第120話 お菓子の売り込み
昨日第120話がアップできませんでしたが、何度トライしてもログインが30分以内に出来なかったためでした。理由は小説家になろう様側のシステム変更による一時的な物だったようです。
こちらのブログに詳しく書かれていました。
https://blog.syosetu.com/article/view/article_id/5282/
本日はログイン出来ましたので、17時に第120話、21時に第121話をアップさせていただきます。
どうぞよろしくお願いいたします。
錬金術ギルドの水あめは初動ではさほど出なかった。だがやはり甘いもの好きというのはどこにでもいるらしく、口コミでじわじわと買われていくようだった。
そして今日は商業ギルドから、名指しで呼び出された。水あめを商業ギルドに卸して欲しいとの話だ。
「どうして水あめが錬金術ギルド扱いなのでしょうか?
今後手広く扱うなら、我が商業ギルドの方が断然お役に立ちますよ」
「錬金術ギルド扱いにしたのは、水あめを作る工程を錬金術で行っているからです。
それに今は問題ないのですが、時期によっては材料が手に入りにくいことがあります。ですからあまり手広く扱わなくてもよいと思っているのです」
「では我々には卸していただけないということでしょうか?」
「いいえ、こちらでは水あめを使った製品のレシピをお売りしたいと思っています。まずはサンプルをお持ちしましたので是非お召し上がりください」
俺が出したのは、ジャムとカッテージチーズにクラッカー、そしてパート・ド・フリュイ。もちろん、貴族に売れるように作ったのだ。
「こ、これはどういったものですか? 特にこちらは美しいものですな」
商業ギルドの職員がパート・ド・フリュイを指さす。見たこともないモノなので目を引いたようだ。目論見通りである。
「まずこちらのジャムは果物の果肉を果汁ごと水あめに混ぜて煮詰めたものです。パンに付けて食べますが、今回は軽食向けにクラッカーに乗せました。
そしてこちらの四角い方は貴族のご令嬢や奥様方に受けると思って作りました」
パート・ド・フリュイは果物のピュレを固めた柔らかいゼリーのことで、ちょっと違うけどすっごく上等なグミみたいなものだ。ただゼラチンではなくペクチンと酸で固めるのが特徴だ。
ペクチン自体を抽出するのにリンゴを多く使うのでかなり贅沢な菓子だと思う。もちろん錬金窯を使ったので、また錬金術ギルドマスターに手を握られてしまった。
俺の見本通りにギルドの錬金術師が上手にその通りに作ってくれた。ありがたいありがたい。
水あめで作るお菓子をいろいろ考えたが、一番の問題は水あめの水分と加熱すると焦げてしまう点だ。つまりスポンジやバターケーキに使うには大量に入れないといけない上に、水っぽくなってふんわりと焼きあがらない。しかも焦げる。
普通は砂糖の補助的役割として、生地をしっとりさせ砂糖のじゃりじゃりを防ぐものなんだ。これだけで焼き菓子を作るのはなかなかに難しい。
それで一番いいのは液体に溶かすことだ。
今回は果汁に溶かしたジャムやパート・ド・フリュイにした。ギモーブ(果物の果汁をメレンゲやゼラチンで固めたもの)も考えたけど、色味がはっきりとした方がいいと思ったのだ。他には卵液に溶かすプリンもいいし、アイスクリームもなんとかなると思う。あとは水あめにきなこと混ぜるきなこ飴だな。しかしまだ大豆を見つけていないし、かなり素朴な味だから貴族向けではない。カリンは喜ぶかもしれないけどな。
パート・ド・フリュイだって相当研究したぞ。本来は型で抜いた後、外側はグラニュー糖をまぶすものなんだ。それが出来なくて今回は一口大に四角く切って微量のコーンスターチをまぶしてある。このコーンスターチも錬金術で作った。
なんと材料は魔獣扱いの野生の破裂とうもろこししかなく、これも高級品扱いだ。
「どのくらいもつのでしょう?」
「冷暗所があれば1週間程度。冷たいままでも食べられます。常温で固まるので持ち運びが楽ですよ。新鮮な果物の風味が美味しいものなので前日や当日の朝に作れば尚いいと思います」
「なるほど。ではいただいても?」
「もちろんです。どうぞ」
ギルド員は恐る恐る食べるとカッと目を見開いた。
「こ、これはまるで果物を齧ったような、それでいてべちゃっとしないのがいいですね。しかもしっかり甘い。果物の当たり外れがないのもいい」
ケーキ類が発達していないので、こちらのデザートはもっぱら果物か蜂蜜である。だけど問題は果物によって酸っぱかったり、果汁で手やドレスが汚れてしまったりすることだ。
そんな中、パート・ド・フリュイが出てきたらどうか?
