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What‘sawonderful another world ! ~なんて素敵な異世界なんだ!~  作者: 詩森さよ(さよ吉)
第2章

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第125話 旅の食事


「いやぁ、アンタが有能で助かるよ」


「こっちこそ、ロッテは素晴らしいアーチャーだな」


「アハハ、あたしは生まれたてすぐから弓矢を持っているからね」


 依頼主のバロウが奴隷商人だとわかって不快な思いをしていた俺だが、この旅自体はそれほど悪いものではなかった。

 一応聞くところによると、バロウは特別な客にしか奴隷は売らないみたいだしな。俺にしてみれば人身売買している時点で大きな違いはないような気がするが、こちらではかなりの人格者のようだ。


 旅を仕切るトレーニーは優秀で進行が滞ることはなかったし、アーニーとギルやドレッド兄弟も真面目に仕事をするので問題なかった。その中でも有能だったのがロッテだ。彼女は狩人の里の出身らしく、とにかく狩りが上手い。



 旅の間の食事は各自で用意することになっていて、俺はストレージ持ちだからさほど問題ない。他の5人は大きな荷物がないのでどうするのだろうと思ったら、一応町から町へ行くので着いた時は宿屋などで食べて、保存食を買うという方式らしい。


 現地で買えば王都で買うよりずっと安いし、隊の荷馬車に乗せてもらえるからな。町の方もそういう事情を見越して携帯食を売っている。

 とはいえそういう携帯食の中身って硬いパンと干し肉、干し野菜なんてあったらかなりの上物だ。そして鍋に水と干し肉、あれば干し野菜を入れてスープにして、硬いパンを浸して食べる。この食事がしばらく続くのだ。これは商隊の人間も同じだ。


 となると俺の豊かな食事が羨ましくなるってものだ。毎回違う肉を焼き、新鮮な野菜を食べているからな。

 それで最初に声を掛けてきたのは、ギルとドレッド兄弟だった。ガタイのいい3人はきっとその食事では物足りなかったんだろう。



 まだ旅の最初のころ、ある町と町の途中の休憩地で野営することになった。俺は早速火を熾して肉を焼き、新鮮な野菜でスープを作った。するとその匂いにつられた3人がやってきたのだ。


「なぁユーダイさんよぉ、アンタ何でそんなにいいもん食ってんだ?」


「ああ、俺は収納魔法を持っているんだよ。大した量じゃないけどな。勇者特典ってやつさ」


 ウソです。今のところ限界は感じたことない。


「スゲー! アンタマジで勇者なのか? じゃあその剣は聖剣?」


「そうだよ」


「ちょっと見せてもらうってできるか? いや無理だよな」


「いいや、触ってもいいぞ」


 そうして俺が剣帯から聖剣を外して地面に置いた。

 普通だったらこんなことはしないが、この隊にいる人間なら俺の魔法で秒殺できる。


「持ち上げて見ろよ」


 そうしてギルたちはチェレンジしたものの、持ち上げるどころか触るだけで軽めのだがピリッと痛かったようだ。彼らはすぐ止めたが、もっと触っていると激痛に変わる。

 俺が聖剣を受け継いだ時も偉そうな僧服の爺さんが、特別な箱に入った聖剣を魔道具をつけて取り出して俺に授与してたからな。あれらは痛みと重量の軽減の魔法がかかっていたんだろう。俺が返却するときもあの箱に入れないとダメだよな。どこに返すのかさっぱりわからないけど。


 俺はニヤリと笑ってみせて、剣を差し直してから説明した。


「この剣はヒトを選ぶんだよ。最低でも勇者のジョブか称号が必要で、たぶんレベル……いや習熟度も関係すると思う。最初のころは今より使い勝手が悪かったから。とにかく俺からこの剣を奪うのは無理だと思ってくれ」


