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What‘sawonderful another world ! ~なんて素敵な異世界なんだ!~  作者: 詩森さよ(さよ吉)
第2章

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第53話 アンドリュー=カーライル


 義祖父アンドリュー=カーライル。


 俺の祖母であるエリーゼの現夫で、大伯父のアルブレヒトの親友ってことになっているが俺から見たら2人を利用している悪党にしか見えない。


 祖母たちは子どもの頃からの天才音楽家でありながら、驕ることなくたゆまぬ努力を惜しまない勤勉さと贅沢を好まない清廉さ、信頼を裏切らない誠実さ。そして容姿だけでなく心根まで美しい。だから世界中にファンがいる。大変な篤志家でもあって、彼らに賛同するヒトも多い。

 つまりあのうさん臭いヤツのイメージアップに使われているのだ。



 まずヤツの事業であるカーライル社の事だ。

 大学卒業後すぐに起業し、ヤツが資金を出して始まったIT会社だ。そこで祖母の夫(つまり祖父)のジャック=マクリーンに研究をさせたことから始まる。


 この時点からすごく怪しい。

 まず起業するだけでも金がかかるのに、新技術の資金を提供するなんて一体どれだけ莫大な金額かかると思う?

 そんな大金をどうやって大学を卒業したばかりの若者がそれを用意できたんだ?


 俺は後ろ暗いことをやって得たと思っている。

 例えばハッキング行為による情報操作だ。これにより企業の機密情報を手に出来るし、株の価格操作も可能だ。もっと悪辣なこと、違法送金もあり得る。大物政治家や大企業が持っている裏金をこっそり送金して手に入れるのだ。


 なぜこんなことを思うのかというと、起業していたってすぐに軌道に乗ったわけではないはずだだし、ちょっとしたソフトを出すくらいの中堅企業だったんだ。

 それらの製品も悪くはないが、それよりも上手く公共事業の入札に成功しているのだ。それがいつもただの幸運というのにはあまりにハマりすぎている。


 そして祖父の開発した『生体コンピュータ』は急激な大躍進したのだ。



 もちろん問題もあった。『生体コンピュータ』は遺伝子を半導体に置き換え、脳に情報処理させるという画期的な物だ。でも遺伝子を自由に改変させるという技術も含まれていたことから、別の形で利用したいという依頼があった。


 軍事利用だ。肉体や頭脳の能力アップ……リアルアベンジャーズを作れるのだ。

 もちろん祖父もクソジジイも断った。だがそのせいで祖父は誘拐され、殺害されてしまったのだ。

 そのときの祖母の苦しみは今でも影を落としている。

 

 それからどんな方法を使ったのか知らないが、ジジイは大国の意向を押さえて、その技術を『生体コンピュータ』と一部の医療にのみ使えるように国際条約を結ばせた。


 その後残された家族である祖母と母グレースを自分の家庭に入れて、祖父が残した『生体コンピュータ』の権利を譲渡させてしまったのだ。祖母が言うには持っているだけで危険だからだそうだがそれだけとは思えない。

 とにかく祖父の技術のロイヤリティーがすべてヤツの懐に入ってしまったのだ。


 祖母の再婚理由はさっき大伯父の話で違うと初めて知ったが、俺は今でも大伯父を人質に取られてやむなくだったんじゃなかろうかとどこか思っている。

 なぜならアイツは明らかに堅気の人間じゃない空気を醸し出しているからだ。


 オックスフォード卒の英国貴族(紳士というとジェントル階級に落ちたことはないと訂正される)と言われるとそうとも言えなくもないが、それにしても剣呑とした空気がぬぐえない。

 とにかく鼻持ちならない、感じの悪いヤツなのだ。



 俺がこのことを調べ出したのは祖父ジャックのことが知りたかったからだ。

 だって『生体コンピュータ』の生みの親が俺のおじいさんなんだぜ?

 普通知りたいと思うよな。むしろ萌が「へぇ」だけで済ませた方が驚いたわ!


 でも祖母や大伯父は悲しいことがあったから話したくないと言うし、母も聞かされていないという。

 だったら自分で調べるしかないと思って、そうしているうちに祖母たちとの関係が絡んできたのだ。祖父と祖母の馴れ初めにヤツが関わっているからだ。


 なんでもジジイが親友である祖父の卒業パーティーのダンスの相手に祖母を推薦したんだそうだ。10代のおばあさまはお人形さんみたいでめちゃめちゃかわいかったから、きっと一目ぼれだったんだろうな。



 そんなジジイが祖母と大伯父と知り合ったきっかけが、ヤツが2人のファンだったからだ。でもさ全く接点のない1ファンと、子どもながらスターピアニストと作曲家が普通仲良くなるか? レナだって20年以上ファンやってってやっと声を掛けてもらえたんだぞ。


 それが唐突な虐待女からの救出劇だ。

 普通に考えてみてくれ。当時14歳と10歳だった2人を助けたのが、16歳の子どもっておかしいだろうが?

 どうやって虐待女が覚せい剤中毒だったり、犯罪組織とつるんでいることを見つけ出したんだよ? そんな情報があれば大伯父だけでなんとかできたはずだ。


 これも俺の『アンドリュー=カーライル、ハッカー説』の元になっている。


 他にも粘着質な記者や悪質な嫌がらせをするライバル業者など、面白いように邪魔者が消えている状況もあって少し怖くなった。うまくいきすぎる入札やライバルの出し抜き方。なんかヤバいものしか感じない。


 しかもそれを感じた時に俺のことを冷たい目で見てたんだよな、アイツ。カーライル社の資料室だったからもあるんだけど。

 あの時は命の危険を感じるくらいだった。



 俺がアイツを怪しんでいるのはそれだけではない。

 祖母は権利を譲渡するときに条件として世界に貢献すること。もっと簡単に言うと危険な目に遭っている子どもたちを救って、彼らに教育や進路の手助けをすることをあげていた。莫大なロイヤリティーの使い道を私腹を肥やすことにさせないためだ。


 条件通り、ヤツは孤児や不正労働させられている子どもたちを救い、教育を与えた。病気で苦しんでいる子どもたちのために薬も開発した。そのために大学や病院も作った。まぁここまではいい。

 そこで育った優秀な人材を私物化したのだ。祖母のためだと言ってな。

 助けられた子どもたちの祖母への憧れや忠誠心を利用して、奨学金の恩と合わせて雁字搦めにしたのだ。

 

 カーライル社で働けると喜んでいるヒトもいるけど、入ったらみんなものすごく大変なのだ。福利厚生や条件はホワイトだけど、仕事内容は相当なブラックと見た。だって誰も詳しい仕事内容を教えてくれないからな。


 とにかく俺の義祖父アンドリュー=カーライルは敵に回してもいけないが、油断してもいけない男なのだ。

お読みいただきありがとうございます。

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