1つが『ガチャ』だ。
「『ガチャ』は基本的にほぼつまらないものしか出ない。それでも60年以上毎日引いているとやはり当たりが出てくる。
10連ガチャチケットだったり、シルバー、ゴールド、プラチナ確定チケットだったりだ。ワンランクアップチケットというのもあった。しかもこれが同時に使うことも出来る。つまりプラチナ確定チケットにワンランクアップチケットと10連ガチャチケットを合わせて使うとプラチナよりももっと貴重なものが10回もらえるんだ。
しかもある程度実績が出来ると、不用品が売れるマーケット機能が開いて、そこで俺は離れ離れになった友人の消息を掴めたのだ」
不用品とはただの木の棒だったり、女性ものの下着(パンティーやブラジャーが多いらしい)だったり、おにぎりなどの食料だったりする。特に下着や食料はとてもよく売れる。なぜなら異世界では手に入らないものだからだ。
ジジイの転移した友人の中に『簡易マーケット』を持っているヤツがいて、仲間の女性に頼まれて買ってくれたのだという。
話し合いは出品者と購入者間のメッセージのやり取りを使っていたそうだ。
『簡易マーケット』は出品することは出来ず、購入しかできない通常の誰でも使えるスキルらしいが、ジジイがもらったものは違う。
神格を持つ管理者しか使えない特別な『ガチャ』で開いた、ありとあらゆる異世界に通じた『オールラウンドマーケット』なのだそうだ。だから出品も出来れば購入もできる。
自分たちの世界では手に入らないような貴重な素材やスキルが下着やおにぎりで買える。不用品が有用品になったのだ。例の10連ガチャチケットやワンランクアップチケットも手に入る。プラチナチケットはさすがに手に入らなかったが、ゴールドくらいならたまに見かけるという。
どうもこの『ガチャ』を与えた悪い女神は神の位を簒奪した成り上がり者らしい。このスキルの特異性がわからず、使用したこともなかったんだそうだ。それで面白半分にジジイにつけたのはいいが、コピーではなく本物を授けてしまった。だから破格の性能を誇っているのに、穢れていない状態で手に入ったのだそうだ。
「俺は『ガチャ』の景品で、品物だけでなく様々なスキルも手に入れて来た。さっきの『転移』もその1つだ。重複して出ることもあるので、他人に譲渡も出来る」
同一スキルがたくさん集めて使うと、スキルが成長していく。中でも重宝したのは『鑑定』だったそうだ。
ジジイはチケットの重複使用で手に入れた『鑑定』スキルを成長させ、かなりのレベルまで育て上げた。『神眼』までにはしなかったそうだ。ジジイの体が人間なので、神の領域の力を得ても使えない。だから余っているというのだ。
この力は実生活にも役に立ち、商品の買い付けだけでなく、人間の成長具合や忠誠心も見抜けるのでカーライル社に入社させるときに使っているそうだ。だからみんな優秀な人材ばかりなんだな。
その優秀な1人、ここにいるコルド老人にもスキルを分け与えたそうだ。
「私は『身体強化』と『気配察知』と『隠蔽』をいただいております。ただこれ以上はスキルを得られませんでした」
「僕は何1つ使えなかった。エリーゼもだ」
コルドと大伯父も重ねて言う。いやホントにこいつら正気なんだよな?
しかも大伯父は使ってないのにあんなにチートなのかよ。
「エリーゼやアルが使えないのはわかる。2人の魂の格が高いからだ。特にエリーゼは今すぐにでも神に昇格してもおかしくないほど光り輝いている」
大伯父がイヤそうにジジイを目を細めて見て、美しい顔を苦しそうに歪ませた。
「あの優しい子に、これ以上そんな重荷を背負わせないでほしいよ」
「エリーゼはお前とグレース、そしてユウとモエさえ絡まなければ、その辺の女よりはるかに強いぞ」
「わかっているが、強いからと言って傷つかないわけではない」
俺はいい加減我慢が出来なくなった。
「もういい加減にしてくれ! そんなこと信じられない。ちゃんと証明しろよ‼」
「そうか、ちょうどいい。どんなスキルが欲しい?」
はぁ? 急にそんなことを言われても思いつくか! しかもそれを貰ったら断れないだろ‼
「今は思いつかない……」
「ああ、アルより強くなるのは難しいな。だが殺し合いなら確実に勝てるぞ。アルにお前を殺す意思は全くないからな」
「俺を犯罪者にするつもりかよ!」
そんなことをしたら、絶対祖母を悲しませる。絶対したくない!
別に俺は大伯父が嫌いなわけではない。ちょっとコンプレックスを刺激されるから苦手なだけだ。
こんな残酷なことを気軽にポロッと言うんだよ。このクソジジイは!
だから信用できないんだ、こいつだけは‼
そう俺も『重度のグランマコンプレックス』だ。俺や萌の幸せを祈ってくれる彼女のために何か手助けがしたいのだ。
お読みいただきありがとうございます。