「いや奪うなんてとんでもない」


 ちょっと過剰サービスだったかもしれない、そう思っていたら彼らの本題は別だった。


「俺たち、もう少し肉が食いたいんだよ。そのストレージの肉、分けてもらえねーか?」


「多少ならいいけど、これからどのくらいの旅なのかわからないからなぁ。なくなると困るし」


「やっぱそうだよな」


「でも今狩ってくることならできるよ。それを買い取ってくれるか?」


「えっ今か? こんなに暗いのに?」


「ああ、すぐ戻る」


 俺が席を立って、10分も立たずに戻って来た。手には3匹のホーンラビットだ。

 種明かしも何もない。ただ俺は『真実の目』で近くに獲物がいないか探して、魔法で仕留めて、簡単に血抜きしただけだ。水魔法で冷やしながら早く抜けるように促すと1分もかからない。


「冷やして血抜きまではすませてあるが内臓はそのままだ。買うか?」


「か、買う! いくらだ?」


「1匹銀貨10枚」


 元の世界で銀貨1枚が1000円ぐらいで、1万円だと思ってくれ。


「高い! ギルドの買取なら銀貨1枚だろ?」


「俺の場合、銀貨3枚だな。傷がなく血抜きがすんで、腐敗してないから。でも普段はホーンラビットなんかついでにしか狩らないんだよ。お前らが食うから特別に狩ったんだ。それなりに魔力を使ったから、銀貨10枚はもらわないとな」


 これもウソだ。エリザは時々あっさりした肉を欲しがるので、時たま狩っていた。ストレージの中に解体済みのラビット肉もある。だけどきっとこれからも頼んでくるだろうから、それなりの値段でないと割に合わない。

 それから宥めようがすかされようが俺は首を縦に振らないので、ギルだけ銀貨10枚で1匹買っていった。後の2匹はストレージ行きだ。



 そうなると次にやってきたのがロッテだった。


「アンタ、いくら何でも銀貨10枚は高くないかい?」


「高いよ。でもこれからもしょっちゅう頼まれるかと思ったら、このくらいはもらわないとやってられないからな」


「そ、それはそうだけど……」


「俺がやったことを教えてやる。まずこの地点で一番近い獲物を探し、それをおびきだして狩り、冷却と血抜きをする。できるだけ短時間でだ。この行程は全て魔法だ。つまり魔力に余力があるときにしか出来ない。今はまだほとんど戦闘がないからいいが、今後は違うだろう? 安易に獲物を取る約束はしたくないんだ。お前だったら、この仕事にいくらつける?」


「そう聞くと銀貨10枚はむしろ安い気がする」


「あんまり近くで取ると血の匂いで他の魔獣が寄ってくるから、風魔法と土魔法で匂い消しもしたな」


 これはほぼ無意識にやってたわ。もう少し高くても良かったかも。


「わかった。アンタのつけた価格は適正だ、休んでるとこ、悪かったな」


「いや、問題ない。わかってもらえてありがたいよ」



 だけどその後も注文が入った。

 護衛仲間の男たちからではない。旅の支配人であるトレーニーからだ。


「実はお客人のご令嬢が干し肉料理では辛いと仰っています。もしよろしければ狩った獲物を購入させていただきたいのです」


 彼らも町で旅行用の食料を買っているが、貴族のご令嬢にはあれは辛いのはわかる。でもあれしかないとなったら、エリザはがつがつと食っていたけど。アイツはご令嬢とは言い難いお姫様だったな。


「高いよ。ギルドの買取価格の10倍以上貰う」


「結構です。ご令嬢に掛かった費用は御夫君が全て支払ってくださることになっております」


「わかった。ホーンラビットでいいか?」


「はい、結構です」


 そうして俺はホーンラビットを1匹銀貨12枚で売った。今回は見つかりにくかったことにしてだ。


 そうなるとそれ以降も度々頼まれた。段々ワイルドボアだの、ビックベアだのになってくると金貨になってくる。

 そうなるとトレーニーから狩りの時間を取ってもらえるようになったし、腕に覚えのあるロッテも参戦したがった。というわけで俺が索敵して見つけ、ロッテが矢でしとめ取りに行き、俺が後処理するという役割分担が出来た。これで半々の取り分だ。

 アーニーとギル、ジェロとジェノもその間に小物を狩るようになって、肉にありついていた。


 食事が上手いと格段にQOL(クオリティオブライフ)が上がる。俺たちの旅は少しはマシなものになっていった。


お読みいただきありがとうございます。

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