第24話 卵探し2
次に向かったのはテイマーの多い魔法士学部だった。
そこで対応に出たのは公爵令息だ。今まで会った貴族(王様を除く)の中で一番高位だ。
「ランドルフ=ゼ・グロウブナーだ。陛下のご命令ならば協力は惜しまないが、まずは王家を支える公爵家嫡男としてこの捜査の理由について聞きたい」
まずわたしが思ったのが、彼が銀髪に紫色の瞳の美少年から美青年になりかけのおいしいお年頃だったことだ。青い瞳ならお約束の『氷の貴公子』とか言われてそうだ。冷静さの中にまだ若さによる傲慢さも見え隠れして、実は恋人にはベッタリ甘える系のツンデレ受けキャラとして描きたくなった。
さっきのクレメンス君がワンコ系なら、こっちは美人系シャム猫って感じだ。
後で聞いた話だが、このグロウブナー公爵というのはこのバルティス王国の三大公爵家の1つだそうだ。強い魔力で多くの魔法士を排出している家柄らしい。魔法士学部の代表として選ばれたのも頷ける。
挨拶もそこそこに質問してきたランドルフさんに対して、ユーダイ様は臆することなく返した。
「さきほどのヴェルディ伯爵家の方にも申し上げたので構わないでしょう。今王都はエンシェントドラゴンの襲撃に遭い、危機に面しています」
「エンシェントドラゴン⁈ 普通のドラゴンすら見かけないのに?」
「エンシェントドラゴンは出産までに1万年以上の生存が必要で、番を作るのもとても難しい種族です。その稀な場にこの国が選ばれたのです。彼らは普通のドラゴンよりも長命で半精霊といっても過言でない存在です。そのため孵化に精霊の力を借りる必要があるのです。この国は神に愛される国。多くの精霊の加護や祝福があふれています。選ばれるのも当然でしょう」
「なるほど……、当家も闇属性の精霊に加護を頂戴している。我が国が選ばれた理由は分かった。でもなぜ学園に?」
「卵を返せとこの学園の上で聖女の結界を破ろうとしているからです。たぶん孵化か近く、子からの救援の心話を受け取ったのでしょう。先ほども申しましたが1万年以上も歳を経たドラゴンです。『聖女の結界』は生半可な攻撃ではビクともしませんが、相手は半精霊です。たとえ破れなくてもその攻撃は周辺の土地にすでに影響が出ているでしょう」
そうユーダイ様が言ったと同時に、ビリビリビリと窓ガラスが振動した。
私にはわからなかったが魔法士ならばその力がどこから来たのかわかるみたいで、ランドルフさんも上を見て目を見張っていた。
「『聖女の結界』越しにこれほどの影響を与えると言うのか……」
「急ぎの案件であるということをご理解いただけましたか?」
「ああ、しかも今はこの国に聖女がいない。もし破られたら結界を修復することが出来ないかもしれない……」
「やはりクライン家のリファラディア様も無理でしょうか? あれほど真摯に神に祈る方もいらっしゃらないのに……」
「フェーベル殿、クライン家は聖属性の御血筋だが、神のお怒りにより聖女は産まれることはない、もはやどうあっても王家に帰り咲くことはないのだ。リファラディア様がどれほど素晴らしい方であってもな」
どうやらクライン家のリファラディア様という方は元王家で尊敬されているけど、聖女になれないってことらしい。でも神の怒りってでもすごいパワーワードだ。どれだけすごい罪を犯せばそんな怒りを受けるのだろう?
その後事態を納得したランドルフさんは、テイマーたちの持つ卵を全て提出させた。さすが高位貴族。統率取れてるね。
出された卵は皆白い卵で同じ大きさだ。数も多い。ホント、見ただけじゃ絶対わからないね。
「テイマーは卵から育てることで心を通わせテイムするものも多い。魔力量が心許ないものや、より密接なつながりを作るためにね」
ユーダイ様が教えてくれ、ランドルフさんが付け足した。
「テイマーの中には卵を売るのを商売にしているものも少なくない。自分と心の通う卵と出会うのは運だからな」
つまり数撃てば当たるってヤツね。そしてほとんどそうでないから卵を売るんだ。
その大量の卵の中にジャッコさんはすぐにドラゴンはいないと見極めた。
最後に使い魔にするために卵を持っている人だ。これが一番ややこしい。だれがそうなのかわからないからだ。
使い魔とはテイムした魔獣とは違う。テイムした魔獣は家族や親友に近い。心を通わせ、仲良くなることだ。
それに対して使い魔は協力関係にある場合と、隷属に近い場合があるという。
前者はお互いのメリットを考えて一時的な契約状態になることだ。こちらは能力はともかく対等な関係なので卵を必要とはしない。
だが後者の隷属状態にする場合は違う。
卵から育てることで恩を売り、隷属状態にして汚い仕事をさせたり、生体実験を行ったりするのだ。つまり卵を持っているというのは、ちょっと後ろ暗いことをさせるのかなって気がする。
しかも隷属させるにはそれなりの魔力が必要だ。強力な魔法士であると思われる。そうなると高位の貴族で可能性が高い。
「グロウブナー様に協力していただいて、上位貴族たちの部屋を家宅捜索しましょう。あの方より高位の貴族は今学院にはいませんから」
グレゴリーさんの一声でランドルフさんに再度協力してもらうことになった。
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