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What‘sawonderful another world ! ~なんて素敵な異世界なんだ!~  作者: 詩森さよ(さよ吉)
第2章

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第132話 商隊への襲撃2


 商隊は俺が追いかけると割とすぐに追いついた。だが様子がおかしい。

 見知らぬ奴らがいっぱいいて、冒険者や戦闘奴隷だけでなく、トレーニーたち商会の人間も拘束されていて、いないのはレクソール嬢だけだった。


 彼女の馬車に太った男と、撒いたはずの義妹の姿がある。2人は髪色や目の色がよく似ていた。俺は聴力強化して話を聞くことにした。


「おい、父親の命令だぞ! いい加減出てこい‼

 俺の娘じゃないのにここまで育ててやったんだ! お前は俺に恩返しする義務がある‼

 お前のせいでここいにる全員が死ぬんだぞ、何とも思わないのか⁈」


 アレが父親のアポー子爵か……。確かにレクソール嬢とは全く似ていない。

 念のため『真実の目』でチェック。

 おい、ちゃんとアイツが父親じゃねーか。

 ということは義妹の方が……血縁じゃない!

 つまりあれか。後妻が父親と似た特徴の男と浮気してたか、あるいは父親の方が浮気相手だったが捨てられて乗り換えたかだ。



 それでもレクソール嬢は出てこなかった。

 きっとここの全員が殺されても出るなと言われているんだろう。しかも俺の話のせいで父親じゃないって思い込んでいるしな。


 あの馬車は魔道具だから、元伯爵令嬢の奴隷護衛が持っていたカギと内側の鍵を同時に開けないと扉が開かない仕組みだ。ああいう魔法はよほど強い『開錠』スキルでないと開けられない。


「ねぇ、お義姉さま。あなたの婚約者なら心配しなくてもいいの。わたくしが代わりに嫁いであげるわ。だってお義姉さまはずっと使用人だったからマナーもなってないし、貴族学園にも行っていないじゃない? アンタなんか誰も貴族なんて認めてないから。

 これでわたくしも公爵夫人よ」


 そう言ってキャーハハハと甲高い声をあげる。

 なにくだらんマウント取ってんだよ。婚約者側が認める訳ないだろ。まぁこの女が嫁いできたとわかった時点で殺されるだけだろうが。

 それにしても何でこんなことになっているんだ?



 それで気配や姿を隠せる『ステルス』スキルを発動し、そのまま彼らの上空をフライで偵察する。


 商隊の一番前に1つの壮麗な馬車と騎士服を着た男たちの姿があった。

 この馬車についている家紋まで見分けられないが、彼女の嫁入り先であるサフィーンの公爵家の家紋なんだろう。

 つまり迎えが来たと思って油断してこうなったか。


 あっまだアポー子爵は諦めていないな。


「お前を3倍の価格で買うって御仁がいるんだよ。エルフは長生きでいつまでも若いからずっと客が取れるっておっしゃってな。もし公爵家から結納金を返せと言われても十分残るんだよ。お前さえ我慢すればいいんだ」


「そうよ。恨むならその姿で産んだ浮気女の母親を恨むことね。

 その金はわたくしの持参金になるのよ。かわいい義妹のためにせいぜい働きなさいよ」


 いや血のつながりのない、全くかわいげのない義妹のために誰が娼婦になりたいかよ。しかしこのままでは彼女の曾祖母がなっていた奴隷になるってことだな。

 どうしよう。こいつら全員殺して大丈夫かな。

 この騎士たちがサフィーンの正規騎士だったら、さすがにマズいよな。


 考えたが行ったこともないサフィーンの正規騎士かどうかなんて、俺の知識ではわからない。こういう時はゲオルグやエリザがいてくれると教えてもらえたのになぁ。

 まぁ勇者パーティーは解散でいいんだけど。



 そうこうしている間に業を煮やしたのか、女性護衛奴隷が1人引きずり出された。騎士の1人が剣を抜いて彼女の首に当てた。


「この女の首を刎ねる。10数えるうちに出てこないと死ぬぞ。

 10,9,8……」


 それで俺はこの周辺一帯に中級闇魔法である『深い眠り(ディープスリープ)』を掛けた。

 状態異常に耐えられるスキル持ちはいないみたいだな。

 だが俺もよく使うが、かかったふりして油断させる方式かもしれないし気を付けて行こう。


 とりあえずこっち側の人を救出するか。それから敵を武装解除して、使われてた拘束具を嵌めて……これ1人でやるの面倒なんだけど。冒険者チームと護衛奴隷チームだけ魔法を解除して手伝わせよう。


