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What‘sawonderful another world ! ~なんて素敵な異世界なんだ!~  作者: 詩森さよ(さよ吉)
第一章

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第17話 悪魔?


「悪魔? それって魔族の事ではない……ですよね?」


「当然だ。魔族は魔力を多く持ち、魔法能力の高い種族のことだ。精霊に近いがヒトだ。悪いヤツもいるがいいヤツもいっぱいいる。人間と同じ、いや彼らの方が世界に必要とされている」


 世界に?


「なぁ、異世界転生したぐらいでチートな能力を授けられるってどうしてだと思う?」


「そうですね。ラノベでよくあるのはトラ転とか過労死で死んで、神様がこれまでの善行に報いるとか、若くして亡くなったことを憐れんでとか。あとすごく働いて大変だったから幸せになりなさいとか、だいたいそんな理由ですよね?」


「そうなんだ、実は俺そこまで詳しくラノベ読んだことなくてさ。妹からの又聞きなんであんまり知識がないんだ。それを踏まえて聞くけど、世界中の子どもたちを助けていたおばあさまぐらい善行を積んでいたならともかく、君はそこまでの事していたの? 若くして亡くなるって、もっと赤ちゃんの頃に亡くなっている子だっているのに? 大変な人生を送っていたからって、生きているときに幸せになるように導くんじゃなくて、どうして死んだときになってそんなことしてくれるの? 最後にそれって本当に神様に会って聞いた話?」



 思わず私の喉がヒュッと鳴った。

 確かにわたしはエリーゼさまのような善行を積んだわけじゃない。どっちかって言えば絵を描く以外は怠け者だった。

 若くして亡くなったといっても42歳だ。もっと若くに亡くなった人は多い。

 それにわたしの人生は大変だったかと言えば、それなりに大変だったけどそれは自分で自分を追い込む性格のせいで体を酷使していたからだ。そのかわりに和くんや仲間がいて、かわいい子ども2人に恵まれて、ちょっと早く終わったけど幸せな人生だったと思う。だからわざわざ異世界で幸せになれと言われてもピンとこない。

 当然神様に会ったことはない。


「……そうですね、そのどれにも当てはまっていません」


「だと思った。大きな力を使うには代償が必要になんだよ。俺がこの世界に召喚されたとき、25人の魔法士が死に、30人の魔法士が魔力器官を潰して再起不能になった。他にも再起不能まではいかなかったが重傷を負った魔法士はもっといた。国を挙げての召喚はそれだけ時空をねじ曲げて行われるものだ。もちろん異世界転生はそこまでコストがかからない。ただし全ての記憶が抹消されていたならの話だ」


 ユーダイ様が言うには、いわゆる三途の川を渡ってキレイになった魂は様々な世界を循環しているそうで、異世界に転生してもおかしくないそうだ。ただ記憶がクリーニングされているので、誰がそうなのかわからないだけだそうだ。


「つまり記憶が残っているということは、言い方は悪いけどクリーニング屋で汚れたままの洗濯ものに等しい。それを異世界という別会社の店に放り込んで、どこかの家庭に送り込まれたってことだ。しかもチート能力までつけてあるなんてね。それがどれだけおかしいことなのかわからない?」


 確かにそれだけ聞いたら、明らかに悪意しか感じない行為だ。


「もちろん、俺が言いたいのは魂が汚れているって話じゃない。ただの比喩だ。でも変だなって思うだろ?」


「はい……」


「それをするのが悪魔なんだ。悪魔はいろんなところに罠を仕掛けているんだ。その一つがチート能力さ」


「何のためにそんなことを?」


「もちろん喰らうためさ。悪魔は力を増大するために、魂に能力を与えて成長させてから取り込んで吸収する」


「そんな⁉」


 わたし、そんなのに狙われているの? ただの絵師にすぎないのに?


「俺は目の前で見たんだ。俺が倒した魔王を悪魔が喰らうところをね。そうして魔族たちに俺を倒すための力は欲しくないかとささやいていた。俺にはそのささやきは聞こえなかったけどアイツらにははっきり聞こえたそうだし、なんなら今でも時々語りかけてくるんだそう。」


 俺がアイツらを守る意味、わかるよね? そう言わんばかりに彼は微笑んだ。



「わたしにもそんな力が?」


「あるかもしれないね。ラノベではどうだったの?」


「うーん、最初からつけてあることもあるし、途中で危険な状況で目覚めるというのもありました。だから記憶を取り戻したときに一応唱えました」


「ああ、聞いたことある。『ステータスオープン』だね」


「はい」


「今唱えてみてよ」


 えっ? それは何というか人前でするのは恥ずかしい……。いや私も筋金入りのオタクで腐女子だ。腹をくくろう。


「『ステータスオープン』」


うんともすんとも何も開かなかった。


「俺も言ってみようかな。『ステータスオープン』」


ユーダイ様も開かなかった。


「ちなみにこの『ステータスオープン』ってさ、ゲームプレイヤーじゃないと開かないんじゃない? だってステータスって現在の自分の能力を確かめるものだろ。HPとかMPとか」


「そうですか? ラノベでは普通にありましたけど」


とはいえそれはラノベのご都合主義だ。


「まぁステータスは見られないものと思っていた方がいいよ。たぶんさっきのジョブ診断がそのかわりになるものだから。これから自分の能力や成長は自分の体感で感じるしかないね。気が付かなければそれでいいんだし」


 転生者でもチートを使わずに大人しく生きていたら、平穏無事に過ごせるかもしれない……彼はそう締めくくった。


 もう何も言えなかった。

 ジョブ診断で平凡だったのは幸いだ。わたしは絶対チートは使わない。これまでも村人A だったのだ。これからもそれで行けばいい。


お読みいただきありがとうございます。

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