第13話 ジョブ判定について
わたしたちが彼の頭の上であーだこーだと話をしているせいか、ユーダイ様の息子のウィル君が目を覚ました。
ボーっとした顔で少しずつまぶたが開くと、そこには黄金の瞳が輝いていた。
天使のような美しさとはまさに彼のことを言うのではないだろうか?
寸分の狂いもないほど整った顔立ちで前世のわたしならすぐにでもデッサンしただろう。でもこの美しさを再現できるか心配になるほどの美貌だ。
髪も輝かしい金髪で、きっと奥様だった聖女もその色だったのだろう。もしかしたら貴族のご令嬢だったかもしれない。
アル様よりも美しい男の子を初めて見た気がする。人外である魔族の3人を見てもそう思わなかったのに……。つくづくわたしの最推したちは美々しい方々だった。
「とーさん」
そう呼び掛けたもののまだはっきりと目覚めていないのか、まぶたが何度も開けたり閉めたりを繰り返していた。けど本当にユーダイ様がいることに気が付いて、ぱっちりと目を開けて、ニパっと笑った。
「ウィル、ただいま。元気だったか?」
「おかえり、ぼくね、今日ジャッコと草むしりしたよ」
「草むしりじゃなく、薬草摘みだな」
ジャッコが笑って突っ込む。
それにしてもこんな大きな虎と一緒に森で薬草を摘んでいたら、目立って仕方がないんじゃないかな?
「そっか、明日冒険者ギルドへ行くから、売りに行こうな」
「やくそくだよ」
そういうとウィル君はまた目を瞑ってしまった。森の中をうろつき回る薬草摘みは結構な重労働だ。欲しい薬草を見つけるために長時間探すこともある。こんな小さい子だったら歩くだけで疲れてしまうだろう。
ユーダイ様はウィル君が寝入るまで優しくトントンと叩くと、安らかな寝息が聞こえて来た。
「あのう、明日も薬草摘むんですか?」
「ユウが帰ってきたからしないな。明日は王都に入る」
「そうですか……」
もし手伝えたら護衛なしで薬草を手に入れることが出来たのに……。
わたしは魔力も戦闘能力も欠如しているから、大人の付き添いなしで森の奥へ入って行けなかったのだ。
これでも一応薬草が主な主要産業だった村の出身だ。薬師の真似事程度ならできる。でも魔力がほとんどないからポーションを作ることはできない。せいぜい軟膏や煎じ薬程度である。
それでも医療の発達していないこの世界ではかなり重宝されているのだ。
「そういえばさ、あのマール国って、ちゃんとジョブ判定やってるの?」
「やってはいるんですが……受けられるのは魔力のある子どもだけです……」
だから父さんはジョブ判定を受けて、水魔法と栽培スキルがあることがわかったのだ。
「わたしは魔力がほとんどありませんから、受けられませんでした」
ジョブ判定はこの世界を創造した神様のご慈悲で行われるものだ。その尊い儀式に魔力を持たないその他大勢の国民は受けさせてもらえないのだ。
「そっか、じゃあレナはまだ受けていないんだね。でも前世のことを知っていたら受けさせてくれたんじゃないかな?」
「いいえ、誰にも教えてないんです。わたしみたいに絵を描くこと以外、特に知識や技術がない人間ではそんなこと話しても何にもならないですから」
「そうかな? 前世と今世との齟齬を感じなかったの? 子どもの頃につい口走っちゃうとか」
「前世でも農家の子だったので、朝早く起きて家の手伝いするのは当たり前でした。だから違和感はあまりなかったですね。記憶が戻ったのも3歳の時でまだはっきり喋れなくて、そんなにマズいこと口走らなかったんです。村のような狭いコミュニティで、下手に目立つおかしなことを言う子は嫌われますから」
むしろ変な夢を見たとか、便利なものがないとか、そういう話をしてなくてよかったと思ったものだ。
「そっか、俺は田舎のことは知らないから、そういう処世術があるんだね。
わかった。明日王都へ行くから、冒険者ギルドの前にジョブ判定を明日受けてしまおう」
「そ、そんなこと、いいんですか?」
「この国では入国時10歳以上で希望するなら受けられるんだ。お金かかるけどね」
ですよねー!
「でも初回の1回限りは無料でね。そこで魔力持ちや有益スキルやジョブの持ち主が見つかったら、この国で働くことになるんだ」
「それって奴隷ってことですか?」
「そこまでじゃないけど、多少の強制力があるみたい。学費がそのまま借金になって、返済は数年かかるそうだけど……。だからって隷属の首輪をつけたりはしないから」
ただあまりに有益なジョブの持ち主だと囲い込みにあうそうらしい。それも怖いな。でも考えようによってはその年数は生活ができるということでもある。
「君の言う通り絵の才能だけなら、有益ジョブにはならないと思うよ。俺がついて行けば安全だと思う」
わたしは頷いた。実はジョブ判定を受けたばかりの子どもの一人歩きは結構危ない。教会に登録された時点で働き手と見なされるからだ。わたしの国でもそうだったし、このバルティス王国でもそうらしい。人さらいに捕まれば、ただひたすらこき使われるだけだ。
付き添いまでしてくださるなんて、ユーダイ様は本当に面倒見のいいお方だ。
その後ユーダイ様は魔族の女性陣の所へ向かい、ジャッコさんもベッドの上に飛び乗った。さすがに上掛けは掛けないけどそこで眠るようだ。わたしも割り当てられたベッドに横になると、疲れていたのか気を失うように眠ってしまった。
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