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What‘sawonderful another world ! ~なんて素敵な異世界なんだ!~  作者: 詩森さよ(さよ吉)
第一章

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第27話 説得

前半はレナ目線、後半はユーダイ目線です


 赤ちゃんドラゴンは白銀の鱗にサファイアブルーの瞳の美しい子だった。何てキレイと感動もそこそこに耳に入ったのは舌打ちだった。


「チッ、レナだったらよかったのに」


「そんなこと言っている場合じゃないぞ、ユウ」


「ああ、発狂し始めたな」


 発狂? 親が? なんで? 卵は無事なんだよ?


「雛がウィルを親として認めてしまったから、心話が途切れちまったんだよ。母ドラゴンは卵を死んだと認識している」


「わたしを親だと思っても困るよ!」


「いや、レナは弱すぎるから生まれたての雛でも誤認しない。そう思って君の方に誘導したんだが、直前にまさか避けるとは……こうなったら誤解を解くしかない」



 そう言ってユーダイ様はわたしの襟首をつかんで、窓を開けた。


「な、なにを?」


「悪いけど君のチートを使わせてもらう。

 ウィルは卵を、ジャッコはレナの護衛、あとはエンシェントドラゴンの宥め役だ。全員レナに掴まれ!」


 銘々がわたしの腕や足に掴まるとユーダイ様はその場の窓から飛び出て、すごいスピードで真上へ飛び上がった。途中で彼にグイッと前に突き出されると何かを通り抜けた感じはあった。


 まさか『聖女の結界』? なんで抜けられるの?

 チート使ったらダメなんじゃないの?



 そして気が付くと目の前にドラゴンの顔があった。デカいし、近い!


「キャアアアアア!」


 思わず叫ばずにいられなかったが、すぐさまユーダイ様に片手で口を塞がれた。


「卵は無事だ! 頼むから落ち着いて話を聞いてくれ!」


 そう言っても怒り心頭に発したエンシェントドラゴンには全く聞こえていないようだ。こちらに向かって口からとんでもない量の炎を噴き出してきた。


 それと同時にユーダイ様は掴んでいたわたしから手を離した。何が何だかわからず、混乱が止まらない。あまりの衝撃に叫ぶことも出来なかった。

 そのまま落下したが、いつのまにか巨大な虎に戻ったジャッコさんが背中で受けてくれた。


「とりあえず俺の背中で休んどけ」


 ショックが大きかったんだろう。最上級の虎の毛皮の上でわたしは失神した。




 ◇



 レナのおかげで『聖女の結界』を抜けた俺たちは、早速母親であるエンシェントドラゴンの説得に当たった。まあ全然聞いてなかったけどな。とにかくこいつの攻撃を俺たちに逸らして、バルティス王国に傷をつけないようにするだけだ。攻撃されても避けて、その魔力を中和する。疲れて闘争心が鈍った時にうまく説得するしかない。


 本来なら孵化した子と母ドラゴンとの心話を途切れないようにしないといけなかった。そうすれば今のように怒りに任せて我を忘れる状態にならなかった。

 でもあの中で一番魔力量の多いウィルが見られてしまった。ちゃんとレナに説明しなかったのが敗因だな。まさか顔を背ける余裕があったとは……。


 勇者である俺にとって、このエンシェントドラゴンを殺すのは簡単だ。

 でもそうすると世界の均衡が崩れる。


 俺はこの世界を支える魔素を産んでいた魔樹を焼いてしまった。だから新しい魔素は今生きている魔法生物からしか生み出せない。

 魔法生物は基本的に魔法を使っても一晩寝ると自分の魔力が元の量まで戻っている。新たな魔素が生まれないこの世界で、人間たちのささやかな魔力だって重要だ。


 こんな状況でエンシェントドラゴンほどの大量の魔力を持った生物を殺すことは世界に与えるダメージが大きすぎる。しかもここにいるのは雌だが、番だから雄もいるはずだ。復讐に来る可能性もある。それも返り討ちにしたら2匹もこの世からいなくなるんだ。

 絶対に殺すわけにはいかない。


 ビアンカ、フィレス、エディも俺の意を汲んで、というよりこの世界を守るために動いてくれている。どんなに軽そうに聞こえるオネエ言葉でも、口や態度が悪くても、口数が少なくても、魔族ほど世界のことを大事にしている種族はいない。だからドラゴンブレスを中和し、怒りを発散させるように暴れさせつつ、致命傷にならない程度の攻撃を繰り出している。エンシェントドラゴンの方も防御力がバカ高いから全然疲れてなさそうだけど。