「はっ!」


「クソがぁ」


「ゆ、ユーダイ?」


「戻ってきてくれたの?」


「寝起きの悪いヤツもいるようだが、おはよう。初めから後始末を済ませたら戻る予定だったよ。なんかひどいことになってたみたいだね」


「ああ、すまん……。

 てっきりサフィーン側の迎えだと思ったら、いきなりぶん殴られて……」


「あたしも。女でも全然容赦しなかったよ」


 頭を殴られたみたいでロッテがしきりに後頭部を撫でているから、起こした全員に治癒魔法を掛けた。


「アイツらは……眠ってんのか」


「うん、ここら一帯に眠りの魔法を掛けた。ちょっと効きすぎて馬も寝てるけど」


「やっぱ勇者ってスゲーんだな。馴れ馴れしくユーダイなんて呼んでたけど、敬語にします」


「今さら何言ってんだよ。一緒の仕事中は仲間だろ。そのままでいいよ。とにかくこいつらを拘束したいから武装解除と拘束を手伝ってくれ」


「武装解除って?」


「基本全裸だな。口の中や肛門に何か隠していることもあるけど、とりあえず両手両足を縛って猿ぐつわして固めて置いておこう。

 えーと、元伯爵令嬢さん。こいつら正規の騎士ですかね?」


 俺の拘束案は全員をちょっと驚かせたようだ。

 レクソール嬢にマナーを教えていた護衛女性に話しかけると彼女はすぐに気持ちを切り替えたようだ。


「はい、たぶん。サフィーンかはわかりませんが太刀筋がキレイでしたので貴族や騎士の家の出だとは思われます」


「殺したらヤバいよね」


「裸にして拘束してここに置いて行ってもよろしくないと思いますが、依頼人の手の者ではないようですのでよろしいかと」


「じゃあ2日ぐらい寝かしておくわ。その間に魔獣に襲われたらそれは事故だ」


「そうですね、わたくしたちは殺されるところでしたし」


「どうせなら足の腱切っておこうか?」


「さすがにかわいそうなので、下着類だけ残しておきましょう」


 こうハッキリ言ってもらえるとやりやすいな。

 ちなみにやっぱり服の下に隠し武器を持っているヤツが何人かいたので、全裸は正しい選択だった。さすがに口の中や肛門を触るのは嫌だったので、俺の『真実の目』で見ていく。

 さすがにそこまではいなかったが、ロン毛の男の髪の中に針を編み込んでいるヤツがいた。そいつの服に一番暗器がいっぱいあったので、ヤベー奴だったみたいだ。


「質問! ユーダイは口と尻の中になんか隠してるの?」


 ロッテ、目をキラキラさせてそういうの聞かないでください。


「いや、俺マジックバッグあるから隠してない。でも元の世界でそう言う部分は調べないやつが多いから、ちょっとした魔道具みたいなのを隠し持っているヤツはいるって教わった」


 ウソです。尻はさすがにないけど、親知らずの跡に偽歯作って口の中にプラスティック爆弾の小さいヤツ入れてます。ガムみたいにこねてから使うものなので暴発はないんだ。これはカーライル社の跡継ぎとして誘拐されたときの逃亡手段用だな。


「以前異世界人は平和で戦争のない世界だと聞いたことがあったんですが……?」


「俺の住んでた国は平和ボケしてたけど、戦争はあったよ。それに平和そうに見えて、裏で暗躍しているヤツはいっぱいいたしね」


「どこも同じなんですね」


「残念ながらここも元の世界も、人間の本質は変わらないと思うぜ。どこにも楽園なんてないんだ」


 むしろエルフやハイエルフの里とかの方が素朴に生きてそうだし。



 そうして片付けが済んで、初めてトレーニーを起こした。

 俺たちが無事なことは喜んだが、襲撃者側が全員全裸拘束状態にはものすごくびっくりしていた。いや、ここまでしないと色々隠してるんだってば。


「この事態、依頼人の意志じゃないよな?」


「そうですね、メイバロウズ家の紋章入りの手紙でしたので信じてしまいましたが、ご依頼人の小公爵様ではないと思われます。失敗しても後金を払う契約ですので」


 嫁入りを差し止めたい親類の仕業か? それとも他の貴族か。

 騎士を派遣できるってことは、それなりの地位のヤツだな。


「まぁそうだな。依頼人なら彼女のことがイヤになったら、手元まで来させてから始末すればいいんだから」


「このような騎士を派遣したり、アポー子爵に3倍払ったり必要はありませんからね」


「3倍ねぇ、払う気なかったんじゃない? おっさん殺せばおしまいだから」


「私もそう思います。ご令嬢は相当な高額でいらっしゃいますから」


 こんな話をしつつ、先頭にあった敵側の馬車やなんかも貰っていくことにした。その中に集めた服や武器を入れておくのだ。馬車の家紋は布をかけて隠せばいいだろう。もちろん馬も貰っていくことにした。


 そうして俺たちは襲撃者(+アポー子爵親子)を置いて、そのまま先を進むことにした。魔獣の氾濫が起こったら、それはこいつらの責任だと思おう。



お読みいただきありがとうございます。

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