第38話 ユーダイ様の見立て
会議室の準備が出来たので移動することになった。ねぇわたし帰っちゃダメですか?
「だいたいのことはレナから伺いました。オフィーリア様とその騎士エヴァ様でよろしいですか? できれば直答をお許しいただけると助かるのですが」
「ええ、構いませんわ」
これからはオフィーリア様が話の主導権を握るようだ。
「俺の記憶が確かなら、西方にあるレヴァント王国にオフィーリアと言う名の王女様がいらっしゃるそうですが、あなた様のことでよろしいですか?」
彼女はちょっと息を飲んだが、すぐに王族らしく笑みを浮かべた。
「レヴァントのような小国のことをご存じとは思いませんでした。その通り、わたくしが第3王女のオフィーリアです」
「一時ですが俺を召喚した国で公爵位を賜っていました。その時にこの世界の王族について学んだだけです。ただ王女だった妻を失くして、爵位と国籍を返上しました」
オフィーリア様はまだ10歳にもなっていないようだが、10年前に来て5年前に魔王討伐している間には生まれてはいるよね。ってかわたし関係ないよね。帰りたいです。
「今レヴァントでは王位簒奪で混乱されていると聞いております。そのためこちらに出てこられたのですか?」
「そんなことまで……ええ、そうです。わたくしたちは来るべき日まで待機するよう、父に命じられました」
「そういう場合、信頼できる親戚筋の国へ預けられるのでは?」
「わたくしは側妃の子で、母はレヴァントの侯爵家の出です。それで頼る者もないまま、こちらへ参りました」
「それだけではないでしょう? レナの話ではあなた様は先見をなさるとか。それは聖女の権能の1つです。お父君である国王陛下は聖女信仰の強いこの国へお預けになったのではありませんか?」
「特に外交を経て来たわけではないのです。わたくしたちは独立した者としてこの国で生きて行こうと考え、冒険者を目指しています。ですがわたくしが未成年であり、エヴァ1人に負担が大きすぎます。それでいずれかのクラン所属になりたいと申し出ると、1つ以外は不可と言われました」
「その1つが気にいらないと」
「はい、『女神の勲し』というクランなのですが、わたくしの先見ではとても危険な目に遭うと出たのです」
「失礼ですが内容を伺っても?」
「そのっ……わたくしとエヴァを……はっ、辱めるようなことです」
「なるほど、それは行く気になれないとうことですね」
「ええ」
そんなところを紹介する冒険者ギルドって何?
でも根拠は彼女だけが見える先見だ。ギルドは知らぬ存ぜぬを通すのだろう。
「まぁそう言うところだから、身元もハッキリしない怪しい人物でもクランに入れるのでしょうね。俺には到底真似できません。そして王女様とその腹心の女騎士も俺のクランには入れません」
「才能があれば入れると聞きました」
「ああチャズから聞きましたか? それは正しくありません。あなた方は俺が決めた基準から外れている。ただそれだけです」
「王侯貴族だからですか?」
「それもあります。はっきり申し上げましょう。俺はクラン員を自分の家族と同等に大事にします。だからそのクランより大事な存在のある方は困るんです。あなたはレヴァントのために生きている、違いますか?」
「確かにその通りです」
王女様はレヴァントのためにならないと判断したら、わたしたちを裏切る。ユーダイ様はそう思っているんだね。
「俺の見立てを聞いてくれませんか?
あなたは教会に入るべきだと思いますよ」
「この国の国教会に入れというのか?」
ずっと黙っていたエヴァが急に怒り出した。
アンタは黙ってて! 話が進まないから。
「そうです。この国は神と精霊に守られた国です。そして聖女の力にも守られています。そのため聖女を尊び、王族との婚姻を法によって定めています。オフィーリア様が聖女になれば、相手によっては王妃に遇されます。あなたのご身分ならそれはかなり高確率です。来るべき時までの待機というのはただぼんやり生き延びろということではないはずです。あなたに王妃となって、母国を助けてほしいということではありませんか?」
「そ、そんな……わたくし、国に婚約者がいるのです」
「この国難に婚約者とそのまま結婚できると本当にお思いですか? しかもあなたはまだ10歳にもなっていない。今は本人と親しくても、婚約者の家が敵になることだってありえるのです。それにただ生き延びさせるだけなら、もう少し護衛や金銭を与えるはずです。でもあなたたちは困窮とまではいかないものの、働かないといけないと思っている。でも王が教会入りを望んでいたとしたら?」
「お父様はそんなことおっしゃらなかったわ」
「そうですか、では続けますね。教会では個人のものを持つことが許されません。もちろん一部の王侯貴族の場合は別ですが、あなたの場合その身分を保持したままだと危険がある。だから金目のものを与えず、平民枠での教会入りを望んだ。あなたの身分を明かすものがモノではない何かがあるのでしょう。血で判定するとか、王家の方のみに現れる身体的特徴とかです。それについては伺いません。あなたが王妃となったその暁には、国王陛下はご自分との血縁関係を明かすのでしょう」
ユーダイ様の話をオフィーリア様もエヴァも否定しなかった。できなかったというのが正しいだろう。
「全くお金を渡されなかったわけではありません」
「それは当然でしょう。多少の寄付がなければ、教会だって快く受け入れてはくれません」
「そ、それではわたくしはどうなるのだ?」
エヴァが焦ったように口走る。
「そうですね、あなたは騎士で強いから、勝手に戻ってくるだろうってことではないですか? 聖女の訓練は厳しく、専属護衛などつけてもらえません。聖女になれば聖騎士がつくことになりますしね。でもエヴァ様では聖騎士になれないと思います」
「な、なぜだ!」
「女性だからです。この国では聖女と聖女見習い以外には、その身の周りの世話をする修道女しかいません。聖騎士は男性しかなれないのです。ただエヴァ様がこれから修道女になられても修行歴が浅く階位が低いため、聖女付きにはなれないでしょう」
わたしもそう思う。エヴァはお姫様の護衛にしては迂闊で口が軽い。それなりには強いんだろうけど、失っても惜しくない人材と見なされたのかもしれない。
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