手でつまんで食べられる上に少しだけコーンスターチが付くだけ。これならナプキンで拭くだけでいい。絶対に受けるはずだ。ただ名前が長いのでフリュイにすればいいか。
「こちらのジャムでしたかな? こちらもいただきます」
ジャムに近いものは元々あるようだ。甘みの強い葡萄やリンゴを果汁で煮たフルーツスープのようなデザートである。アレを煮詰めればジャムになると思う。
「ええ、ふたを開けるまでは保存期間は長いですが、開ければやはり冷暗所で保存です。それと清潔なスプーンで掬ってください」
「この白いのは?」
「カッテージチーズです。家でも作れる簡単なフレッシュチーズです。こちらでもチーズを作っているようなので、成形前の柔らかい状態のものに近いと思ってください」
「塩気はありませんね?」
「ええ、動物の乳は最初から塩辛いものではありませんから」
「確かに。出来上がったチーズしか食べたことがないので、失念しておりました。
このクラッカーもパンと違って軽くてサクサクしていますね。初めての触感です」
「錬金術で作った膨らし粉を入れています。体に悪いものではありませんのでご安心ください」
そう言って重曹、ペクチン、水あめの安全証明を錬金術ギルドに書かせてあるので、それを出した。
「こういう証明を出すことでさらに値が上がりますね」
「ええ、富裕な平民か貴族向けです。今はまだね」
「どちらもおいしいものですね。このレシピをお譲りいただけるのですか?」
「ええ、こちらで作るのが面倒なので。ただ買い取りではなく、使用料としていただきたい。1割で結構です」
「なぜ買い取りはダメなんですか?」
「これは今までにない商品ですから。はした金で売る気はないんです。
俺は勇者です。これで得た資金は今後の勇者としての活動に使います。1度きりの収入より、最初は少量でも細く長くいただきたいと思います。ただ水あめや他の材料も、元の材料が不足すれば生産制限を掛けてもらうことになっています。それでも食べたいなら値を上げればよいでしょう。それほどのお金持ちからなら、1割くらいいただいても問題ないでしょう?」
「それは……私では判断できませんな」
「錬金術ギルドではギルドマスターが自ら対応してくださいましたよ?
しかも魔法契約済みです。今後レシピを他者に渡すときも同様な契約を結んでいただきます。
一応言っておきますが、このレシピも原材料のレシピも俺のものなので、使いたくなければ使わなくて結構です。錬金術を使ったものが多いですし錬金術ギルドでの販売もいいし、他国の商業ギルドと契約してもいいですね。俺はこの国の国民ではありませんから」
これも買い取りにしない理由である。
俺の取り分を1割という破格の値段なのも、食べ物だから広く売りたいためである。あんまりがめついと価格に反映されて、売れなくなるからな。
そうして俺はこの国の商業ギルドと魔法契約を結んだ。やはり目新しくおいしい甘みをあちらは見過ごせなかったようだ。
これで資金は徐々に振り込まれてくるだろう。
お読みいただきありがとうございます。