 レナは……1メートルぐらいしか落ちてないけど、この高さならまあ気絶するか。でもドラゴンの威圧でじゃないんだな。この肌を刺すような威圧感よりも、落下の衝撃の方が大きいって、マジチート能力だわ。俺も欲しいぐらい。

 でもこの能力は別の見方をすると、魔法攻撃に対してとても鈍感になるということだ。どこに落とし穴があるかわからない。



 空が明らんできた。そろそろ夜明けだな。さすがのエンシェントドラゴンも疲れが見え始めている。そろそろいいか。


「ウィル、説得を頼む」


「わかった」


 まだ卵の殻をつけたままの雛ドラゴンを抱いた俺の息子が大きく息を吸った。人間に見られてもいいようにくすませた金髪と茶色の瞳が黄金に輝く。彼は全属性だが主属性は光。祈りの力も強いため、魔族には珍しい聖属性なのだ。


【エンシェントドラゴンよ。余の言葉に耳を傾けよ】


 その言葉と同時に全員が攻撃を止めた。母ドラゴンもゆらりとウィルの方を見る。


【お前の子は余が保護した。死んでは居らぬ】


 子どもを見て、母親は甘い鳴き声を出す。子どもを認めたのだ。


【ただ生れ出た時に余を見てしまった。今こやつの親は余である。だが其方のことも愛おしく思っている】


〈おお、わたしの坊や〉


 彼女がドラゴンの言葉で子に呼び掛けると、子の方も甘えるようにピィピィ鳴いた。


【この子はセレスティリュス。余の子であり、其方の子だ。子と共にこの地を去り、育ててほしい】


〈それが魔王陛下の思し召しなら〉



 そうしてウィルが両手に子ドラゴンを乗せて差し出すと、母ドラゴンは巨体なのに器用に首の後ろを口に咥えて引き取った。彼の手の中には卵の殻だけが残っている。


【セレスティリュスよ。そのうち会いに行くから、母と共に行け。達者でな】


 そう言われて子どもは少し悲し気に鳴いたが、そのまま母親と共に飛び去って行った。

 姿が見えなくなるまで見送ったウィルも魔王モードを解いて、俺の息子としての地味な姿にもどした。


「ふぅ、終わったな。お疲れ、ウィル」


「ホントだよ。余なんて初めて使ったし。それだったら俺の方がよかったな」


「子どもっぽく聞こえるように僕って言わせてたからな。でも今日から好きに言うといいさ」


「じゃあ、俺で。でもなんで今日からなの?」


「お前がこの世界で初めて『魔王』と名乗りを上げた日だからな」


 この世界の最後の『魔王』。俺が魔樹を燃やしてしまったせいで、次は現れない。

 俺は息子に大きな重しを負わせてしまったのだ。



「これからどうするの? 父さん」


「思ったより時間がかかっちまったから、結界を抜けるのは止めにして門から入ろう。フィー、お前の闇魔法でちょいと門番の記憶を変えてくんない?」


 闇属性は心に深く作用する。記憶操作もお手のものだ。俺たちが正規の手続きを経て、外に出たことにするのだ。


「いいけど、さっきの結界を抜けたのはどうするのさ」


「レナのスキルによって破らずにすんだし、そっちは下手な小細工しない方がいい。それを感知する聖女がいないことだしな」


「わかった。じゃあ近くの通行門まで転移して」


 フィレスがそう言って抱き着いてきて、ビアンカとエディもそれに倣った。ジャッコは人間に擬態して、レナを背負ってウィルの手を握り、空いている手を俺が握った。


 こいつらは必要最低限にしか魔力を使わない。そのかわりに世界の保持や眷属たちが生き永らえるのに力を使っているのだ。

 だから俺の体が生み出す魔力を貪られても、俺はそれを甘んじて受ける。それが知らなかったとはいえ、この世界を破滅へと導いてしまった俺の役割だ。


「行こう。これからはこの国が俺たちの国だ」


 このバルティス王国が俺たちにとって最良かはまだわからない。でもこれは最初の一歩なのだ。


お読みいただきありがとうございます。いいねやブクマなど、励みにしております。



カクヨム様にて完結いたしました拙作『錬金術科の勉強で忙しいので邪魔しないでください』をお読みの方だと、セレスが鎖に繋がれないのはおかしいと思われるでしょう。一応理由があってこの展開にしております。後日ちゃんと書きますのでどうぞよろしくお願いいたします。

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