第23話 卵探し1
グレゴリーさんに先導されてわたしたちは王立魔法学院の校門をくぐった。
わたしがついて行ってもあんまり意味がないと思ったけれど、帰る隙が無かったのだ。
学院ではちょうど夕食時だったようで、ほとんどの生徒(一部の上位貴族たちは自室で取っていた)がそこにいた。
「私は近衛騎士団団長のグレゴリウス=ゼ・フェーベルである。これから緊急の持ち物検査を行う。教師、職員、学生の諸君、こちらは協力者の勇者ユーダイとそのパーティーメンバーだ」
ちなみにフェーベル家は侯爵家らしく、しかも近衛騎士団は王直属なので公爵様だって無下に出来ないんだって。
彼の宣言に自室にいたと思われる、おじいちゃんが現れた。
「学院長のメレディス=ゼ・フェーベルじゃ。えらく急な話じゃな。グレゴリー、一体全体どうしたというのじゃ」
この方はグレゴリーさんの大叔父さんなんだって。フェーベル家は文武両道で騎士にも教師にもなる人が多いんだそうだ。
「国王命令で魔獣の卵を探しております。大叔父上」
「学院では使い魔にしたり、テイムするための卵は多い。なにか危険な生物のものが混じっておるのか? しかし孵化せねば中身はわからぬしのぅ」
「では採取場所でわかると思います。ここ最近、精霊がいる水場で卵を採取した方はいらっしゃいませんか?」
そうユーダイ様が限定したので、グレゴリーさんが質問してきた。
「なぜ水場だとわかる」
「エンシェントドラゴンはドラゴンの中でも長寿で半精霊体と言える高位の存在だ。しかも1万年以上生きたものしか卵を産まず、二親だけでなく精霊の力を借りて孵化を促す。光・闇・樹属性の精霊はまず人間では近寄れないから、火・水・風・土の4属性のいずれかになる。そしてここ最近起きたことなので、山や岩場に住まう火・風、地中深くに住む土はあり得ない。比較的親人間な水属性の精霊ならば、住処も近いため誤って卵を採取してしまう可能性が高い」
「なるほど、では水場で卵を拾ったものはいないか! 自己申告がなければ、全員の持ち物検査を行う。情報があるのならば本人以外でも構わない」
そう近衛騎士団長の宣言にそこにいた者たちは慌てだした。自分が犯人だからではなく、持ち物検査される事態が不名誉なことだからだ。
「私は卵なんて持っていないぞ!」
「誰だ? いるならさっさと手をあげろ」
などなど騒がしい。
「勇者ユーダイとそのお仲間の皆様、そしてグレゴリー、もう夕食はお済かな?」
「いえ、あいにくと時間がありませんでした」
「では今ここで取られてはいかがかな? 皆様が食事をしている間に情報も集まるじゃろう」
「有難いお申し出です。是非そうさせてください」
「おい! 時間がないのだぞ!」
「食事するくらいはあるさ。それに戦闘になったら魔力がいる。魔力を出すには体を万全に整えるべきだ」
「勇者殿のおっしゃる通りじゃ、グレゴリーよ。闇雲に持ち物検査して時間を費やすより、ある程度絞った方が懸命じゃ。その作業はわしが責任も持ってやろう」
「わかりました、大叔父上。お言葉に甘えます」
そうして私たちは学校食堂でも少人数でいただける個室で夕食を取った。味はさすがに貴族が多いだけあって、今世では食べたことがないくらいおいしかった。
そうして食事がすんだころ、卵をもっている生徒が多い研究室を3つ挙げられた。1つは騎士学部で騎獣として使うところ。2つは魔法士学部のテイマーたち。3つ目が研究目的で使い魔を利用しているところ。3つ目は教師も含まれるので少し数が多い。
まずは1つ目の騎士学部から事情聴取を行った。
「クレメンス=ゼ・ヴェルディです。伯爵家のものです。我が家はセネカの森の管理を任されています」
このバルティス王国には3つの卵の採取場所があり、教会ダンジョン、アランカの森、セネカの森である。その中の1つを管理しているということは卵の情報に詳しそうだ。
「確かにセネカの森は卵が採取できますが、我々騎獣騎士団のものが採取して育てることはまずありません」
魔獣の卵とはどんなに大型の魔獣でも小指の先もない小型の魔獣でも皆同じ大きさの卵から生まれる。そして生まれるまで中身は特別なスキルがない限りわからないという。
セネカの森は魔獣が多く発生するがスネーク系や昆虫系などの小型のものも多く、卵を採取しても騎獣にならないことがしばしばあるそうなのだ。確かに蛇や虫に乗って戦うなんて難しいよね。
「我々は現在契約している騎獣同士から出来た卵以外は、卵から育てることはありません」
魔獣の繁殖に成功しているわけではないが、時折騎獣同士で番が出来て産むことはあるそうなのだ。騎獣同士なので四つ足で生まれることが多い。ごくまれに違う卵もあるそうだけど。
それでここ最近、卵を新たに育てている者はいないそうだ。
でも見せてほしいと言うと、皆難色を示した。
「強い魔力の持ち主に卵の中身を見られると、所有者が変わってしまいます。ですのでできればやめていただきたいのです」
「ああ、俺が見たら乗っ取りそうだね。でも俺たちの仲間に主の座を奪わずにわかるスキル持ちがいるから安心して」
ユーダイ様が親指で指さしたのはジャッコさんだった。
神獣様だからわかるのかな?
みんな嫌がっていたけど、国王命令ということでジャッコさんが確認すると、中身は騎獣向きの馬系の魔獣がほとんどで、ドラゴンではなかった。
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