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What‘sawonderful another world ! ~なんて素敵な異世界なんだ!~  作者: 詩森さよ(さよ吉)
第一章

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第12話 虎と幼児

 

 ユーダイ様は負ぶわれたまま階段を3階まで上がると、一番奥の部屋の扉をノックした。


「ジャッコ、入るぞ」


 応という返事と共にカギを開けて入ると、中にいたのは真っ白な虎と5歳ぐらいの金髪の男の子がベッドでお眠っていた。ユーダイ様は動けないわたしを負ぶったまま子どもの顔を覗き込み、声を落として虎に話しかけた。


「ただいま、ジャッコ」


「おう、おかえり。その背中のものは俺の餌か?」


「ち、違います!」


 わたしが思わず声を上げるとユーダイ様とジャッコと呼ばれた虎にシーとされてしまった。どうやら冗談だったようだ。


 わたしは空いているベッドに下ろされると、虎はちょっと小首をかしげるようにこっちを見ていた。じゃあ何で連れてきたんだと言わんばかりだ。


「その子、前世で俺の妹が世話になってたんだ。だから俺がちょっとだけ手助けするつもり」


「なるほど、前世絡みか」



 落ち着いて観察してみると、その虎はとても美しかった。真っ白と言うより少し青みを帯びた白だ。そこに黒というよりチャコールグレーに近いかな、少し茶色味を帯びた濃いグレーの縞が入っている。よろしくと言われて、わたしの右手にモフッとした右前足を乗せられた。握手の代わりらしい。


「俺の仲間の中ではジャッコが一番フレンドリーだ。ポジションはテイマーなんだが、今は俺の息子が小さくて面倒を見てもらっている」


「他の奴らじゃ、教育上よろしくない」


「ジャッコの言う通りだ」


 あの色気むんむんの3人だものね。


「こんなに小さいのに拷問の仕方とか、媚薬の作り方とか教えだすんだぜ。ウィルがグレたらどうすんだよ」


 そう言って子どもの寝顔を嬉しそうに眺める姿はすっかり父親のものだった。


「ユーダイ様は今おいくつ何ですか?」


「こっちに来て10年ぐらいは経っているから、26かな」


「もうお子さんがいらっしゃるんですね」


「うん、勇者パーティーで組まされた聖女と婚約させられてね。魔王討伐の後すぐに結婚させられた」


 なんかニュアンスが……望んだ結婚でなかったってこと?


「それじゃあ、奥様の聖女様は?」


「死んだ」


 バカだ、わたし。

 ここにいないってことは、何か事情があるって言ってるようなものじゃない!

 そんなデリケートな話題に突っ込むなんて、あたしバカだ。


「申し訳ありません」


「気にしなくていいよ。同じパーティーの仲間ではあったけど、愛情というよりお互い身を守るための打算的な結婚だったし」


 でも子どもをこんなにかわいがっているんだ。きっと強がりなんだろう。



 するとジャッコがユーダイ様の顔を覗き込むように言った。


「今日は向こうで寝んのか?」


「そうだけど、何かある?」


「いや、ウィルがさ。父さんまだかなって今日言ってたからさ」


「……なんとか戻ってくるよ。俺はこの部屋にいなくなるんで柳先生、いやレナは安心してここに泊まってくれ」


「ご用事ですか?」


「まぁそんなとこ。俺はあの魔族たちと契約しててね。仕事が一段落したら対価をあげないとダメなんだ」


 つまりそれが美女たちとの共寝ですか。

 じゅるり、よだれ出そう。それはそれはおいしい対価ですね。


「死ぬ前には止めてくれると思うけど、またいつも通り頼むな」


「ああ、わかった」


 死ぬ前? なんか物騒な話だ。それだけ求められちゃうってこと?

 1対3だもんね。

 そんな下世話なことを考えている間も、ふたりはまだ黙り込んだでいる。

 もしかして深刻なこと?

 その沈黙に耐えられなくて話を変えてみた。



「ジャッコさんも魔族なんですか?」


「いいや、俺はただの獣だ」


「ジャッコはね、神獣さ。白虎だよ」


「あの四神の1つのですか?」


「おお、詳しい。さすがラノベの人気絵師様」


「わたしが挿絵描いてたラノベにも出てきましたから」


 中華系のラノベによく出てくる人気動物の1つだ。美しいものは何でもデッサンするわたしは動物の描き方にも定評があったのだ。

 苦手だったのは機械とかロボとかかな。デザインを別の人がやってくれたものなら描けるけど、細かく設計することが出来なかった。

 人気作品のキャラなら後でグッズ展開されるから、ロボ系はちゃんと設計が出来てないとダメなんだよ。


 初期の頃にフィーリングで描いた流線形の美しいロボが商品化されたときに、きちっとプロの方が設計図を起こしてくれた。だけどわたしの絵のままだと自立しないって言われたんだよね。

 それで少しわたしの絵の軽やかさと違う少し武骨な感じに仕上がってしまって、メーカーさんはイメージが違うと不評を買ってしまったのだ。

 あの時はつくづく、イラストは雰囲気だけじゃダメだって思ったものだ。

 でもわたしにとってはいい経験だけど、メーカーさんにとってはノークレームに越したことはない。それからは近未来的なロボ系の依頼は避けるようになった。


 今思えばもっと勉強しておけばよかったと思う。もしかしたら後で絵に描いたものを具現化できるスキルが生えるかもしれないじゃない?

 せっかくの異世界転生なのに魔法が使えないなんて悔しいもの!

 せめて1つぐらいチートなスキルが欲しいよ。


お読みいただきありがとうございます。

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